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プロダクト・プレイスメント広告がきた

この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:プロダクト・プレイスメントとは何か。なぜ、いまアメリカでプロダクト・プレイスメントがマーケティングの主役に躍り出たのか。プロダクト・プレイスメントとテクノロジーの関係。今後日本で主流になる広告、マーケティング手法は何か。以上に関する考察。

”検索ワード・ストーカー”に悩まされてませんか

皆さん、もういやじゃないですか。あれですよあれ。

検索ワードを入れると、それに関連する商品やサービスの広告やメールがいつの間にか、あなたを追っかけてくるあれです。

マーケティング英語ではこれを、hyperfocuced advertising(フォーカス過剰広告)とかhypertargeted online ads(ターゲット絞り込みすぎオンライン広告)などと呼んでいます。

BusinessWeek2021年7月26日号(P12-14)に掲載されたWhen product placement is the real star(プロダクト・プレイスメントが本当のスターになる時)という記事は、テレビのCMはもちろん、オンラインのこうしたうざったい追っかけ広告ももうヤダ、と感じている現代人に、企業はじゃあ、どうアプローチするのよ、という大きな問題提起をしています。

そして、その答えはまさに、この記事のタイトルが物語っています。

プロダクト・プレイスメント広告、です。

なぜ、アメリカでプロダクト・プレイスメントがブームなのか

プロダクト・プレイスメント広告とは、映画やテレビのワンシーンで登場人物がその製品を使っている絵が映し出される、あれです。

ちらっと画面に商品やそのロゴが映る、しかけです。

僕の記憶だと20年前に、日本でもプロダクト・プレイスメントのブームと言うほどではないけれど、実験的な試みがあって話題になりかけたことがありました。

もちろんこの手法はアメリカが発祥です。

いま、そのプロダクト・プレイスメントがブレイクの兆しです。

ちょっとプロダクト・プレイスメントの例をお目にかけましょう。

○シンガー兼ラッパーのリゾ(Lizzo)のミュージックビデオでCheetos(チートス。チーズ味スナック)が出てくる。(1分59秒くらいのところ)


○青春“ゴシップ”ミステリーRIVERDALE-リバーデイルで俳優がDoritos(ドリトス。コーンスナック)を食べてる


いまなぜプロダクト・プレイスメントなのか

それは一昨日の記事で申し上げた、ストリーミング・ファーストつまり、今のアメリカの映像エンタテイメントの主流がストリーミングであることに関係しています。

ストリーミング全盛になった理由は、コロナで制作費を抑えるためと、みんなが嫌っているCMがないことです。

とにかく今のアメリカの視聴者は、テレビCM付きのドラマは飽き飽きなんです。

グーグルでたまたま検索しただけなのに、そのワードに関連した製品や何かをスキなんだろうと誤解されて、ストーカーまがいに付きまとわれるのも、もういい加減にしてもらいたいのです。

これは日本も同じですよね。

そこで、出てきたのが、プロダクト・プレイスメントというわけです。

「正統性」という新たなキーワード


マーケティング企業のMetaforce共同創設者アレン・アダムソン氏(Allen Adamson)は、プロダクト・プレイスメント広告ついてこう話します。

「プロダクト・プレイスメントはもっとナチュラルなんだよね。

マーケターは”正統的なもの(authenticity)“を求めていたんだ。それがここにある」。

プロダクト・プレイスメントは、アダムソンさんが言うように、自然、といえば自然、です。

そのシーンに自然にあるべくしてある、誰かがそれを口にする、という具合に。

騒々しいテレビCMを考えてみれば、よくその自然さがわかりますよね。

正統的なものをマーケターが追いかけてきた、という意味は、ようするに広告の制作側も広告というものの、“生来的なわざたらしさ”に罪悪感を感じてきた、ということなんですよ。

