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ハリー王子メーガン夫妻のリアリティ番組は成功するか

リアル番組がキテる

The Wall Street Journal2021年6月1日号は、real stories are rising TV stars (リアルなストーリーがテレビスターを生んでいる)との見出しで、アメリカのエンタテイメント業界において、台本なしの(unscripted)リアリティショーの勢いが止まらないと報じています。

リアリティショーと言えば、日本では元女子プロレスラーの木村花さんが、リアリティ恋愛番組に出演し、その番組を見た悪意の視聴者からネットで誹謗中傷を受けたことで起きた不幸な出来事が、まだ皆様の記憶に新しいことと思います。

アメリカでもこうした事件があったのですが、記事はいかに台本のないコンテンツが、アメリカエンタテイメントビジネスにおいて大きな流れになってきたかということを中心に報じています。

コスパの高いリアリティ番組
マーケットリサーチ会社のリールグッド社(Reelgood)によれば、ネットフリックス等のストリーミング・サービスを通じて放映されたリアリティTV番組の売上は、2021年第1四半期において、昨年と比べ2倍に伸びました。これは脚本なしのノンフィクションのドキュメンタリーのほうが制作費が安上がりで、利益も大きく、リスクも少ないことが理由です。

こうしたリアルストーリの出演者がテレビ界の新しいスターに続々名乗りを上げています。ビッグネームたちも、この動きに追随しています。

メーガン夫妻のチャレンジは成功するか

オバマ大統領夫妻、キム・カーダシアン(Kim Kardashian)、イギリスのハーレー王子とメーガン夫妻らは、すでにこのビッグビジネスで儲けています。

オバマ夫妻の経営するプロダクションが制作した作品「アメリカン・ファクトリー」(American Factory)はオスカーのベスト・ドキュメンタリー賞を受賞しています。

ハーリー王子夫妻の新会社アークゥエル・プロダクション(Archewell Production)制作の脚本なしガチなストーリーは、ネットフリックスで配信予定で、戦争の傷も癒えない退役軍人たちが、戦争ではなくて今度は陸上競技に残りの人生賭けて競争するというストーリーです。

オールド✕ニュー=爆発?

通信大手のAT&Tが、ワーナーメディア社とディスカバリー・インク社を合体させて作った新会社も、この新しいエンタテイメントに賭けています。ワーナー社は伝統的エンタテイメントに強く、ディスカバリーは新進気鋭のリアリティ派で、合体すれば「爆発的な成功を収めるだろう」チーフ・エクゼクティブのディビッド・ザスラブ(David Zaslav)氏はそう息巻いています。

リアリティショーのコンテンツは、クッキーやケーキの焼き方指南、歌のコンテスト、殺人ミステリー、デート、恋愛、結婚、社会派ドキュメンタリー、おふざけキモい系などがあります。

今やこのリアリティ、脚本なしジャンルには、ウィル・スミス、アミィ・シューマ、クリス・ヘムズワース等のハリウッドの一流ムービスターもこぞって参加、この流れは7,8年前には考えられないことでした。

リアリティ・ショーはトレンドだ

この情報には2つの意味があると思います。一つは、この脚本なしのドキュメンタリー番組がトレンドになった、ということです。

経営学ではある事象が継続すると、それはトレンド(trend ハッキリした長期に続く傾向)かアネクドート(anecdote 一過性の出来事)かを判定します。アネクドートはビジネスとして無視できますが、トレンドつまりこれは長期的に続く傾向、と判断するとそれはビジネスGoのサインです。

アメリカで流行したものがほぼ日本で再現されることを考えると、エンタテイメント業界は台本のない番組制作を「金のなる木」と捉えていいかもしれません。

しかし、ご承知のとおり、日米の差という文化の壁はあります。特に前述の木村花さんの悲劇でリアリティショーに否定的な世論ができている今は、Goの時期ではないと思います。

アメリカ人のすさまじい役者ぶり

もう一つは、リアリティショーの人気に、アメリカ人気質があるという私の見解です。

アメリカ・ウィスコンシン州のビジネススクールに通っていた頃、同級生の社会人たちの芸達者ぶりに驚かされっぱなしでした。

ビジネス討論はチームの最終発表が義務なので、毎回パフォーマンス合戦になるのです。その良し悪しはまさに説得力と表現力というコミュニケーション能力の競争になるのですが、みんな上手なんですよね。

音楽を流したり、コスプレしたり。なんといっても彼ら彼女らはトークが上手く、ジェスチャーとかも含め日本人の比じゃないんです。寸劇なんかもやってのけるんですが、みんな俳優、女優と見紛えるほどなんです。

リーダーはパフォーマンス力を上げよ

この差は、アメリカ人が小さい頃から議論し、表現し、相手を説得する訓練を家庭で学校で訓練されてきたからだと思いますね。

だからリアリティショーの出演者は、僕に言わせれば素人じゃないんですよ。おそらく演出家の意図をくんで、いやそれ以上のアドリブを発揮して、自然に面白くしちゃうんじゃないかなあ。だから、脚本なしでも面白い番組ができるんじゃないか。

まあコレはぼくの仮説に過ぎないんですが。

アメリカのトレンドは研究に値する

リアリティショーの人気が日本にも近年押し寄せてきたことは、周知の事実です。もう少しこの現象を僕らは研究したほうがいいと思います。

今不幸な事件でこの動きが止まったように見えますが、なにか世界的なシフト(変化)があるのかも知れません。

コロナの時代は消費者のシフトをつかまえたものが勝利をつかむ、と申し上げていますが、このリアリティブームもそれに関連しているのではないでしょうか。

今日もお読み頂き、ありがとうございます。

また明日お目にかかりましょう。

                             野呂一郎

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