今年、人間の幸せは鳥(チキン)を幸せにしないとこないんじゃないか
高校生のキミたちがこの記事を読んで得られるかもしれない利益:チキン消費の現実。資本主義と消費の理解。アニマル・ウエルフェアという新しい動き。SDGsは偽善か。動物と人間の共生は可能かを考える。
SDGsなんて偽善だ
高校生の皆さん、あけましておめでとう。今年もよろしく。
って馴れ馴れしいかな、キミたちに会ったこともないのに。
でも、僕は勝手にキミたちの幸せを願っている。だからこの拙い連載を去年から始めた。
ところで、人間の幸せを願うのはいいことだ。
でも、他の生き物の幸せも願わなくてはいけないのじゃないか。
そうしないと、人間も幸せになれない時代だと思うのだ。
SDGs (持続可能な開発目標Sustainable Development Goals)なんて言うよね。
ESGなんて言葉もある。環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取って作られた言葉だ。
でも、そんなの偽善なんじゃないか。
これらのスローガンが目指しているのは、結局サスティナブルとやら、つまり、持続可能性、ええっとつまり、人間が持続するために、環境も持続させようってことだろ。
どこまでも、人間中心の思想に過ぎないだろ。環境を大事になんて言ってるけれど、結局人間ファーストじゃんか。
人間は、これからは人間だけじゃなくて、他の生き物の幸せを考えなきゃならないんじゃないか。
アニマル・ウエルフェアという新しい動き
実は、これはすでに取り組んでいる動きがあるんだ。
アニマル・ウエルフェア(動物の幸せanimal welfare)っていう考え方だ。
BusinessWeek2021年11月8日号(p53-54)は、making chicken little (なるべく鶏肉を作らないという発想)と題して、この問題を取り上げている。この記事をまとめると以下になる。
キミたち高校生は今年も、岸田内閣の課題でもあり、人類全体の課題でもある、資本主義をどうするかを考え、よりよい資本主義を作っていかなくてはならない。
「勝手に言うな?」いいんだ、これはこの連載を始めるに当たって、勝手にそう決めたんだから😁
でさ、資本主義のひどい部分がこの件に現れているよね。
それは、人間の欲望を刺激して、消費を拡大させるっていうことだよ。
今や鶏肉の消費は、アメリカでは、ビーフやポークを抜いてダントツの一位、1960年の消費量の3倍の鶏肉が食べられているんだ。
平均的なアメリカ人は年間100ポンド(約50キロ)のチキンを食べるんだって。
チキンメニュー専門店のケンタッキーフライドチキンは、キミ達もよく知っているけれど、アメリカではウイングストップ(Wingstop下写真)とかボジャングルズ(Bojangles)といったチキン新興チェーンも出てきてる。
ハンバーガーチェーンのマクドナルドやバーガーキングも、チキン人気に目をつけ、近頃チキンサンドイッチを発売して大ヒットを飛ばしているよね。
こうした大手は、そろって「チキンが足りない」って言ってるんだ。
これは世界的な現象だ。
韓国では、チキン専門店が爆発的に増えている。コロナ不況でリストラされた人たちが、比較的簡単に始められるのがフライドチキンの店だからだ。
日本でもそこかしこにからあげ専門店ができてるよね。
この資本主義が、鳥を追い込んでいる。
大企業は鳥を小さいケージに閉じ込め、自由を奪い、遺伝子組替え技術を駆使して、量産される。
じつはそんな肉は、胸肉のおばけだ。
胸だけが大きくなって羽ばたけない。
脂肪分が多くて固く、木を食べてるような食感。
そういう肉が食べられているんだ。どうやって?そんなことはここではキミ達に言えないよぉ。
アニマル・ウエルフェアに取り組む先進企業
全米の鶏肉市場の7%を持っている、パーデュー・ファームズ(Purdue Farms)は鳥を屋外で放し飼いにしている。
同社はオルタナティブ・ミート(非鶏肉つまり人造肉)の開発にも取り組んでいるが完成はまだ見えないと言う。
アニマル・ウエルフェアといえば、ベルズ&エバンス(Bells & Evans)の取り組みも見てほしい。ひよこたちが大きなスペースで楽しそうに餌をついばんでるね。でも大規模だね。
鳥のしあわせに立ちはだかる資本主義
ベルズ&エバンスは7500万ドルを投資して、この「新ゆっくり育てるチキン」システムを作っているんだけれど、資本主義的にはまだ問題があると言うんだ。
同社オーナーのスコット・セクラーさん(Scott Seckler)はこういう。
チキンをめぐる理想と現実
ベルズ&エバンスの理想は、🐔にできるだけ長生きをしてもらって、最後、食肉になってもらうことだ。
でも、セクラーさんの言うように、長生きさせると肉が固くなって売れなくなってしまう。これではアニマル・ウエルフェアといえるかどうか。
でも、解決策はあると思う。消費者のテイストが変わればいいんだ。
「ちょっと硬くても、美味しいという人も少しずつ増えている」、そう言うのは、アニマル・ウエルフェアを推進する団体、グローバル・アニマル・パートナーシップ(Global Animal Partnership)のエクゼクティブ・ディレクターのアン・マロー(Anne Malleau)さんだ。
彼女は
と話す。
冒頭にSDGsなんて、って毒づいたけれど、アニマル・ウエルフェアの精神こそ、SDGsに欠かせない哲学ではないだろうか。
それは、動物と人間の共生にほかならないから。
それなしに、人間と環境は共存できないんじゃないだろうか。
今日も最後まで読んでくれてありがとう。
今年も毎日キミに会いたい。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー
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