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ポッドキャストの「聴きやすさ」とは? リスナー体験の質を高める10大要素とティップス

ポッドキャスト番組のリスナーに、一度だけでなく二度、三度と繰り返し聴いてもらいたい。いつかは「聴取習慣」を身につけてもらいたい。そのうえで「聴きやすさ」はとても大切です。

なにもプロのアナウンサーのような美しさは必要ありません。しかし、聴いていて不快でない、「必要最低限の耳心地」を目指すのはポッドキャスターにとって大事なことではないでしょうか?

そこで今回は、「聴きやすいポッドキャスト」を実現するうえで、普段僕が大切だと感じ、意識している「10の要素」そのためのティップスをご紹介します(写真:Aiony Haust on Unsplash)。

1. 音質

これはビデオ会議にも当てはまると言われていますが、インターネットの接続不良や周囲の騒音などで会話が途切れたり、ノイズが入ってしまったりした場合、聴く人の集中力が削がれストレスを与えてしまうと言われています。

いいマイクを買うなどして音質を高めることも効果的ではありますが、経験上、それ以上に、最低限の音質を保つことのほうが大事だと感じています。安定したインターネットの接続、また、家族など周囲の人にも協力してもらい、収録の時間だけは静かな状況を確保するようにしましょう。

また、マイクと口との距離が近すぎて、吐く息がノイズとして混じってしまうことも、収録に慣れていない段階ではしばしば起こるので気をつけましょう。

2. 音量

声が大きすぎる場合、それはそのまま聴く人にとって不快に思われてしまいます。逆に小さすぎる場合は、BGMなどにかき消されてしまい、音声を聴き取るために必要以上の集中を強いることになる。それによって、聴く人は疲れてしまい途中で離脱するということが起こり得ます。

また、2人以上で収録をする場合、それぞれの声量がほぼ一致していることも大切です。どちらか片方の声が大きく、もう片方の声が小さい場合、小さいほうの声を聴き取ろうと音量を上げると、もう一人が話すとき、音が大きくなりすぎてしまう。

二人で音量をできるだけそろえるか、もしくは、二人の音声を別のオーディオファイルとして収録し、編集アプリで音量を調整するといいでしょう。

3. テーマの明示

「聴きやすさ」というのはなにも、音に関するものだけでなく、エピソードの内容も影響します。その一つが「テーマの明示」です。

このエピソードでは「なに」について話しているのか。また、「なぜ」そのテーマを取り上げているのかについて、聴く人との間で共感が生まれていない場合、聴く人を置いてきぼりにしてしまいます

トークの途中、話が脱線しそうになったときにも、かならずテーマを意識し、「なぜ脱線しているのか」を聴く人に暗に伝えつつ、できるだけ早く本筋に戻ってくるようにしましょう。

4. 現在地が分かる

たとえ、どんなにエピソードの内容が面白かったとしても、「耳だけで聴く」というメディアの特性上、聴く人が「自分は今、エピソード全体のうちどのあたりを聴いているのか」を見失ってしまうことは起こり得ます。

「これはイントロなのか。テーマを明示している部分なのか。主たるメッセージなのか。あるいは、それを支える根拠や事例を紹介しているところなのか」、自分が今、どのあたりにいるのかを小まめに伝えることで、聴く人を安心させましょう。

特に、あるパートが長くなりそうな場合、「ナンバリング」「ラベリング」の技術が効果的です。

例えば、「理由は3つあります」「1つめの理由は〇〇です」と言って、その内容を話し始める。すると、聴く人は「今は3つの理由のうち、1つめを聴いているんだ。この後、さらに2つの理由が続くんだ」と自分の現在地をたしかめることができます。

5. テンポ

これは滑舌とも関係しますが、あまりにも早口な場合、内容が聴き取れないため、それは避けるべきでしょう。しかし、ポッドキャストの面白いところは、実は「ゆっくりすぎないこと」も大切、ということなんです。

以前、ラジオ番組によくゲストとして出演する著名人の方が話していたのは、「テレビとラジオでは話すスピードを変えている」ということでした。

ラジオ、つまり、音声メディアの場合、聴く人は耳だけで情報をインプットすることになります。そのとき、実は少しだけ早口のほうが、聴く人の集中力を持続させ、エピソードの内容が伝わりやすくなる、とのことでした。

リスナーとして、僕もそう感じます。早口ではない、しかし、ゆっくりすぎない、普段より少し早口なくらいで話すことを意識してみましょう。

6. 緩急

たった今、「ゆっくりすぎないほうがいい」と言いましたが、実は「ある特定の箇所だけあえてゆっくりと話す」というのは、聴きやすさを高めるうえで、実は効果的。つまり「緩急」です。

普段は少しだけ早口なくらいで話すけど、エピソードの中で、聴き取ったり理解したりするのが難しそうなところ(例えば、数値情報)は、そこだけあえて、少しだけテンポを落として話す。すると、他の箇所と差が出るため、聴く人がより耳を傾け、情報をインプットしやすくなります。

