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ペッパーズ・ゴースト


ペッパーズ・ゴースト


バブーシュカ・レディって、知ってるかい?
僕はこの本ではじめてその存在を知ったよ。ケネディ。

先日の夜、仕事帰り、ラッキーに買い物に行ったんだ。
すると小さな女の子と、そのお父さんが買い物に来ていた。
セルフレジでとなりになって、お父さんは肉のパックを手にして何やらぶつぶつ云っている。
その足元で女の子は買ってもらったお菓子を持って跳ねている。
お父さんはバーコードを読み取れない肉パックを持って店員さんに声をかける。
店員さんが適切な処置をして、ようやく支払いを済ませる。
ふたりは僕より先に店を出て、帰っていった。
僕は自分が購入した商品をレジ袋に詰め、外に出て、車に乗って自宅へ向かう。
太い道路に出ると、例のふたりが歩道を歩いているのが見える。ちょうどパチンコ屋の駐車場を抜けていこうとしている。あいかわらず女の子は飛び跳ねている。
お父さんと買い物に来ることが出来てよほど嬉しかったのだろう。
お菓子を買って貰えて嬉しかったのだろう。
彼女は覚えているだろうか。
二十歳を過ぎても、三十になっても、彼女は今夜のことを覚えているだろうか。
チョコレートを買ってくれて、父親が支払いに手こずったこの夜のことを、彼女はいつか思い出すことがあるだろうか。



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