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ミシガン州の失敗に学ぶ、日本経済成長政策としての海外資本誘致

この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:電気自動車に急速にシフトするアメリカの現状。ミシガン州がなぜ工業誘致州として失敗しているのかの理由。日本政府と地方自治体の海外資本誘致戦略に関する考察。

岸田成長政策その10は海外資本誘致

BusinessWeek10月11日号はとても面白く、我々の経済に大きな示唆があると感じました。それは、いかに企業の投資を呼び込むか、です。

岸田さんの成長戦略に置き換えれば、いかに外国から投資を呼び込むか、ということです。これは、IR(Investors Relationship投資家への広報戦略)にも関連することで、その意味でも大きな示唆がありました。

BusinessWeekがとりあげたトピックは、アメリカ・ミシガン州の直面する危機です。

ミシガンと言えば、アメリカの自動車業界の雄、フォードのお膝元です。

しかし、世をあげて電気自動車の時代、もうエンジンや駆動系の部品を使用して自動車を作る時代は終わったのです。

https://www.google.com/url?sa=i&url=https%3A%2F%2Fwww.47news.jp%2Fnews%2F6530742.html&psig=AOvVaw0klvzU-iwwhsp987cs45Hi&ust=1638796143058000&source=images&cd=vfe&ved=2ahUKEwjl_v_A3cz0AhX5QPUHHTVkCqUQr4kDegUIARDwAQ  フォードの最新電気自動車 F150Lightening

で、フォードは従来の自動車工場を解体して、電気自動車を作る工場を建築しつつあるのですが、あろうことかミシガン州がハブられているのです。

理由は以下です。

ミシガン州がフォードからハブられている理由

1. 電気代がかさむ。

https://www.google.com/url?sa=i&url=https%3A%2F%2Fenepi.jp%2Farticles%2F63&psig=AOvVaw0LQCAhMALHK_YCXqRD_eg6&ust=1638796256238000&source=images&cd=vfe&ved=2ahUKEwiR9fv23cz0AhVcQPUHHSFbA5wQr4kDegUIARDiAQ

電気自動車の工場は従来のエンジンで動くクルマ製造の時の、5倍の電力が必要です。

電気自動車を製造する工場では、コロナの殺菌対策、高度な自動化が要求されることから従来よりも大量の電力が不可欠なのです。

しかし、ミシガン州の電気代は、近隣ののケンタッキー州等に比べて割高です。

アメリカU.S. Energy Information Administrationの調べによれば、ミシガンはキロワット/時間の単位で8セントですが、近隣州のテネシー州、ケンタッキー州はそれぞれ5.85セント、6.06セントです。(全米平均は7.53セント)

フォードとタッグを組む韓国の電池メーカーSKの両社は、129ギガワット/時間のバッテリーを搭載するクルマを年間100万台作る計画ですから、ミシガン州のこのバカ高い電気代だけでも、ミシガンだけは避けるという意思決定になるのは当然でしょう。

2. エネルギー使用の上限がある

ミシガン州は法人の電気、ガス、水道使用に消費の10%という上限を設けているのです。フォードがもっとこの規制がゆるやかな他の州に行くのは当然でしょう。

https://www.google.com/url?sa=i&url=https%3A%2F%2Ficon-pit.com%2Fpictogram%2F12726&psig=AOvVaw1UvrqTsu2QbzZpVwA7BPsV&ust=1638796363914000&source=images&cd=vfe&ved=2ahUKEwil-Keq3sz0AhWD4GEKHc_ZAkAQr4kDegUIARDEAQ


3. 労働組合がうるさい

企業が一番気にかけるのは、事業運営コスト(operating expenses)です。

人件費はその最たるもの。

https://www.google.com/url?sa=i&url=https%3A%2F%2Ftaiyoukou-secchi.com%2Fcolumn%2Fcost-reduction%2Flabor_costs_reduction%2F&psig=AOvVaw3PaAdaOLa6zluxlvsM0kY5&ust=1638796455812000&source=images&cd=vfe&ved=2ahUKEwi0-ZDW3sz0AhVLfnAKHY_tAKIQr4kDegUIARD3AQ

