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プロレス&マーケティング第29戦ウナギ・サヤカの「藤波vs木村戦」発言の重大性。

この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:資本で勝負できない企業、プロレス団体の戦略を考える。経済学とマーケティングの交差点とは。プロレスにおける”ワンマッチ”がなぜ今新しいのか。ウナギ・サヤカの温故知新。トップ画はhttps://qr.quel.jp/pv.php?b=3LDhO0N

プロレスも大きい団体には勝てないのか

この間の日経一面を見て、考えさせられました。

「九州電力、資本を強化」という見出しです。

わかりますよねぇ、「大が小に勝つ」経済学の初歩です。

電力などのインフラを提供する企業って、特に大きくないと勝てないってことですよね。
 
規模の利益というやつで、資力、財力にものを言わせないと、
商品、サービスのひとつひとつを安くできないからです。
 
これを経済学ではキャピタル・インテンシブcapital intensive(資本にものを言わせている状態)と表現します。
 
さて、今日はプロレス&マーケティングのお話なので、プロレスに例えますね。

プロレス界におけるキャピタル・インテンシブといえば、新日本プロレスでしょう。

親会社のブシロードの企業規模、収益そしてプロレスビジネスの実績を見れば、それがわかります。

カネさえあれば、いい会場を押さえられ、ファンクラブのサービスも豪華で、いいガイジンも呼べ、マーケティングにも投資できるし、配信事業も世界に乗せられます。

じゃあ、小さい団体は勝ち目がないのか。

ウナギ・サヤカ発言の重大性

プロレス史上最大の傾奇者(かぶきもの)と、もてはやされ時代の寵児と言われる、フリーのウナギ・サヤカが、この間、東スポに放った発言が注目を集めています。

女子プロ随一の注目度ウナギ・サヤカ。https://qr.quel.jp/pv.php?b=42d1ZVs

それは、女子プロレスは「藤波vs木村戦」をやれ、

というひとことです。

藤波辰巳(現・辰爾)vs木村健悟、といえば昭和のプロレスファンに、最も強烈なインパクトを与えた一戦として語り継がれています。

当時、日の出の勢いの藤波に対して、同い年の木村健悟は、実力があるのにくすぶっていました。

木村のジェラシーが爆発し、両者はいがみ合い抗争に発展、決着をつけるために組まれたのが、1987年1月14日、後楽園ホールで行われたこのワンマッチ興行でした。

僕もこの日、当日券を求めて後楽園ホールに駆けつけたんですが、2000人分のチケットは1時間前にソールドアウトしていました。

その時の無念さ、悔しさは、木村健悟の気持ちが少しわかったような気がしたものです。

この試合は「隠れデスマッチ」と言われていました。

それは、マットのクッションを外し、リングは板にシートを張っただけの、まるでアスファルトの路上の喧嘩に近いシチュエーションだったからです。

今思うと、この試合って電流爆破のような派手な仕掛けよりも、よっぽど殺伐としていて、「日本マット界最悪にして最高のデスマッチ」と呼ばれる価値があるかもしれません。

結果は、皆さんの想像のとおりです。

さて、ウナギ・サヤカのこの発言は何を意味するのでしょうか。

ウナギ・サヤカが迫る、忘れられたプロレスの原点

それは、冒頭に述べた、キャピタル・インテンシブに対するアンチテーゼに他なりません。

ようするに、ウナギは「新日本プロレスに資本でかなわなくても、ワンマッチでいい試合を提供すれば勝てる」、と言いたかったのです。

入場テーマすら鳴らない、たった13分余の試合。

それでも全国から何千人のファンが押し寄せ、大盛況でした。

下世話な話でそろばんを弾くと、平均入場料が5000円とするとそれに2千をかけて1000万円の収益、後楽園ホールに300万払っても、一晩で700万の上がりになります。

当時の社長・坂口征二が陰でニンマリしていた、というのもうなずけますね。

ウナギが言いたかったのは、もう一つあります。(筆者の勝手な想像ですが(笑)

それは「ファンを集中させろ!」ということです。

いまファンもプロレス団体も、最高のサービスは、東京ドームで12試合くらいやればいい、そう思ってます。

しかし、中身を見れば8人タッグとか、10人タッグとかいうのばかり。

複数タッグマッチが悪い、というのではなくて、8人も10人もレスラーがリングに上がるとファンは「集中できない」のです。

どうせ誰かがフォールされる直前に、邪魔が入り3カウントなど取れないから、どちらが勝つという意識の集中ができないし、いろんなレスラーがでたり入ったりで、興が削がれることがしばしばです。

メインはタッグ、シングル取り混ぜて3連戦。

でも、選手の人数が多かったり、試合数やタイトルマッチが多ければ、ファンの満足度も大きいというわけじゃないですよ。

「藤波vs木村」は、「大きな箱で10数試合」という、プロレス界のピント外れなキャピタル・インテンシブに警鐘を鳴らしているのです。

ファンが求めているのは、集中、なんですよ。

試合3ヶ月前から、この試合はどっちが勝つ、どうなる、というそれだけに心を奪われて勉強や仕事どころじゃねえ、っていう興奮を求めているんですよ。

「それがプロレスの原点じゃねーのかよ、すあま!」

ウナギ・サヤカはそう叫んでいるのです。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
じゃあ、また明日お目にかかりましょう。

野呂 一郎
清和大学教授



 
 
 

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