見出し画像

若者に広がる「REコマース」 IKEA、グッチ、サムスンなどグローバル企業が続々参入【ポッドキャスト番組『グローバル・インサイト』文字起こし】

海外のトレンド、若者の間で生まれる新しい価値観を、各国で暮らす編集者・ライターがお届けするポッドキャスト番組『グローバル・インサイト。この番組ではリスナーからの反響が大きかった人気エピソードの文字起こしをnoteで配信しています。

今回は若者に広がる「REコマース」 IKEA、グッチ、サムスンなどグローバル企業が続々参入の回を文字起こししました。

SDGsに関連して、新たに「REコマース」という言葉がグローバルコンシューマ市場でのキーワードになるかもしれません。商品レンタルやユーズド商品の買取・再販サービスなどを総称する言葉で、IKEAグッチサムスンなどグローバル企業も取り組みを始めています。そんなREコマース市場の最新動向を探ります(出演:岡徳之 / 写真:IKEA)。

Eコマースではなく「REコマース」

みなさん、Eコマースという言葉は聞いたことあると思うんですが、「REコマース」という言葉は聞いたことあるでしょうか?

今、SDGsに関連して、「サーキュラーエコノミー」「シェアエコノミー」への関心が高まっていますが、この文脈で今後、この「REコマース」という言葉が、グローバル市場で新たなキーワードになるかもしれないんです。

では、この「REコマース」とはなにか? REコマースは、商品レンタルやユーズド商品の買取、再販サービスを総称する言葉で、昨年、2020年の後半ごろから英語圏のメディアで登場する頻度が増えています。

背景には、レンタルやユーズド商品への需要がここ数年、ミレニアル世代やZ世代を中心に高まっていること。その関心が、このコロナの影響で一層高まっていることがあります。

また、IKEAグッチLevi’sWalmartサムスンといったグローバル企業が、このREコマースの取り組みを始めていることも、メディアからの注目を集める理由となっています。

グローバル企業のREコマース事例

では、具体的にはどんな取り組みがあるのか? 例えば、レンタルサービスの利用が最も多いカテゴリは「家具」なんです。

家具メーカー大手のIKEAは、循環型ビジネスを2030年までに達成するための取り組みの一環として、主要な30の市場で、家具のリースサービスの試験運用を開始すると発表しています。

また、家具の買い取りプログラムやユーズド商品に特化した店舗の開設など、REコマース取り組みを本格化させています。

家具の他に、レンタル市場で成長著しいのは「レンタルファッション」です。オンラインのレンタルファッション市場は、今後4年間で、年率10%以上の成長を遂げると言われています。

そのファッションカテゴリーでは、例えば、ラグジュアリーブランドのグッチが、オンラインのユーズド・ラグジュアリープラットフォーム「RealReal」と提携して、グッチのユーズドアイテムに特化したオンラインショップを開設する計画を発表しました。

これは、グッチは2025年までに、サプライチェーンでの環境へのインパクトを大幅に削減する、と公言していて、その一環だそうです。

ラグジュアリーブランドはむしろ、これまでレンタルとかユーズドと距離を置いていたイメージがあるので、大きな変化です。

同じくファッションカテゴリーでは、Levi’sが昨年10月に、ユーズドジーンズのマーケットプレイス「Levi’s SecondHand」をローンチしたり、Walmartユーズドファッション企業のthredUPと提携して参入したりと、グローバル企業による取り組みが加速しています。

スマホなど電子デバイスでも人気

一方、レンタルが難しいと言われているのが、パソコン、ゲーム機、スマホのような、精密機械、電子デバイス。

これは、家具や洋服と違って、利用者が落としたりして、使いものにならなくってしまうリスクが高いからなんです。

しかし、このカテゴリーでも、サムスンがドイツのガジェット専門レンタルスタートアップGroverと提携して、サムスン製のスマホのレンタルを開始しています。

Groverの独自のアルゴリズムで、利用者ごとのリスクを評価し、リスクが低い利用者に絞ってサービスを提供することで、スマホやゲーム機のレンタルサービスで売上を伸ばしています。

スマホのようなデジタルデバイスに関しては、電子廃棄物、つまり、「e-waste」問題の認知も高まりつつありますから、今後、需要が高まっていきそうです。

「レンタルやユーズドはクール」な若者

どうして、この「REコマース」、つまり、オンラインでの商品レンタルや、ユーズド商品の買取、再販サービスへの関心が高まっているかというと、その背景には、ミレニアル世代とZ世代の消費行動があるようです。

上の世代、X世代や団塊の世代では、レンタルやユーズドは「恥ずかしい」というイメージが強かったのですが、節約志向や環境意識を持つ若い世代にとっては、レンタルやユーズドは、むしろ「クール」に映っているんです。

また、X世代や団塊の世代が、自分自身やライフスタイルを、家や車など、所有物で定義する傾向が強い一方で、若い世代は、友人、コミュニティなど、体験や精神的な要素で定義する傾向があり、それもまた、レンタル市場の活況の背景にあると言われています。

今日は「REコマース」という言葉をご紹介しました。2021年、目が離せない年になりそうですね。

編集者/Livit代表 岡徳之
2009年慶應義塾大学経済学部を卒業後、PR会社に入社。2011年に独立し、ライターとしてのキャリアを歩み始める。その後、記事執筆の分野をビジネス、テクノロジー、マーケティングへと広げ、企業のオウンドメディア運営にも従事。2013年シンガポールに進出。事業拡大にともない、専属ライターの採用、海外在住ライターのネットワーキングを開始。2015年オランダに進出。現在はアムステルダムを拠点に活動。これまで「東洋経済オンライン」や「NewsPicks」など有力メディア約30媒体で連載を担当。共著に『ミレニアル・Z世代の「新」価値観』『フューチャーリテール ~欧米の最新事例から紐解く、未来の小売体験~』。ポッドキャスト『グローバル・インサイト』『海外移住家族の夫婦会議』。


読んでいただき、ありがとうございました。みなさまからのサポートが、海外で編集者として挑戦を続ける、大きな励みになります。