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男子のお化粧に賛成します。

この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:学生に指摘された私の情けない差別意識の件。いちご白書の昭和世代よりレイワの彼らが強い件。モチベーションという言葉の重さ。

おとこの化粧は是か非か

熱心に授業を聞いてくれる学生Aくんは、お化粧をしています。

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僕はそれが気になっていました。

男のくせに、何ていうつもりはないです。

なんたって経営学の今の王道は、差別や偏見がないことですから。

しかし、恥ずかしいことに僕のなかにそんな意識が残っていたんです。

就職が決まって、この前研究室に遊びに来た時に、彼はこんなことを言いました。

「僕は就職活動で50社受けたんだ。でも30社は、面接も受けさせてもらえなかった。男のくせに化粧をしているから、とははっきり言わなかったが、『学生らしい格好をしてくるようにといったはずだ』というんだよ。明らかに化粧しているものは、入社させないってことだよ。」

Aくん

彼は、企業の冷たい仕打ちが続いた中、友だちにこう言われたそうです。

「化粧をしなければ、面接もしてもらえるし、受かるんじゃない?」

彼は友人にこう答えたと言うんです。

「化粧をするのは、僕の表現であり、それは僕という人間のアイデンティティだ。自分を偽って、嘘の自分が評価されても、そんなのは意味がない。」

Aくん

堂々と化粧して会社訪問に臨むくらいですから、面接で役員たちに化粧をとがめられると、こう反論したそうです。

「あなたたちは、企業理念で個性と自由を大事にする企業と謳ってますよねぇ。化粧を認めないのは、企業理念に違反してるじゃないですか。」

Aくん

彼は「そんな会社、こちらからお断りです」と、席を蹴ったというのです。

いちご白書世代の弱さ

ふぅん、僕は彼の話を感心しながら聞いていました。

僕らの世代は、就活の時代こんな歌が流行っていました。

「いちご白書をもう一度」です。

昭和のおじさん、おばさんには、おなじみのあのフレーズで知られたメロディです。

「♪就職が決まって、髪を切ってきた時、もう若くないさとキミに言い訳したね♪」

髪を長くしてレジスタンスのポーズをとっていたくせに、就職となると世の中に妥協して髪を切って、言い訳する」弱い若者を揶揄したあの詞です。

彼は、あのときの僕よりはるかに強く、かっこいいと思いました。

経営学者がKOされる言葉

それでも、まだ僕は目の前の彼の派手派手しいアイラインに、まだ違和感を感じていたのです。

しかし、彼の口から、この言葉が出た刹那、僕のわだかまりは雲散霧消したのです。

その言葉は「モチベーション」です。

彼は僕にこう言ったんです。

「化粧をするのは、自己表現であり、モチベーションなんです。化粧をすることで自分の表現欲を満たすと、モチベーションがあがるんです。だから、僕は、自分で起業して、化粧でも何でも自己表現を好きなだけやってもらって、気持ちよく働ける会社を作りたいんです」。

Aくん

ガァン!です。

胸を打たれました。

そうか、化粧→自己表現→モチベーションなのか。

もう降参です。

なぜ、そんなモチベーションということばに僕は弱いのか。

それは、経営学=モチベーションだからです。

経営学は、あくまで僕の考え方でありますけれど、人をやる気にするしくみを作ることなんです。

その意味で、モチベーションという言葉は、ぼくのアイデンティティでもあります。

そこを衝かれて、僕は自分の中に存在してた(と認めざるを得ない)、セクシズム(性差別意識)を心から恥ずかしく思い、反省し、そしてそれに気づかせてくれたAくんに感謝した次第なのです。

野呂 一郎
清和大学教授


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