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「ポッドキャスターにとって一番大切なスキルは?」オランダ・ライデン大学日本学科の学生さんからインタビューを受けたよ!

世界で初めて「日本語学科」ができた海外の大学は、僕が暮らすオランダにあるライデン大学だそうです。そんなライデン大学の人文学部・日本学科では、学生さんが日本に短期留学し、日本の大学で授業を履修して単位を取得するプログラムがあるのだそう。

が、今年はコロナウイルスの影響でそれが中止となり、代わりに自分が興味のある仕事に就いている日本人を「日本語で」インタビューし、その内容をレポートするという課題になったそうです。オランダの学生さんも大変です。だけど、日本語でインタビューってすごい!

そうした経緯で、大変恐縮ですが、日本学科の2年生であるエマ・モンスターさんとシモーネ・ファン・ドリールさんに、「ポッドキャスター」としてインタビューしていただきました。

ポッドキャストを始めた理由、収録・配信に向けた準備、ポッドキャスターとして一番大切なスキル、新番組を今後始めようと思うか、一番楽しい瞬間は・・・・・・など、これからポッドキャストを始める人に参考になるかもしれない(?)と思い、その内容をお二人の許可を得てご紹介します。

どうしてポッドキャストを始めたんですか?

僕は普段、編集者という仕事をやっているんですけど、海外のビジネス、テクノロジー、ライフスタイルに関する新しいトレンドとか、そういうものがどうして生まれているんだろう、ということを日本のオンラインメディアを通じて、日本人に、日本語の記事で伝える仕事をしています。

それをいつもはテキスト(文字)、アーティクル(記事)というかたちでやっているんですけど、そうではないかたちで表現することによって、新しい読者、オーディエンスの人たちにも情報を届けられるんじゃないか、届けたいと思って、常に新しいメディアでの発信の仕方を模索してきました。

ちょうどそんなとき、日本でも少しずつ盛り上がり始めていたのがポッドキャストだった。それで始めることにしました。

ポッドキャストを続ける理由はなんでしょう?

たぶん3つくらい理由があるんですけど、一つは、ポッドキャストは今はまだ一部の人しかやっていない、聴いていないんですけど、ポッドキャスト市場というものはこれからどんどん成長していく、拡大していくものだと思います。そういうデータもあるし、僕自身もそうなることを期待しているのでやり続けられる。将来、未来への可能性にかけているということですね。

二つ目は、リスナーさんからのフィードバックです。Spotifyでも配信しているんですけど、アナリティクス(分析)ツールがあるんです。どんな人が聴いているのか、性別とか、エピソードを最後まで聴いてくれているのか、途中でどこかへ行ってしまったのか、割と事細かに分かります。「リスナーさんはこういうことを求めているのかな?」と分かるし、それにツイッターとかでサーチすると、たまにリスナーさんがコメントをしたり、友達にレコメンドをしてくれていたりするんです。フィードバックや喜びがあるから続けられるんでしょうね。

三つ目は、単純に楽しいということ。もともと記事を通じて日本のオーディエンスに情報を発信する仕事をやってきましたが、僕は記事を作る前に結構インタビューをするんですね。僕は文字で記事を書くことと同じかそれ以上に、人にインタビューをして話を聞く、という学びのスタイルがすごく好きなんです。ポッドキャスト、音声メディアって人と語り合って、それがそのままコンテンツになるじゃないですか。それがお金になろうがならなかろうが、楽しいなと。

収録・配信に向けてどんな準備をしていますか?

僕はスクリプト(台本)を作っています。もともと記事を書くためにいろんなデータとかエピソード、ケーススタディーをインプットしているのですが、それをセリフに落とし込んでいきます。といっても、それは僕一人でやっているわけではなく、世界中のライターさんとやっていること。一緒に台本を作っているんです。これが一番大きな準備かなと思います。

トピックの選び方については、例えば、過去によく聴かれたのは、テスラのような自動運転車に関するエシカル(哲学的)な問題について取り上げた回でした。

自動運転車で移動していて、目の前に子どもが飛び出してきた。そのままひいてしまうのか、それともハンドルを切るのか? ただし、ハンドルを切るとそこにはお年寄りの人がいる。このまま行くと子どもが死んでしまう。ハンドルを切るとお年寄りが死んでしまう。ただそのお年寄りにはなんの罪もない。子どもはボールを追いかけて飛び出してきた。このときにそのテスラはどう判断して、どう動くべきか? そういう哲学的な問題を取り上げました。

リスナーの人たちが自分に置き換えて、自分だったらどうするかな、と自分ゴトとして考えられる、余白のあるテーマが聴かれるのかなと思います。

ポッドキャスターにとって一番大切なスキルは?

いい質問ですね。なんだろう・・・ うん・・・「自分が楽しむ」ことじゃないでしょうか。知的好奇心というか。

なぜかというと、メディアってすぐにオーディエンスが増えるものでもない。続けているうちに徐々にユーザーベースが増えていく。時々ヒットするコンテンツが生まれて、それで一気にユーザーベースが拡大して、また徐々に増えて、だけどビジネスになるかはまた別の話、いつかはビジネスになるかもしれない。成功するとしても、それまでに時間がかかるんですね。そういう意味で、続けることが大事。

それと、ポッドキャスターの数はこれから増えていくでしょうから、個性を出さないといけない。よくラジオで「パーソナリティ」っていうじゃないですか。パーソナリティってその人自身、らしさ、個性ですよね。声で発信するということは、その人の個性、パーソナリティが出ていたほうがいい、というか伝わってしまうものだと思うんですね。だから、その人自身が伝えたいこともそうだけど、それ以上に、その人自身が知りたいと思っていること、それを知ってシェアしたいと感じたことが力のあるコアになる。

そういうことが、番組を続けていくうえでも、その人らしさを出していくうえでも大事。だから、知的好奇心がなくならない=自分が楽しむことが大切なんじゃないかと思います。

一人ではなく、だれかと一緒に番組を作るのはどう?