ゆっくり話すというよりも、「緩急をつけて話す」ことをときおり取り入れてみましょう。

7. 強調

聴く人の集中力を、映像や文字ではなく、音声だけで保ち続けるには、耳から入ってくる情報だけで聴く人の感情の起伏を作ったり、一つのエピソードの中でも何度か断続的に役立つ情報を提供し続けなければいけません

そのときに効果的なのが「強調」です。聴く人に特に伝えたいキーワードを、先ほどのように緩急をつけたり、あるいは自然に繰り返したりするといいでしょう。

よくやってしまうミスとしては、聴く人の記憶に留めるべきキーワードを「こそあど言葉」で省略してしまうこと。

同じ言葉や単語を使うことにためらいを感じ、「それは」「あれは」と、よかれと思って表現を簡略化してしまいがちですが、同じキーワードを適度に頻出させることは音声メディアだからこそ許される手法かもしれません。

8. 相槌

2人以上でトークする場合、メインパーソナリティーではない「サブ」の人たちの役割の一つは、聴く人たちの「代弁者」となることです。

自分はその会話の場にいなくとも、自分の代わりに納得や共感、疑問、ときには異論をはさんでくれる人がいることで、聴く人が会話の置いてきぼりにならず、内容への理解をより深めることにつながります。

メインパーソナリティーの話をさえぎらない程度にうなづいたり、また、聴く人の記憶に留めたいキーワードをサブの人たちも繰り返し発話する。そういった、自然かつ効果的な相槌というものを探ってみてもいいでしょう。

9. 下品でない

冒頭で述べたように、なにもプロのアナウンサーのように美しくある必要はありません

特にラジオとは違い、ポッドキャストという個人に開かれたメディアにおいては「個性を発揮する」のはとても大切なこと。その人の話し方というものは、その人の大事な個性そのものです。

だとすれば、なにもプロのような、美しくも画一化されたような「上品な」話し方を目指す必要はありません。ただし、少なくとも「下品な」話し方は避けるべきでしょう。

聴く人に声で癒しを提供する必要はありません。しかし、汚い言葉づかい豪快すぎる笑い声あまりにも自虐的な態度など、自分に染みついているかもしれないクセを見つけ、抑えていきましょう。

10. いつ終わるかが分かる

プロのアナウンサーや話し手ではない以上、一つのエピソードが長時間にわたってしまうことはあまり得策ではないと、個人的には思ってしまいます。

これまで、文字メディアの編集者やインタビュアーとしての経験上、その人の持つ「アイデア」、エピソードや言葉選びなど「表現」が面白い人というのはたくさんいましたが、「トーク」が面白いというのはまた別のスキルで、そういった人は本当にごく少数にかぎられます

ですから、どんなにエピソードの内容が面白かったとしても、途中で聴く人の集中力が下がり、「いつまで続くんだろう?」と思われてしまうのは仕方のないことです。

ですから、少なくとも「自分は今、エピソード全体のうちどのあたりにいるのか。そろそろ終わりそうなのか、いつ終わるのか」をリスナーが察知できるよう、暗に伝えるようにしましょう。

トークや質問の内容からそろそろ締めに差し掛かっていることを伝えたり、エピソードが終了するときには、聴く人に最後の投げかけをするなどして、締める。そうすることで、聴く人に番組の安定感を感じてもらいましょう。

・・・・・

さて、「ポッドキャストの聴きやすさ」の紹介、いかがでしたか? 全体を通じてよく出てきたのは、「聴く人を安心させる」ということだったのかなと思います。

みなさんが言葉を発したとき、聴く人はそれをどう受け止めて、どんな気持ちになったのか。そこに気配りし続けるポッドキャスターの姿勢こそが、「聴きやすさの正体」なのかもしれません。

このブログでは、このほかにも「ポッドキャスト運営のティップス」をご紹介しています。ぜひ、みなさんのティップスもTwitterで教えてください。

編集者/Livit代表 岡徳之
2009年慶應義塾大学経済学部を卒業後、PR会社に入社。2011年に独立し、ライターとしてのキャリアを歩み始める。その後、記事執筆の分野をビジネス、テクノロジー、マーケティングへと広げ、企業のオウンドメディア運営にも従事。2013年シンガポールに進出。事業拡大にともない、専属ライターの採用、海外在住ライターのネットワーキングを開始。2015年オランダに進出。現在はアムステルダムを拠点に活動。これまで「東洋経済オンライン」や「NewsPicks」など有力メディア約30媒体で連載を担当。共著に『ミレニアル・Z世代の「新」価値観』『フューチャーリテール ~欧米の最新事例から紐解く、未来の小売体験~』。ポッドキャスト『グローバル・インサイト』『海外移住家族の夫婦会議』。


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