フォードは労働権(right-to-work law)が労働者にとって手厚くない、はっきり言えば、法律で働く者の権利をあまり擁護しない州に進出したいのです。

それは、ミシガン州ではありません。

ありていに言ってしまうと、企業は人件費のより安い土地で事業をやりたいのです。

実際、フォードはメキシコに新型電気自動車ムスタング・マーチE(Mustang March-E)の工場(写真)を建設しています。労働者に払う賃金はアメリカの半分以下です。

https://www.google.com/url?sa=i&url=http%3A%2F%2Fpuentelibre.mx%2Fnoticia%2Fpresentaron_mustang_mach_e_primer_vehiculo_electrico_hecho_mexico%2F&psig=AOvVaw3oX4fCxAC2pIFLcChiSj_3&ust=1638796609454000&source=images&cd=vfe&ved=2ahUKEwjYxLKf38z0AhVHRt4KHeilApUQr4kDegUIARCUAQ

日本政府が海外資本誘致を強化すべき理由

今回のこのBusinessWeekの記事は、国内企業の投資がほしい地方自治体そして、海外企業からの投資がほしい日本にとって参考になる話です。

僕はこの記事に触発されて、以下を提案したいと思います。

1. 国家戦略としてどう海外からの投資を考えるかをまとめよ

政治家やエコノミストから、経済成長戦略としての”海外からの投資”がまったくでませんね。

微妙なのは、国内産業を圧迫するという懸念で、国内企業のご機嫌をとることで命脈を保っている政治家からは、そんな提案は出ないのはわかります。

しかし、人口減は止まらないことは統計等で明らかです。最大の成長エンジンである人口が減るんだから、外からの労働力、消費で補うしかないですよね。

しかし、日本政府は移民を含めて経済成長を見込める適正人口についての戦略などまったくない。

この適正人口に基づいて、どのくらい投資を受け入れるのかを考えるべきでしょう。

投資とは企業誘致のことです。外国人労働者が日本に住むことが前提になるので、外国人が住みやすい居住環境を改善することも前提になります。

2. 日本を海外にとって魅力的な投資先にしろ

1で国としての投資戦略の概要が決まったら、日本を外国企業にとって魅力的な投資先にしましょう。

「日本で勝てれば世界で勝てる」という本もあるくらいで、日本市場でうるさい消費者の目にさらされることで、海外の製品は真にグローバル中値を持つことになります。

https://www.google.com/url?sa=i&url=https%3A%2F%2Fwww.amazon.co.jp%2F%25E6%2597%25A5%25E6%259C%25AC%25E3%2581%25A7%25E5%258B%259D%25E3%2581%25A6%25E3%2582%258C%25E3%2581%25B0%25E4%25B8%2596%25E7%2595%258C%25E3%2581%25A7%25E5%258B%259D%25E3%2581%25A6%25E3%2582%258B%25E2%2580%2595%25E3%2582%25A2%25E3%2583%25A1%25E3%2583%25AA%25E3%2582%25AB%25E4%25BC%2581%25E6%25A5%25AD%25E3%2581%25AE%25E5%25AF%25BE%25E6%2597%25A5%25E6%2588%25A6%25E7%2595%25A5-%25E3%2583%25AD%25E3%2583%2590%25E3%2583%25BC%25E3%2583%2588%25E3%2583%25BBC-%25E3%2582%25AF%25E3%2583%25AA%25E3%2582%25B9%25E3%2583%2588%25E3%2583%2595%25E3%2582%25A1%25E3%2583%25BC%2Fdp%2F4062030950&psig=AOvVaw3WI0C0p7AYynROkA-1dIGV&ust=1638796771884000&source=images&cd=vfe&ved=2ahUKEwiwu-zs38z0AhVb0mEKHdt1CMEQr4kDegQIARA_

