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”戦略的あいまいさ”はアメリカの敗北なのか?
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:オバマ大統領時代の”戦略的忍耐”とは何か。アメリカの戦略的あいまいさという駆け引きの巧みさと難しさ。戦略的あいまいさはアメリカの国力の弱体化かもしれない、論。
バイデンの勇み足
きのうバイデン大統領が、「中国がアタックしてきたら、台湾を助ける」とうっかり口を滑らした一件を紹介しました。
これがアメリカが近年堅持する、”戦略的あいまいさstrategic ambiguity”です。
アメリカは台湾問題について、はっきりその立場を示していません。
中国が攻め込んできたら、すぐ駆けつける、などとはアメリカは一言も言ってません。
戦略的あいまいさのルーツはオバマ
アメリカ外交に詳しい方は、”戦略的あいまいさ”と聞くと、オバマ大統領の”戦略的忍耐(strategic patience)”を思い出されるでしょう。
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そうです、この言葉は2013年あたりに出てきたのですが、アメリカの北朝鮮に対する、新しい政治的スタンスを言い表したものです。
これは核保有国に対して事を構えることを避けるための知恵、とも言うべき苦肉の策でした。
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要するに”何もしない”っていうことです。
下手に手を出すと、全面戦争になりかねない、核戦争を引き起こしかねないからです。
「積極的に介入したいのはやまやまなんだけれど、核持ってる独裁者の国とどうやって対峙すりゃいいのよ、アンタ?」
という、批判を封じ込める絶妙な落とし所を備えた、まさに文字通りの戦略的な、天才的マジックワード、これが”戦略的忍耐”だったのです。
これが必ずしも野呂のたわ言ではないことは、当時のロイター発の分析からも読み取れます。
The policy of “strategic patience” took hold, essentially launching a diplomatic waiting game in which Washington focused on sanctions and condemnation while leaving the door open to easing North Korea’s isolation if it behaved better. ”戦略的忍耐”政策が功を奏しつつある。つまり、これは”外交的待ちのゲーム”で、ワシントンは北朝鮮を制裁も糾弾もする用意はあるけれど、同時に北朝鮮の孤立を防ぐために交渉のドアは開けておく、という政策なのだ。
これが、戦略的あいまいさのルーツかな、と。
アメリカの軍事力にすがる世界
まあでも、僕は個人的にはオバマがなにもしない言い訳でしかないな、と、彼に失望しましたけれどね。
戦略的忍耐の名のもとに、アメリカがなあんにもしてくれないから、北朝鮮がやりたい放題で、日本は今日もミサイル飛んでくるのを恐れなくちゃならない。
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戦略的あいまいさのもとに、ロシアにもはっきり軍事演習とかで力を誇示しないから、ウクライナに侵攻したんだ、こういう声はThe Wall Street Journal等に散見されます。
でも、アメリカはもう唯一の超大国、ではないんです。
戦略的あいまいさはアメリカの現実
”戦略的忍耐”以来、アメリカはアフガニスタン、中国、ロシアに対しても同様のスタンスをとっていると思われます。それが”戦略的あいまいさ”です。
アフガニスタンについても、統治するとか、放棄すると明言しないうちに、突然の米軍撤退は世界を驚かせました。
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台湾の中国帰属についてはNoと明言しても、中国が戦力で台湾併合を試みた場合についての態度は、はっきりさせていません。
そして今回のロシアによるウクライナ侵攻。ロシアの対外紛争についてのスタンスも明らかにしてないのです。
この戦略的あいまいさは、アメリカ経済の弱体化であり、世界の警察の役割を担えない現実の反映だという説があります。
僕もそう思います。
アフガニスタンの復興は米軍でやる、台湾有事は助ける、ロシアが理不尽な他国攻撃するなら止める、とはっきり言ったら、どんだけ国防費がかかるかわかりません。
世界の警察をになってきたコストは膨大です。
たとえば、世界中に米軍基地を保持する費用は、とんでもないものになっているでしょう。
中国の武装が進む中、通常の防衛費も増加させなくてはならない。
そのつけが、アメリカ最大の国内問題である、二極化、国民の分断です。
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その結論として、”戦略的あいまいさ”というキャッチフレーズで、アメリカは他国の問題に干渉しないことにしたわけです。
これはロシア、中国に対しての、アメリカの精一杯の牽制です。
ロシア、中国はアメリカの弱体化は感じ取ったものの、アメリカが実際どう出るかはわからない、という不安は残ったはずです。
はっきりさせない=あいまいさ、の価値はここにあります。
コストを削減しながら、脅しはかけ続ける。
これが戦略的あいまいさの知恵ではないでしょうか。
国のトップのリーダーシップが問われてる
だから、バイデンさんは、よけいなことを言ってはいけないのです。
しかし、中国には、台湾有事の際には米軍が介入してくることを知られてしまった。
ロシアには、プーチン政権排除がアメリカの真の目的だと悟られてしまった。
戦略的あいまいさは、国のトップの口が固いことを前提として成り立っています。それなのにバイデンときたら・・・
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きのうはバイデンのアドリブはいい、と持ち上げたのに、今日はくさすのか、叱られると思うのですが、あくまで”戦略的あいまいさ”というアメリカ国策の観点からはどうか、という問題提起をしてみました。
今日も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
では、また明日お目にかかるのを楽しみにしています。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー
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