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★エッセイ集 視座

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#祖母

エッセイ 祖母の故郷

 (ここか。ここがゑつが生まれて育ったところか。ここから汽車に乗って町にも出かけたし、嫁いで行ったんだな。) そう思うと感慨深かった。我ながらよく来たと思った。    私には祖母が三人いる。父方の実の祖母と母方の実の祖母と義理の祖母の三人である。実の祖母二人は早死にしたが、母方の義理の祖母は104歳まで生きた。その人が、私の祖父の再婚相手というわけである。私の母は、最初の奥さんとの間の子なので、祖母とは継母継子のなさぬ仲ということになる。  私の母方の実の祖母は、もともと体が

エッセイ もうひとつの祖母への挽歌

(桜か・・・。おばあちゃんに見せてやりたかったな。どこかで見ているかな・・・。)       一枝を  柩に入れたき 春の夜     先にアップした『祖母への挽歌』で紹介した短歌 病室の 百を越えたる 我が祖母の 手鏡見つめ 髪くしけずる の他にもうひとつ、祖母の霊前に供えた俳句がありますので、そちらも紹介させてください。    祖母が亡くなった連絡を受けて私は妻とふたりで病院に駆けつけました。祖母はすでに霊安室に移されていました。その時は私たちふたりだけでした。お坊さん

エッセイ 祖母への挽歌

病室の 百を越えたる わが祖母の      手鏡見つめ 髪くしけずる  私の祖母が104歳で死ぬ少し前に老人ホームのトイレでころんで、大腿骨を骨折して入院した時のことだ。私はもう退院できないだろうと思った。祖母の母親が、やはり自宅の庭でころんで腰の骨を折り、20年間寝たきりとなり、そのまま亡くなったからだ。しかし、現代医学はその頃から驚くべき進歩を遂げていた。100歳を越えている老婆の太腿にボルトを埋め込み、折れた骨を固定したのだそうだ。祖母の骨が太くて年の割には丈夫だっ