アメリカの移民政策にみる二枚舌。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:移民受け入れの論理には、本音と建前があること。福祉国家と移民受け入れ国家は両立しないこと。アメリカの移民受け入れ政策の歴史。ヨーロッパ型vsアメリカ型移民政策。トップ画はhttps://qr1.jp/meEFVa
ディープ・パープルと移民
きのう僕は、ブレキジット(きのうブレクジット、と表記していましたが、これが日本語で正しいようです。ごめんなさいね)の真の原因は、「移民問題だ。その原因となっている内戦だ」と申し上げました。
その流れで今日は、移民問題について考えてみましょう。
僕は移民問題を考えるとき、いつも、あのハードロックの神”ディープパープル”のあの曲を思い出しちゃうんですよ。
日本名で”嵐の女”なんですが、原曲名はLady Double-Dealerというもので、言ってみれば「二枚舌の彼女」なんですね。
要するに平気で二股かけるようなやんちゃな女性を、裏切られて傷ついた、ピュアで一途なヘビーロッカーたちが「お前なんか出てけぇー!」と罵声を浴びせる、ある意味ディープ・パープルらしい曲で、僕は少年時代いつも聞いていました。
さて、何を言いたいかというと、移民政策に関して各国は、「二枚舌の女」を演じてる、ってことなんです。
つまり、本音と建前を分けて使っているということです。
その代表がアメリカです。
表向きはこんな正論を言っているわけです。
「何のために国境があるんだ。国境がない国は国家ではない。でももっと大事なのは、その国境にセキュリティがあることだ。セキュリティなき国境がある国も、国家とは言えない」。
そんなこといいながら、不法滞在移民は1,100万人いるんですから。
アメリカは、表向きは違法な移民を認めないスタンスですが、実際には移民の労働力がなければ国は成り立たないのです。
フリードマンの金言
経済学者ミルトン・フリードマンは、移民と経済について、こんな言葉を残しています。
「移民にオープンな国家と、大きな福祉国家は両立しない。(Open immigration and large welfare states are incompatible )
つまり、移民をどんどん入れている限り、その国の福祉負担は増える一方で、国力も弱り、国民のためにならない、と警告しているわけですよね。
福祉国家というアメリカのロマンと野望
トランプさんは、2016年に大統領になったとき、盛んにメキシコからの不法移民は入れない、ってイキってたじゃないですか。
でも、あれをアメリカの凋落と見る向きもあるんです。
アメリカは一貫して、福祉国家を目指して、それを強化、拡大しようとしてきた歴史があります。
その象徴がケネディ大統領でした。
ケネディは1964年に金持ちに減税を行いました。
これがあたり、アメリカ経済は毎月成長を遂げ、この政策は「天才の奇策 stroke of genius」と讃えられました。
結果として金持ちにすり寄ったことが、いまでいうトリクルダウン経済、つまり富裕層を豊かにすると、そのおこぼれで末端も潤うということだったのかもしれません。
とにかく、ケネディも前任のリンドン・ジョンソン大統領も、「福祉国家」を目指し、その財源を確保しようと必死だったのです。
しかし、本来、アメリカは移民政策に関する厳密な法律を持っていました。
例えば1882年に制定された最初の移民法には、こう記されています。
それが1930年のフーバー大統領のもとでは「過度にアメリカの福祉に頼るような人々はお断り」とちょっとトーンダウンしています。
いずれにせよ、ここ1世紀くらい、アメリカは弱者の面倒もみられる福祉国家であり、それを目指していた、と言えるでしょう。
それが、トランプの「不法移民断固排除」宣言です。
トランプの台頭が、アメリカの弱体化とシンクロしているというのは、ここです。
バイデンの優柔不断
バイデンさんも、福祉国家を目指していろんなことをやっていますが、昔の大統領たちとの違いは、借金をして福祉をやっているということです。
移民については、目こぼしする、という感じです。
でも、困ったことが一つあるんです。民主党も左寄りとされているせいか、そっちの人たちは「困っている人がいるなら、移民として受け入れろ」というわけです。
その結果、教育がまったくない人が移民として来てしまう。これがアメリカの国力をそいでいるのです。
イタリア、フランスは人道的な立場からもあり、移民に対して手厚いプログラムが有り、それが世界中から移民が集まる理由になっています。
サッカーW杯を見ても、フランスチームには白人はほとんどいません。
日本も外国人が200万人を超え、経済を支えているのが現実で、この先、移民受け入れのハードルをいやがおうにも下げることになるでしょう。
その時、フランスやイタリアのような、人道的な正義を謳うのか、それともアメリカのように二枚舌でいくのか、多面的に考えなくてはならないでしょう。
さて暑い日が続きますが、こんな時にお仕事やお勉強ははかどるわけはありません。
僕の拙いnoteを、もう一度見てくださいね。(笑)
野呂 一郎
清和大学教授
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