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研究環境がノーベル賞を取らせるという真理


この記事を読んで高校生のキミが得られるかも知れない利益:
数年後にキミが日本をとるか、中国を取るか迫られるときの心の準備ができること。環境こそがキミの生産性を高めるという真実。

日本を捨てたから受賞した皮肉

真鍋氏は、アメリカを選んだからノーベル賞が取れた。

真鍋氏ノーベル賞で号外が出るほど、日本では大騒ぎだけれど、真鍋氏の国籍はアメリカであり、アメリカ人なんだよ。本来はアメリカを称えるべきなんだ。だけど、生まれが日本だからって、日本がノーベル賞をとったみたいにマスコミははしゃいでいる。

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はしゃぐんじゃなくて、恥ずかしく思うべきなのに、反省すべきなのに。日本の研究環境がひどくてアメリカを選んだのに、「日本人、ノーベル賞受賞!」って浮かれる日本ってなんだろうと思うよ。偏狭なナショナリズムをむき出しにして、僕は恥ずかしかったな。

彼が日本でなく、アメリカを選んだ、国籍まで変えてまでアメリカを選んだという事実の重さをどうして直視できないんだろう。

キミが中国に拉致される日

高校生の君も、キミは優秀だから、そのうちおなじ決断を迫られると覚悟した方がいい。

アメリカとは限らない。中国の可能性の方が強い。事実、莫大な報酬と環境で、日本の優秀な研究者がかの国に強奪されつつあるのだ。

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真鍋氏の受賞は、日米の研究環境の歴然たる差を見せつけたわけだが、この環境の違いは、何も科学研究だけじゃない。ビジネスでもそうだ。

僕は、以下の環境の違いが、研究力の差につながり、ホワイトカラー(事務系労働者)の生産性の違いにつながり、ついには経済の差につながり、ひいては国力の差につながったと考えている。

ノーベル賞をもたらしたアメリカという環境

1. 車中心のインフラ
日本のような公共交通機関は発達していないが、車で快適に移動できる。日本人は満員電車に揺られて1時間半、会社についたときにはヘトヘト、仕事どころではない。帰りも帰宅ラッシュで家についたら寝るだけ。蓄積疲労でビジネスの勉強どころではない。

2. 職住接近
どんな職場でも車で30分あれば会社に着く。日本では道路のネットワークが発達しておらず、企業には駐車場のスペースがない。会社がある都会から電車で最低1時間かけなくては、まともな住宅がない。真鍋さんも職場から来るまで15分くらいの、快適なお家に住んでるはず。

3. 残業のない社会
マイクロソフトなどは、ハードワークを奨励するからこの限りではないが、平均的なアメリカの会社は9時5時を守る。何よりも残業を美化する労働文化がない。時間内で仕事を終らせる習慣が身についており、結果生産性が高くなる。これと対照的に、日本人のだらだら居残る習慣は全然直っておらず、いたずらに労働者を疲れさせ、集中力を奪う。

3. 職務記述書で自分の業務に集中できる
職務記述書(job description ジョブ・ディスクリプション)とは、企業と労働者の法的合意文書で、労働者がする仕事の詳細が記されている。労働者は職務記述書に書かれていること以外のことはする必要がない。一方日本は、職務記述書がないので自分の仕事の範囲が無限に広がり、できない人の仕事までさせられたり、つきあいで他部門の仕事を手伝わされたりする。やがて、疲弊して燃え尽き、会社を去るものも多い。

4. プライバシー重視の職場レイアウト

自分の部屋があり、そこで集中して仕事ができる。共用方式でも、最低パテションで区切られてプライバシーは確保されている。日本は大部屋で仕切りすらなく、ひっきりなしに邪魔が入る。残業が多いのは、日中集中を乱されっぱなしで、人がいなくなる夕方からしか集中して仕事ができないからだ。電話が鳴ると、忙しくてもとらなければならない。

5. 雑用がない
昨日紹介した、青色発光ダイオードでノーベル賞をとった中村修二氏が抵抗したのは、社内の研究者が研究に集中できない日本独特の環境であった。頻繁に招集されるどうでもいい会議、雑用など、社内研究者は研究と関係ない仕事に追われ研究が進まない。大学の研究者(教授)も、研究、教育に関係ないことばかりさせられる。

6. つきあいという文化がない
日本は、飲みニケーションなる言葉がまだ健在だ。要するに上司や同僚との酒のつきあいだ。これを断ると角が立つ。つきあいの悪いやつと仕事でも冷遇される。何より、日本社会は仕事の能力でなく、人間関係をいかにうまく処理できるかの能力の方が重視されるから、つきあいの悪い男は出世できない仕組みなのだ。女?そもそも男社会というメインストリームから外されているから、つきあいがよくてもよくなくても変わらない。女性は論外という位置づけだ。


政府はDX(デジタル・トランスフォーメーション)革命だとか言っているが、そうじゃない。

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こうした悪習を変えていかないと、米中との差は開くばかりだ。しかし、なにぶんにもこうした環境が文化に基づくものなので、排除するのは困難なのだが。

最後まで読んでくれてありがとう。

じゃあ、また明日。

                            野呂 一郎

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