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これからのプロレス界はスターダムとGLEATが牽引する。

この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:経済学と経営学の合体こそがプロレスの経済学。現代のプロレス市場の変化。エモーショナルこそが、女子プロレスの内包する最大の価値。これからのプロレス界の台風の目はスターダムとGLEATだ、とする学問的な理由。トップ画はhttps://kids-future-navi.com/2022/02/lindas-first-gleat-champion/

女子プロレスの本質とは

サプライサイド経済学では、サプライとは、いままでにない商品でなければならない、と教えます。

女子プロレス=スターダムは、まさに男子プロレスである新日本にとって、いままでにない商品です。

女性であること、きらびやかさ、女性しか出せない美、女子プロならではの躍動感、パフォーマンス、このへんは外から見ても明らかな、これまでにないアピールにほかなりません。

しかし、女子プロレスの本当の新しさは、見えないところに隠されています。

故きを温めて新しきを知るという言葉があります。

それは女子プロレスにとって新しくはないのです、むしろ昔からある、というよりも女子プロレスの原点とも言えるものです。

これを木谷オーナーが理解していないと、女子プロレスは新日本プロレスににとって本物のイノベーションたりえません。

それはなにか。

「感情」です。

世志琥が見せた女子プロレスの本質

もうあれから7年もたつのですね。

2015年2月22日、後楽園ホール大会で女子プロレス界に”事件”がおこりました。それは、世志琥(よしこ)が安川 惡斗(やすかわ あくと)を迎え撃つ、ワールド・オブ・スターダム王座の防衛戦でおこりました。

世志琥(右)。http://blog.livedoor.jp/geinousan/archives/1020808736.html

ささいなことから殴り合いに発展、最後は世IV虎が馬乗りで安川の顔面にパンチを連打、セコンドのタオルが入ったのです。都内の病院に緊急搬送された安川の診断結果は頬骨・鼻骨・左眼窩底骨折の重症でした。

実はここまで行かなくても、女子プロレスにおいてこのような感情がエスカレートし、試合にならなくなったというケースは、決して珍しくはありません。

日本の女子プロレスの源流を作った、全日本女子プロレス元会長・松永高司氏は、その著書「女子プロレス終わらない夢」で、ハッキリと女子プロレスの男子プロレスにない特徴と魅力は「感情」である、とハッキリ言っています。

そのままこの本を引用すると、女性差別と捉えかねられないので、僕の言葉で少し説明を加えると、こうです。

プロレスは確かに、ベビーフェイスとヒールの対立構造というビジネス的なフレームワークを必要とすることがあります。

レスラーたちは、その言ってみれば虚構に自らを入れることがあるわけです。

しかし、しばしば女子プロレスでは、そうした虚構を必要としないのです。

虚構がなくても、不仲が敵意に変わり、嫉妬が憎悪に変わるからです。

試合としてかろうじて成立しているのは、レフリーの技術やレスラーたちの最低限のプロフェッショナルとしての意識、という人さえいます。

いや、そんなに単純なものでもなくて、当人たちもわからないなにかに突き動かされて、何かが乗りうったようなテイになることがあるのです。

誤解を恐れずに言えば、プロモーター側の意向は無視され、レスラーとして超えてはいけない一線をやすやすと超えることがままあるのです。

それは、遺恨を抱えた者同士の試合にありがちですが、そうともいい切れません。

40年の観戦キャリアを持つ、私の知り合いの女子プロレスファンはこううそぶきました。

「みんな、女子プロレスの本当の面白さを知らないんだ。オレは『あ、あの娘、スイッチが入っちゃったぞ』ってわかるよ。その時が女子プロファン冥利に尽きる、最高の瞬間だ」。

知人のリアルな言葉

女子プロレスと経営学

女子プロレスのエモーショナル(感情にアピールする)な、魅力はまた、経営学でも説明がつきます。

エモーショナル・ブランディングという理論です。

経営学的な解説をしてもつまらないので(笑)、例によってこの理論をオレ流で一言で言うと、こうなります。

知名度よりも、エモさ。

エモーショナル・ブランディングとは、今の消費者(プロレスファン)は、いわゆるブランド(知名度、権威)よりも、自分たちの感情に訴える製品(レスラー)を求めている、という理論なのです。

これをプロレスにあてはめると、これまでのプロレスファンの価値観も、大きく変わったと言えるのです。

古い価値観を「男子プロレス的価値観」、新しいエモーショナル・ブランディング的な価値観を「女子プロレス的価値観」と呼ぶことにしましょう。

以下、図にまとめてみました。

エモーショナル・ブランディング理論より、筆者が大幅に改定

現代は「女子プロレス的価値観」の時代なのです。

それが、今宇宙一きらめくニュー・ヒロイン、中野たむを生んだと言えましょう。

中野たむ。スターダム所属、だよ。https://mobile.twitter.com/tmtmtmx

ですから、新日本プロレスがスターダムを買収したことは、経営学の立場からも理にかなったものと言えるのです。

GLEAT躍進の理由

GLEATという団体が旗揚げして1年たちました。

社長の鈴木裕之は、ベンチャープロレス団体と自らを呼び、従来あった年功序列的な“格”の廃止、UWFの復興、プロレスに競技性を付与、リンダマンという新しい王者像などなどの新しい方向性を次々に打ち出し、異例の成功を遂げています。

https://proresu-today.com/archives/154219

カンのいいファンは、スターダムと同じ匂いを嗅ぎ取っているのではないでしょうか。

そうです、GLEAT躍進の理由もエモーショナル・ブランディングに求められるのです。

GLEATは「昔の名前で出ています」的な選手は一人もいないでしょ。

CIMAやカズ・ハヤシも、エモーショナル・ブランディングの時代に合わせて自らをリニューアルしてるでしょ。

カズ・ハヤシ。https://mobile.twitter.com/kaz_hayashi

プロレス界はスターダム、そしてGLEATの時代に入ったのです。

ちょっとプロレスが続いたので、明日からはまた違うテーマで書こうと思っています。

それでは皆様また明日。

                            野呂 一郎
              清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー

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