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ウクライナ、弱者の戦略。

この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:ウクライナに学ぶ現代における弱者が強者に勝つ戦略。ソフトパワーこそ、あらゆる戦いに最も有効な本質だ。

戦争の原理は変わらない

ニューヨーク・タイムズWeekly2023年1月15日号は、Lessons about power from Ukraine (ウクライナから権力についてのレッスン)の見出しで、この戦争の途中経過の分析を非常に上手にまとめています。筆者はポール・クラッグマンさん(Paul Krugman)で、高等数学の専門家のようです。

彼はウクライナがなぜ、予想外の健闘を見せている理由を次のように分析しています。これは現代戦において、弱者が強者に勝つ方法を示唆しているようにも見えます。

例によってまとめてみますね。

ウクライナ反転攻勢の理由

1.ソフトパワー

ソフトパワーとは一国の価値感と文化の影響力のことです。

それは一種の知性です。

例えばウクライナの知性は、軍事力という定義も変えています。

昔は文字通り正面切ってガンガンやるということでしたが、今はテクノロジーで武装した長距離砲を使って、戦略的に戦うことを意味します。

これに対して、ロシアは旧式の戦車やミサイルで攻撃し、そのすきをつかれました。

「戦争は頭で戦うもの」という意識はウクライナのソフトパワーといえるでしょう。

2.リーダーシップ

これもいってみればソフトパワーの一部です。ウクライナはしっかりと戦略戦術を作戦本部で整えて、何を軍に民衆に伝えるかを練ってきました。

ゼレンスキー大統領は、この戦争に西側を巻き込み、民主主義vs専横主義と書き換え、大攻勢に転じていることはご存知のとおりです。

各国議会に乗り込んでのスピーチ、コミュニケーションの見事なこと、日本の政治家にはみられないたたずまいですね。

3.戦争は単純な算術という理解

クラッグマンさんは、戦争は算数(arithmetic)だと言っています。

つまり冷徹な数字だ、というのです。兵器の数、兵士の数、最新テクノロジーを搭載した新兵器の数が多いほうが勝ち、だというのです。

これは、次の消耗戦という考え方にも繋がります。

4.戦争は消耗戦という理解

第二次世界大戦を分析した歴史家フィリップス・オブライエン氏(Phillips O'Brien)氏のことばを、クラッグマンさんは引用します。

「第二次世界大戦では、勝つべきして勝った戦争はひとつもない」。

クラッグマンさんはこの言葉をこう説明します。

「この言葉は現代戦とは消耗戦、という意味だ。あらゆる戦いで、両軍とも最後まで新兵器の開発をやめなかった。武器が新しくて強力な方が優勢になる」。

5.自軍の兵力の正確な把握

当初戦争が始まったときは、武器が圧倒的に多いロシア軍に、ウクライナは手もなくやられるだろう、そう言われていました。

しかし蓋を開けてみると、ロシアはウクライナの現代的な戦車迎撃ミサイルによるヒット&ラン作戦で弱体化した。

自国軍と相手軍のノウハウを含めた、客観的な武力を精査する能力考え抜く力を持たねば戦争に負ける。

6.援軍を呼び込む能力

ウクライナは「民主主義を擁護する国々vs凶悪な専制国家」という図式を創るのに成功した。

7.強力なパートナーとの綿密な連携

ウクライナとロシアの差は、頼れるパートナーの違いと言っていい。

一昨日ベラルーシの大統領がロシアの代理で訪中した。

ロシアの唯一の同盟国は、これまた独裁者が仕切っている世界に信頼されてないベラルーシ。

それに比べてウクライナのパートナーは、世界最強軍事同盟のNATO(北大西洋条約機構)。

ウクライナは常にNATOと情報をやり取りし、特に長距離から正確に敵陣に攻撃を仕掛けるすべを学んでいる。

8.民間との連携

ウクライナ軍が見せているのは、民間とのチームワークだ。

ロシア軍の位置情報とか、民間製ドローンの使用など、それも即興的な賢い使い方を見せている。

弱者の戦略の中心としてのソフトパワー

戦争の本質は「消耗戦」です。武器が早く尽きたほうが敗けです。

そう考えると、ウクライナが勝利するかは、西側が本気で武器の供給を適時適切に行うか、行えるかにかかっていると思います。

しかし、ここまで、これだけ西側を動かした、ウクライナの凄さを僕らは改めて、評価、称賛すべきだと思うのです。

その中心にあるのがソフトパワー、だと思うのです。

それはまた違う言葉で言うと、国民の賢さ、結束、真摯さ、ではないでしょうか。

ウクライナの人々は、戦争という悲劇において、気高い生き方で、それらを世界に見せつけたのです。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

じゃあ、また明日お目にかかりましょう。

野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー




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