真夏の怪談シリーズ4 「心霊の時代」のインフルエンサー達
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:心霊の70年代を彩るインフルエンサー、楳図かずお、つのだじろう、中岡俊哉という三傑。中岡俊哉の影響で心霊を求めて旅にでた少年を待ち受けていた恐ろしい事件とは?
心霊の時代
1970年代はズバリ「心霊の時代」だ。
心霊写真、こっくりさん、守護霊、エクトプラズム、ポルターガイスト現象、少年少女の読み物はことごとくそんなワードが溢れた。
テレビ全盛の時代、ゴールデンタイムは心霊番組が占拠し、昼のワイドショーまで「あなたの知らない世界」「2時のワイドショー」などが、毎日のように心霊実話、心霊写真鑑定などをやっていた。
田中一郎(仮名)は、そんな時代の申し子だった。
視えるわけ、ではないが、好きだった。
楳図かずおといえば、当時のホラー漫画の神であり、少年少女が手に取る漫画雑誌に踊る彼の恐ろしい呪いの描写は、何百万人の子供を恐怖で泣かせた。
人一倍怖がりな一郎に姉は無理やり、少女漫画に載った楳図かずおの漫画を見させようと押し付けた。
一郎は、泣きながら隣のさっちゃんのうちに、よく逃げ込んだ。
楳図かずおの怖さ
それは今考えると、おばけの怖さじゃなく、人間の怖さだったのかもしれない。
紅グモという作品は、当時少女を襲う巨大な蜘蛛が怖くて、一郎は漫画を正視できなかった。
実はもっと怖いのは、その蜘蛛を利用して少女の家の財産を乗っ取ろうとして、紅グモに化けたおばさんだったのかもしれない。
半魚人(はんぎょじん)という作品は、仲のいい兄弟に訪れるおそろしい悲劇を描いている。
ある日、海から帰ってきた兄の様子がおかしい。
口からは血が吹き出し、髪の毛には海藻がべったり、まるでお兄さんは海で大きな魚と格闘したかのようだ。
ある時、兄は弟に自分の歯を見せる。
全部鋭利に尖っていて、歯をしまう口がいつの間にか大きく裂けている。
兄は、すっかり魚になってしまったのだ。
人間が怖い
仲が良かった兄弟に、突然入った亀裂。
兄は「地球は水没する。人類は皆さかなにならないと生きていけない」の言葉を残し、無差別の人狩りに出かける。
狂ったお兄さんの最初の犠牲になったのが、弟の友達、「健ちゃん」だった。
一郎は、おどろおどろしい半魚人になっていくお兄さん、健ちゃんの変貌の描写がただただ、怖かった。
しかし、今半魚人を読み返して一郎は思った。
真に怖いのは、独善的に「半魚人にならねば幸福になれない」と決めつけて、人間改造に暗い情熱を燃やす人間ではなかっただろうか。
今、僕らの時代は、そんな楳図漫画の恐ろしい主人公を抱いている。
統一教会であり、プーチン、だ。
やっぱり人間が一番怖いのだ、あれから半世紀たって、一郎は自分の「恐怖の原点」に気がついたような気がした。
中岡俊哉がそうさせたのか
心霊の70年代の最大のスターは、つのだじろう、と中岡俊哉である。
つのだじろうは、心霊ブームの火付け役となった、少年マガジン連載「うしろの百太郎」の作者である。
物語に登場する”一太郎”を守る主護霊(守護霊とも)の百太郎が、邪悪な霊と戦うストーリーで、主護霊、背後霊、地縛霊などという言葉が、瞬く間に日本中に広がった。
しかし、何と言っても70年代を心霊の時代と決めつけていいのは、心霊ブームの立役者・中岡俊哉(なかおか・としや)先生の存在があったからだ。
こっくりさんから、心霊写真、ネッシーにいたるまで、日本中が中岡俊哉の出演する「火曜スペシャル」を熱心に見ていた。
ある日、中岡俊哉が司会する心霊番組が偶然、一郎の目に入ってきた。
番組は、幽霊に出くわしたという北海道に住む、男性を取材していた。
一郎は、いても立ってもいられず、その男性に会いたくなった。
「オレはその人に会いに行く」、そう決めた。
なぜ、そう思ったのか、わからない。
テレビの画面を通じて、中岡俊哉に命じられたから、だろうか。
一郎はとつぜん旅支度を始めた。
その場所は北海道ではあるが、具体的にどこだかわからないというのに。
そして、そこで何が待っているかも知らずに。
明日に続く。
呪一郎(のろいちろう)
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