ツイッター解雇で再評価される日本の「メンバーシップ型人事制度」(大学生向け)
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:コンサルタント志望のキミが覚悟しなくてはならない一番イヤなこと。なぜ、アメリカ企業は簡単に従業員をクビにできるのか。ジョブ型vsメンバーシップ型人事制度。解雇の非人間性。
アメリカの強さと弱さ
The Wall Street Journalの予告通り、昨日メタの解雇報道があったね、メタ側は否定しているけれど。
こうした平気で従業員の首を切れるところが、アメリカの強さであり、弱さだよね。
経営が傾けばクビを切ればいいっていうのは、カンタンでいいよねえ。
何せ人件費が一番高い固定費なんだからさ。アメリカ企業はほとんどこれだと考えていい。
今日のテーマは、「アメリカ企業は専門性という、人間の限られた小さな力しか評価していない。これに対して日本企業は人間力というポテンシャルを評価し、それを大事に育てる。どっちがいいと思う?」ということだ。
コンサルタントの一番イヤな仕事
経営コンサルタント志望のキミへ、言っておきたいことがある。
今回ツイッター、メタの解雇の現実を僕らは目の当たりにしているわけだけれど、日本企業も時として社員を大量解雇することがある、ということだ。
日本の企業は自分が社員の解雇を宣告するんじゃなくて、それをコンサルタントにやらせるって傾向があるんだ。
ずるいよねえ、日産のゴーンさんだってそうだ。
2008年のリーマンショックのあと、2万3千人を解雇した。
コストカッターという異名は、クビ切り屋さんっていうことだったわけだ。
自分は手を汚さずに、外部のガイジンやコンサルタントにやらせるってわけだ。
しかし、そのおかげで日産は復活したことは間違いない。少なくとも、当座は、ね。
経営不振にあえぐ東芝だって、台湾企業に買収されちゃったシャープだって、クビを切ることができたら、とりあえず組織は生き延びることができただろう。
でも、そこが日本企業の人を大事にするという美風だよねえ。
解雇は社会をダメにする
「経営の神様」松下幸之助はどんなに企業が苦しくても、決して従業員のクビを切るなどということはしなかった。
だいたいが、人と同じようにって教育されてきて、社会に出てダメだったらお払い箱なんて、そんな試練に耐えられるようにできてないんだよ、日本人は。だからそれが正しいんだよ。
僕の知り合いがこう言った。
「いつクビ切られるかわからないのに、家なんか買えないじゃない」。
まさにその通りだ。
今日の毎日新聞には、ツイッター社の日本支社の広報部門の全員が解雇されるとの記事が載った。
当たり前のことだが、法的には赤字でも、正当な理由がなければ解雇されない。
いつでも首を切れるドライなビジネス風土が、アメリカをアメリカたらしめたのだ、というもっともらしいことを言う人がいる。
しかし、それは単に人間を大事にしないビジネス風土がそこにある、ってだけじゃないのか。
今回のツイッターの半数解雇騒動で、改めて分かったのは、解雇とは人の尊厳を損なう行為だ、ということだ。
人的資源こそが、企業の最大最高の財産、という現在の人的資本の考え方に、逆行する。
解雇問題、真の理由はこれだ
しかし、日米の従業員解雇に対する”違い”の根本的な理由は、精神論じゃなくて、制度論だと思う。
それはアメリカの人事制度が”ジョブ型”であるのに対し、日本のそれは ”メンバーシップ型”だからだ。
ジョブ型は最近流行語になっているね。
「日本もジョブ型にすべきだ」みたいな。
しかし、正しい理解がされていない。
ジョブ型とは、まずジョブ(職務)ありき、なんだ。
例えばITエンジニアとか、秘書とか、リサーチャーといった専門職が、”ジョブ”だ。
これに対してメンバーシップ型とは、従業員は専門職じゃなく、会社の一員(メンバー)にすぎない。
ジョブはいらなくなれば捨てればいいし、思うように機能しなければ取っ替えればいい。
しかし、メンバーはそうはいかない。
なぜならば、専門職じゃなく、ゼネラリストだからだ。
ゼネラリストというのは、一つの職務に従業員を縛り付けずに、様々な職務を体験することで、会社の将来の戦力になることを期待される存在だ。
ジョブ型は、代替可能な部品であり劣化したり、気に入らなければ取り替えればいいのだが、メンバーシップ型は、そもそもジョブに人を当てはめないので、代替とか劣化とかいう考えがそもそもない。
「能力」という点で、説明するとこうなる。
ジョブ型は、最初からその人物の”専門能力”を買っているだけだ。
だから、能力が期待に背いたり、劣化したりすれば、取り替えていい。
世界に誇れるメンバーシップ型人事制度
メンバーシップ型は、その人の性格や人間性も含めた”ポテンシャル”を買っているのだ。
だから、メンバーがたとえある職務で期待された能力が発揮できなくても、取り替えることはない。
どんどん他の仕事に回せばいいし、またそのつもりだから、せいぜい一つの職務に3年しかいない。
だからジョブ型のアメリカは、解雇がしやすい。
これに対してメンバーシップ型の日本は、そもそも専門職として雇ってないから、クビにするという発想がない。
だからアメリカはすぐ人を切れるのに対して、日本は切れないのだ。
でもあくまでそれは、感情論ではなくて、制度論なのである。
しかし、いずれにしても、今回僕らは、突然解雇通告をされた人間がどれだけ苦しみ、悲しみ、狼狽するかを目の当たりにした。
僕は今こそ、世界にこの日本のメンバーシップ型の良さを発信すべきだと思う。
偶然か、今日読んだ毎日新聞には、「クールジャパン・プロジェクト」を運営するファンドが儲からず、崩壊の危機にあるとの報道があった。
ものを売るんじゃなくて、制度を売れ、僕はそう言いたい。
とりあえず、今日の主張は英語のブログで書いておこうと思う。
今日も最後まで読んでくれて、ありがとう。
じゃあ、また明日会おう。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー
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