フォロワーやインフルエンサーは要らない。「Yubo」に見るZ世代がSNSに求めるもの【ポッドキャスト番組『グローバル・インサイト』文字起こし】
海外のトレンド、若者の間で生まれる新しい価値観を、各国で暮らす編集者・ライターがお届けするポッドキャスト番組『グローバル・インサイト』。この番組ではリスナーからの反響が大きかった人気エピソードの文字起こしをnoteで配信しています。
今回は『フォロワーやインフルエンサーは要らない。「Yubo」に見るZ世代がSNSに求めるもの』の回を文字起こししました。
世界のSNS市場では今後、大手がさらに拡大すると同時に、「多様化」が進むことも考えられます。世代、関心事、趣味などをベースとした新たなSNSが台頭してくるということです。
すでにその兆候は出てきており、欧州発のソーシャルメディア「Yubo」がユーザー数4000万人を突破するほどの大人気に。ユーザーのほとんどはZ世代だと言われています。
多様化したSNSとはどのようなものでしょうか。そこから透けて見える「Z世代がSNSに求めるもの」とは?(出演:岡徳之 / 写真:Yubo)
SNSに「多様化」の兆候
世界で最もユーザーが多いSNSといえば・・・?
ご存知、「フェイスブック」ですね。2020年、第3四半期時点の月間アクティブユーザー数は、27億4000万人に達しました。
主要なSNSは、このほか、インスタグラム、YouTube、ツイッター、スナップチャット。フェイスブックを筆頭に、アメリカ発のSNSが世界を圧巻しているわけですが。
今後は、そうした大手SNSのさらなる拡大と同時に、「多様化」も進んでいくかもしれません。つまり、世代、関心事、趣味などをベースに、新しいSNSが台頭してくる、ということです。
実は、そうした「SNSの多様化」の兆候はすでに出てきています。
ヨーロッパ発のSNS「Yubo」のような、大手SNSとは違った特性を武器に、ユーザーを獲得しているSNSが、海外では出てきているんです。
「Yubo」は、27歳の起業家、サチャ・ラジミさんが、フランスのパリで2015年にローンチしたSNS。現在、40カ国でサービスを展開し、ユーザー数は4000万人を越えたそう。
フランス発ではあるものの、ユーザーの半数以上は北米のユーザー。また、16〜21歳のユーザーが80%を占める、Z世代向けのSNSとなっています。
このYubo、フェイスブックやインスタグラムとは違ったアプローチで、若い世代の人気を獲得しています。
YuboとFacebookの大きな違い
まず、Yuboにはフォロー機能がありません。よって、フォロワー数で定義されるインフルエンサーという概念も存在しません。
本当に見知らぬ同年代のユーザーどうしが、カジュアルに会話を楽しむために使っているんです。
ビジネスモデルも、大手SNSのの広告収入モデルとは異なります。
Yuboは、基本無料で利用できるんですが、2ドルでプレミアム機能を購入したり、月額10ドルでプレミアム機能のサブスクを利用する、いわゆる、フリーミアム型のモデルで、ビジネスを展開しています。
ただ、「見知らぬユーザーどうしが会話するって危険じゃない・・・?」とリスクを感じる人もいるかもしれませんが、Yuboはそれも考慮しており、13歳未満は利用できないようになっています。
そのために、登録する際に、IDと電話番号だけじゃなく、AIによる動画・声認証の仕組みも導入。学生であれば、学生証の提示も求められ、その顔写真、年齢、学年などの情報と、先ほどのAIによる判定から、本人であることを確認し、ユーザー認証をします。
こうしたリスク対策に注力していることも、デジタルサビーなZ世代に受け入れられている理由のようです。
「SNSを使う理由」は世代で異なる
「フォロー機能もフォロワーもいなくて、そんなSNS楽しいの?」と思われるかもしれませんが、それでも、YuboがZ世代の人気を集めているのは、世代によって「SNSを使う理由」が違うから、だそうなんです。
Adobeが2019年7月にアメリカで実施した、SNSに関する世代別意識調査によると、世代間のギャップが最も顕著にあらわれたのが、「写真のシェアや近況報告」のためにSNSを使う割合だったそうです。
団塊の世代では、57%ととても高かった一方で、Z世代は33%。ちなみに、X世代では50%、ミレニアル世代では44%でした。
もう一つ、世代間の違いが顕著にあらわれたのが、「友達と遊んだり、チャットしたりする」ためにSNSを使う割合。
こちらは、団塊の世代が18%だったのに対し、Z世代では30%と2倍近い差。ちなみに、X世代は23%、ミレニアル世代は24%でした。
つまり、若い世代ほど、SNSを、写真のシェアや近況報告の場としてではなく、友達と遊んだり、チャットをしたりする空間として捉える傾向が強い、ということ。
だから、彼ら彼女らはフォロワーの存在など気にせず、カジュアルにチャットするーーこれがZ世代が求めるSNSの形。Yuboはそのニーズを、たくみに取り込んでいるんですね。
Yuboは最近4750万ドルを調達、この1年間の累計調達額は6000万ドルを超えました。すでにニューヨーク、ロンドンにオフィスを構えており、英語圏、また、東南アジア、台湾、韓国、日本でもサービスを拡大する計画のようです。
Yuboのほかにも新興SNSが続々?
今日はYuboを紹介しましたが、このほかにも、元フェイスブックの社員がローンチした「Cocoon」など、近しい友達や家族だけのチャット空間を作るSNSなども存在します。
大手SNSが引き続き拡大する一方で、世代別・関心事別の需要を取り込んで成長する新興SNSの動向からも目が離せません。
編集者/Livit代表 岡徳之
2009年慶應義塾大学経済学部を卒業後、PR会社に入社。2011年に独立し、ライターとしてのキャリアを歩み始める。その後、記事執筆の分野をビジネス、テクノロジー、マーケティングへと広げ、企業のオウンドメディア運営にも従事。2013年シンガポールに進出。事業拡大にともない、専属ライターの採用、海外在住ライターのネットワーキングを開始。2015年オランダに進出。現在はアムステルダムを拠点に活動。これまで「東洋経済オンライン」や「NewsPicks」など有力メディア約30媒体で連載を担当。共著に『ミレニアル・Z世代の「新」価値観』『フューチャーリテール ~欧米の最新事例から紐解く、未来の小売体験~』。ポッドキャスト『グローバル・インサイト』『海外移住家族の夫婦会議』。
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