リーダーシップの反対語としての「デクステリティ」とは何か。

この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:岸田さんはこのまま首相でいられるのかを、リーダーシップ論で考える。前トラス首相の蹉跌から考える、リーダーシップとは何か。デクステリティ(イデオロギー的無節操)とは何か。

風見鶏では天下を取れない

個人的には好ましい人物だと思うんですけれど、リーダーとしてみた場合、岸田さんは「風見鶏」と言われても仕方ないと思うんです。

自分の信念がなく世の中や権力者の意向に、すぐスタンスや主張を変えてしまう態度を、政治の言葉で”風見鶏”といいますよね。

さて、その岸田さんですが、軍事費増強で「国民の責任だ」と言って大ヒンシュクを買い、その釈明に追われました。

統一教会の件も、最初は「勝手に疑惑のある議員は説明をするように」などという、「自民党は関係ねえ」という態度でした。

しかし、この問題に火がつくと手のひらを返したように、「質問権」を認めるまで世間にすり寄りました。

国葬の問題もそうです。

最初は安倍元首相の国葬は当たり前だとの姿勢でしたが、国論が国葬反対に傾くや、一転コソコソし始めました。

しかし、こうした姿勢では政権を長く維持できないでしょう。

それは、英国の前首相トラス氏の例で明らかです。

なぜ、トラス氏が解任されたのか

ニューヨーク・タイムズWeekly 2022年 9 月11 日号は(P3)A dexterous British leader whose positions have veered left and right(機を見るに敏な英国のリーダーは右に行ったり、左に行ったり)という見出しで、トラス氏の変幻自在ぶりを皮肉っています。

彼女は10月に首相を辞任していますから、この記事は「予言」とも言えるかもしれません。

オックスフォード大学時代の、政治学の先生であるマーク・スティアーズさん(Mark Stears)は、実際彼女にこんな警告をだしています。

「彼女は自分の直感にすごく自信を持っているんだ。リスクを取って人の言うことと反対のことを言いたがる。いわゆる逆張りが得意なんだ。でもそれはうまくいくこともあるし、彼女を傷つけることもある。」

マーク・スティアーズ

彼女の逆張りは、減税策でした。

イギリスはインフレ率は10%を超え、未曾有の経済苦境に陥っています。彼女の逆張りは完全に裏目に出たのです。

しかし、彼女の本質はリスクテイカーではありません。

岸田さんが一部でこう言われて批判される、「風見鶏」なのです。

勢いよくアドバルーンを上げて、うまくいかないと見るや撤回、日和る。

それは1994年、彼女がオックスフォードの学生時代に端を発しています。

「生まれつき支配する人達がいるなんて許せない」、と君主制反対の国民投票を呼びかけたのです。

それがこの9月、エリザベス女王の前にひざまづいて、首相を拝命しました。君主制反対はどこへ行ったのでしょう。

https://qr.quel.jp/pv.php?b=3hzwSBB

ブレキジット(Brexit英のEU離脱)もそうです。

彼女は熱心なブレキジット反対論者でしたが、英国民の過半数が賛成に回ると見るや、立場を撤回、今度は熱心なブレキジット擁護にまわったのです。

彼女のこの風見鶏っぷりが、首相の座をつかんだことは間違いありませんが、逆にこの無節操が英国史上最短命の政権という汚名にも繋がりました。

デクステリティとは何か

ニューヨーク・タイムズは彼女の無節操を「デクステリティ(dexterity器用さ、抜け目のなさ、巧みさ)」表現します。

デクステリティは2つの意味があり、ひとつは手先の器用さ、もう一つは心理的な器用さです。

ロングマン英英辞典によるとskill in using words or your mind(言葉もしくは心を使うスキル)とあります。

ニューヨーク・タイムズは、わざわざ、このデクステリティを言い換えてくれています。

それはオポチュニスト(opportunist 日和見主義)です。

https://qr.quel.jp/pv.php?b=3PzexBd

これで、ニューヨーク・タイムズが彼女を評価してないことがわかりました。

経営学的に言えば、”日和見主義”は、ある種の”適応”であり、悪いことではありません。

トラスさんは、減税策を撤回した時に「むしろ撤回しないほうが無責任」と開き直りました。

しかし、国民は彼女の”ブレ”は、信念のなさ、無能力と見抜いたのです

同じような苦境に立つわれわれは、デクステリティなリーダーを頂いてはいけない、そう思うものです。

今日も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

では、また明日お目にかかるのを楽しみにしています。
 
                             野呂 一郎
                清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー

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