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なんで「女優」じゃなくて「俳優」って呼ばれたいのさ?

この記事を読んであなたが得られるかも知れない利益:なぜ最近日本でも「女優」じゃなくて「俳優」と呼ぶのかの理由。ポリティカル・コレクトネスとは何かの理解。ポリティカル・コレクトネスとwokeの違い。英会話ペラペラよりも尊敬される単語の使い方。

      野呂と学生との間の会話

ウエイトレスは死語になった?アメリカ

野呂:The Wall Street Journal2021年9月28日号のLet’s table the word “server”っていうタイトルの記事は、ちょっと衝撃だった。

学生:レストランで、ウエイトレスやウエイターという呼び名を使うな、サーバー(server奉仕者)っていう単語を使えっていうのね。なんかまた差別に関係あるの?

野呂:広く言えば、wokeの問題なんだ。


学生:あんたお得意のwokeね。要するに差別、ジェンダー(性差)、いじめ、セクハラ、パワハラ、ありとあらゆる社会的不公正を正していこうっていうムーブメントのことね。

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野呂:そうなんだ(笑)サーバーっていうのは、レストランのウエイター、ウエイトレスのwoke的な呼び名なんだよ。

学生:ふうん。でもなんか、しっくりこないわね、その名前。でも一番トレンディな言葉ならば私使っちゃおうかな。

野呂:いや、それは先進的すぎて、アメリカでも日本でも「はぁ?」になるからやめといたほうがいい。

学生:ウエイター、ウエイトレスがダメなのは、男女を表す接尾語がつくからなの?

野呂:そのとおりさ。ようするにさ、wokeってのはジェンダー的、っていうか、性差的な要素をなんでもなくしてしまえっていう、風潮だよね。

学生:ポリティカル・コレクトネス(political correctness政治的正しさ)って言うことを習ったわ。wokeとポリティカル・コレクトネスってどう違うの?

野呂:ポリティカル・コレクトネスはあくまで言葉の使い方を、男女差を排除したものにしろ、という主張だ。

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ポリティカル・コレクトネス的な言葉遣いは、教養と知性があることの証明ともされたんだ。

Wokeはもう少し範囲が広く、言葉だけじゃなく、考え方や態度も、差別的なあらゆる一切を排除すべきというムーブメントなんだ。

学生:ウエイター、ウエイトレスは男女の区別があるから、ポリティカル・コレクトネス的にはサーバーが正しいし、それはwoke的ってことね。

野呂:そうなんだ。しかし、The Wall Street Journalのこの記事の著者は3つの理由で、ウエイター、ウエイトレスをサーバーって呼ぶのに反対してるんだ。

ポリティカル・コレクトネスはほんとに正しいのか

学生:あまりにも無機質な感じはするわよね。でもどうして?

野呂:それは3つの理由がある。一つはサーバー(server奉仕する人)という言葉の語源はslave(奴隷)なんだよ。だからこの言葉はwokeの時代には到底ふさわしくないとする。

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2つ目、言葉というのはなるべく多くの情報を持つべきだ。

ウエイター、ウエイトレスは職業という情報がしっかり入っている。

”サーバー”はそれがどんな職業なのかの情報がない。男女を表す接尾語は差別なんかかじゃないよ。男女差は欠点でもなんでもなく、価値ととらえるべきだ。

3つ目はウエイター、ウエイトレスは別々のウェイティング・テーブル(給仕台)という定位置があったことに由来している。

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でもそれはもともと航空会社の人員配置のモデルで、レストランは共有だったんだ。だからレストランに差別はなかった。差別のない言葉なのに、差別があったからサーバーに直しますなんていう必要はないだろ。

学生:航空会社のスチュワーデス、スチュワードは違う待機テーブルがあったから差別。だから、フライトアテンダントにしたってのか。ちょっとよくわからん。

”女優”は本当に禁句になったのか?

野呂:ところでさ、最近「女優」って言葉を聞かないと思わない?

学生:そうね、NHKや徹子の部屋なんかも「俳優の綾瀬はるかさんです」なんていっているよね

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野呂:結局、アメリカのポリティカル・コレクトネス、wokeの流れをなぞっているだけだ。

ハリウッドのアカデミー賞、エミー賞、トニー賞の三冠を取ったフランシス・マクドーマンドは自分のことをアクター(actor俳優)って呼ばせてるのは有名だ。

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でも、アメリカ映画界はまだ「アカデミー賞 ベスト・アクトレス部門」なんて言ってるよね。ハリウッドはまだwokeじゃないのかもね。

学生:でもあんたのリクツなら、女優アクトレスで何が悪いって言うわけでしょ。

野呂:そうだよ。何が何でもアメリカ流を受け入れる必要なんか、そもそもないじゃないか。

学生:アメリカかぶれのあんたらしくないね(笑)

野呂:でも、岸田さんが、バイデンさんとの電話会談で、なんかの拍子にウエイター、ウエイトレスのことを「サーバー」と読んだら、アメリカで一気に尊敬される、いやそれより以上に話題に、いや事件になることは間違いないね。

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副大統領のカマラ・ハリスさんとのやりとりだったら、現実に使えるシーンはリアルにでてくるだろうな。何か彼女がうまいことを言ったり、やったりしたら、岸田さんは「you're quite an actor」(とても俳優ですね=さすがですね)と言えばいい。これはアメリカのマスコミは注目するよ。

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とにかく国際社会で尊敬されるためには、「wokeわかってます」、「ポリティカル・コレクトネス、抜かりないです」っていうポーズをとる、いや、実際の言葉と行動でそれを示さなきゃ絶対ダメだよ。英語ペラペラなんかより、はるかにインパクトがあるんだから。

学生:はあぁい。

最後まで読んでくれてありがとう。

また明日。

                             野呂 一郎

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