男女の間だって、押しすぎるのは嫌われるもとです。

しかし、プロダクト・プレイスメントも”静かな押し”と言えないことはありません。

だから、ここの塩梅が大事だと言うんです。

あまりこのシーンを強烈にスポットライトを当てるような演出は控えるようにと、制作側はとても気をつけているそうです。


データドリブンという時代にフィットしている

グローバルなプロダクト・プレイスメント広告の市場規模、つまり企業がこれに投入したお金は前年比13.8%の233億ドル(PQMedia調べ)です。

もちろん企業は費用対効果にも目を光らせています。

インディアナ大学教授のベス・フォッセン氏(Bess Fossen)はプロダクト・プレイスメントの費用対効果をテレビ番組、SNS上のワード数、ウェブ閲覧率などのデータと照らし合わせて数字を出しています。

BENという調査会社はプロダクト・プレイスメント広告がなされたあとのオンライン上の消費者の反応や感想をデータ化しています。


デジタルデータの柔軟性

「新しくデジタル的に可能になった柔軟性」(digitally enabled flexibility)という言葉は、プロダクト・プレイスメントのパワーを言い当てている表現と言えます。

それはたとえば、皆さんが同じドラマを見て、あのスナックをあの俳優が食べるシーンを見るとします。

あれ、最初に見たときはあの俳優はチートスを食べてたのに、あらら今回はドリトスを食べてる!。

そうなんです。これがテクノロジーの力、デジタル的に可能になった柔軟性、なんです。

広告制作側も、こうしたデジタルデータに関する新しいテクノロジーの恩恵に預かっています。

ネットフリックスなどが、AI(人工知能)とかマシーン・ラーニング(machine learningコンピューターに学習させて解析する技術)を使って、おおよそどんな番組がヒットするかがわかるようになっているというのです。

ヒットが予想される作品に、どうやってプロダクト・プレイスメントをのっけるか、それをスポンサー側、例えばフリトレイ(Frito-Lay)などと相談しているということです。

テレビはオールド・スクールだ

プロレスで最近、オールド・スクールという言葉をよく聞くようになりました。

古いスタイルのプロレス、鉄人ルー・テーズとか、力道山、下手をするとアントニオ猪木のプロレスもそう呼ばれます。

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しかし、この言葉にはある種の尊敬の響きがあります。

今のプロレスは跳んだり跳ねたりだけで、レスリングじゃない、といった批判でもあります。

この記事でもテレビを「オールドスクール」と表現しています。しかし、これはもう絶対に帰りたくない昔の悪しき習慣、という意味で使っているのです。

人々は同じ時間にテレビの前に集まり、人気番組が集結する土日のゴールデンタイムに視聴が集中し、おとなしくCMも見ていた大衆。

そんな時代はもう終わった、もう人々はそんな不自由な時代から、開放された。それが今のデジタル視聴時代だというのです。

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今後の日本の広告はどうあるべきか

日本は文化が違うからまだオールドスクールだよ、と言っているテレビ関係者。

いや、みんなビデオでとって、CM飛ばして見ていますよ。

ザッピングなんて言葉ももう古くて、いやそもそも、テレビを見なくなっているじゃないですか。

オンライン広告も邪魔だし、検索ワードで追っかけてこられるのももう勘弁してほしい。

じゃあ、日本も広告の未来はプロダクト・プレイスメントなのでしょうか?

いや、これも飽きられると思う。

ドラマや映画の主人公たちがいっせいにいろんなスナックを食べ始めたら、何を食べていいかわからなくなりますよね。


僕は、文中に出てきた正統性(authenticity)という言葉が今後の日本のマーケティングの鍵になる言葉だと考えます。

正統性は、「王道」と言い換えてもいいでしょう。

どういうことかというと、製品をしてアピールさせるのです。

ノーフリルズ(no-frills飾りなし)という言葉があります。

製品が素晴らしければ、それが宣伝になる、ということです。

これが僕の考える王道、です。

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今日も最後までお読みいただきありがとうございました。

ではまたあした。

                     野呂 一郎

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