楽しいですね。僕は一人でやるよりも、二人のほうが始めやすいし、実際に話していて楽しいと思います。僕自身はプロフェッショナルなラジオのパーソナリティでもない、声でなにかを表現するプロではないので、助けてもらうパートナーが必要ですし。

それに、ありがたいことに、リスナーさんよりも先にパートナーの人からフィードバックをもらえるんです。台本にしても「ここはもっといい表現がある。ここ面白いね」って言ってもらえる、とか。そうやって番組の改善を続けていくうえでも、だれかとやるっていいですね。

そのぶんスケジュール調整をしないといけません。今コロナで外出できないじゃないですか。僕は子どもがいるんですが、収録中に子どもの声が入ったら大変(苦笑)。だから子どもが寝てからじゃないと収録できなくって、相手に夜に時間を作ってもらわないといけないんですが、相手とライフスタイルが異なる場合は調整しないといけません。

それと、相手が作った台本のセリフを自然にしゃべるという、ある意味演技をするのが難しいときはあります。自分が作った台本なら、自分の普段のしゃべり方でセリフも書いてあるけど、相手が作った台本はそうはなっていない。そうすると、わざとらしかったり、演技しているな、不自然だなとリスナーさんに伝わってしまうこともあったりすると思うので、そこはパートナーと一緒に工夫をしていく必要があります。

今後、新番組を始めるつもりはありますか?

いい質問ですね。ちょうどいまどうしようかなと考えていたところなんですよ。いつかは始めるんだろうと思っています。

というのも、僕が今やっている番組はテーマがとても広い。でも続けていると、リスナーさんの興味関心が分かっていくんです。最初はビジネスもテクノロジーもライフスタイルも全部聴いてほしいと思っていたし、今もそうやっているけど、よく聴かれるエピソードはデジタルメディア、メディアビジネス、ジャーナリズムに関するものが多くて。それは僕の仕事柄、仕方がないことなのかもしれないけど、これをライフスタイルのほうにもっとエッジーにやっていこうと思うと、新たに番組を始めてもいいのかもしれません。

ただ、ポッドキャスト市場自体、日本では今はまだそんなに大きくないはずので、そこまでセグメント、ターゲティングして、さらにニッチな市場をねらっていく必要はないのかなと思っていて、それで今は一つの番組にしぼっています。

奥さんともポッドキャストをやっているのはなぜ?

さっきの「自分が楽しむ」に通じることなんですが、僕ってオランダでは外国人じゃないですか。子育てをしていると、カルチャーショック、と言ってもポジティブなショックを日々受けるんですよ。教育に関する考え方、人生におけるプライオリティーとか、あらゆることがアジアとは違うなと思うんですね。それによって僕自身のクオリティー・オブ・ライフが上がっている実感もあるんです。引っ越してきてよかったなと。なので、その「よかったな」と思う気持ちを日本のみなさんにシェアしたい。

それに、こうやって発信していかないと、自分が感じたことって忘れてしまうんですね。僕と奥さんが何年か後、子育てが落ち着いたとき、こうやって残しておくことが自分たちのためにもなるかなと思ってやっています。

あとは、ポッドキャストをやることが、夫婦にとっていいコミュニケーションのルーティンになっているなとも思っていて、リレーションシップ(関係)をよりよくする、保つとか、そういう役割もポッドキャストは果たしてくれているなと感じています。

ポッドキャスターの仕事で一番楽しいと感じる瞬間は?

やっぱり収録ですね。台本を作った時点で、「こういう話の流れになるんだろうな」と想像はするんですけど、実際にしゃべると、化学反応というか、そういうのが起こる。

というのも、やっぱり文字で台本を書くのと、自分がしゃべったことに対して相手から反応があって、その反応に対して自分からも思わずまた反応が出てしまう、という体験とでは全然違うんですね。台本があってもその場で新しいアイデアが思い浮かんでしまう、台本にないことを口にしてしまう。その瞬間がまた、知的好奇心のエンジンになっているんだろうなと思います。

編集者/Livit代表 岡徳之
2009年慶應義塾大学経済学部を卒業後、PR会社に入社。2011年に独立し、ライターとしてのキャリアを歩み始める。その後、記事執筆の分野をビジネス、テクノロジー、マーケティングへと広げ、企業のオウンドメディア運営にも従事。2013年シンガポールに進出。事業拡大にともない、専属ライターの採用、海外在住ライターのネットワーキングを開始。2015年オランダに進出。現在はアムステルダムを拠点に活動。これまで「東洋経済オンライン」や「NewsPicks」など有力メディア約30媒体で連載を担当。共著に『ミレニアル・Z世代の「新」価値観』『フューチャーリテール ~欧米の最新事例から紐解く、未来の小売体験~』。ポッドキャスト『グローバル・インサイト』『海外移住家族の夫婦会議』。


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