犯罪の少なさ、四季のハッキリした温暖な気候など、すでに持っているよい点を再確認することです。

住みやすさのPRは、先の東京五輪で海外に対して見えをはった、あの精神を思い出せばOKです。

3. 投資先としての日本の魅力をもっとふりまけ

IR(Investors Relationship)投資情報の開示って、日本企業はダメダメです。

これは海外の投資家の不満がひきもきらないことから明らかです。

いかに英語で表現するかの前に、投資情報を開示することのメリットに気づいてないのです。

もう一つ、こういう表現をうまく行うセンスとスキルのある人材が皆無であることも、日本企業のIR下手を助長しています。

ようするに国際化がひどく遅れている、っていうことです。

地方自治体こそ天性の国際性を備えていることに気づけ

さて、地方自治体へのアドバイスです。

1.ふるさと納税から脱却せよ

もうあれはやめようよ。

結局返礼のお返しで高くつくし、どの地方もふるさと納税やってて、もう儲からないから。

真の差別化は、海外から投資を呼び込む、日本で初めての地域になることです。

例えばアマゾンのフルフィルメントセンター(発送センター)の従業員ごと、その地方に誘致しましょう。

https://www.google.com/url?sa=i&url=https%3A%2F%2Fgigazine.net%2Fnews%2F20170912-amazon-robot-worker-new-role%2F&psig=AOvVaw241w8crXlIrNkpDkbKOPgL&ust=1638796851375000&source=images&cd=vfe&ved=2ahUKEwjzl-CS4Mz0AhUH8ZQKHZHnAPIQr4kDegUIARDQAQ

外国人向けの街にするんです、街まるごと。

すでに住んでいる日本人との軋轢が心配?

そこを考えるんですよ。

2.過疎化の恐ろしさにいまさらながらに震え上がれ

どんどん人口が減って、じいちゃん、ばあちゃんしかすでにいない。

20年後は人口ゼロで崩壊します。

こんなシナリオを避けるには、企業誘致しかない。

でも、日本企業は子供の教育がどうだとか、人口が少なくて商売にならないとか、偏見やマイナスをあげつらうだけだから、外国企業を誘致して、外国人労働者に住んでもらいましょう。

過疎化よりいいでしょう。

地方の国際化って、都会よりずっと有利ですよ。

クルマで移動できるし、住みやすいし、交流だってやりやすいんですよ。そこは自治体のリーダーシップ次第です。

3.日本全体の国際化のチェンジ・エージェント(変革の媒体)になれ

チェンジ・エージェント(Change agent変化を生み出す触媒)などと、英語を使ったのは、その昔一時流行語だったんで、蘇らせたいんですよ。

2でも述べましたが、国際化を主導するのは地方だと思うんです。

それは日本の都会は海外のシティと何ら変わりなく、外国人に魅力がないから。

地方は日本人が気づかない、世界でもすぐれたオリジナリティに満ちている。

新潟プロレス主催「JR只見線・電車プロレス」前田誠選手のコブラツイスト

外国人に魅力がある、これだけで世界に冠たる国際競争力です。

住民の皆さんは世界にただ一つの外交官、民間大使です。

むこうからコミニュケーションを求めてくるでしょう、熱烈に。

都会の我々よりもずっと国際性を身につける環境があるのです、地方には。

さて、それにしてもミシガン州。

人類は、電気自動車というある種の産業革命前夜にいます、いや、もうすでに電気自動車革命は幕を開けました。

ミシガン州もダメだよね、もっと前から、こういうピンチを予測できたはず。

なんかミシガン州を見ていると、日本政府を見ているようで・・・・

今日も最後まで読んで頂きありがとうございました。

それではまたあしたお目にかかりましょう。

野呂一郎

清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー


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