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ジャズを軽く聴き始めたい人への軽い名盤紹介㉒ケンカ・セッション~Miles Davis『BAGS GROOVE』(1954年)

こんにちは。

しばらくぶりのこのシリーズ、お待たせいたしました!

今回は、マイルス・デイビスの『バグズ・グルーブ』
そうです、ご存じの方もおられるかもしれませんが、別名『クリスマスのケンカ・セッション』とも呼ばれている名盤です。

Miles Davis『BAGS GROOVE』

1 Bags' Groove [Take 1] 
2 Bags' Groove [Take 2]
3 Airegin
4 Oleo
5 But Not for Me [Take 2]
6 Doxy
7 But Not for Me [Take 1]

パーソネル

「バグス・グルーヴ(1,2)」
マイルス・デイヴィス – トランペット
ミルト・ジャクソン – ヴィブラフォン
セロニアス・モンク – ピアノ
パーシー・ヒース – ベース
ケニー・クラーク – ドラムス

「3~7」
マイルス・デイヴィス – トランペット
ソニー・ロリンズ – テナー・サクソフォーン
ホレス・シルヴァー – ピアノ
パーシー・ヒース – ベース
ケニー・クラーク – ドラムス

「クリスマスのケンカ・セッション」と呼ばれている部分は、実は1曲目と、別テイク2曲目の「Bags’ Groove」の二つのテイクだけなんです。
伝えられている話はこうです。

元々マイルスの『Miles Davis and The Modern Jazz Giants』というアルバムがあり、その時のセッションでの話。
マイルスが、大先輩セロニアス・モンクに対して、
「あなたが作曲した Bemsha Swing 以外の曲では、私のソロの部分では、バックでその変なピアノを弾かないでくれ」とお願いしたそうです。しかし、これを聞いたモンクはさすがに激おこし、殴り合いの喧嘩になった、という話です。

『Miles Davis and The Modern Jazz Giants』

1.The Man I Love (Take2)
2. Swing Spring
3. 'Round Midnight
4. Bemsha Swing
5.The Man I Love (Take1)

パーソネル

マイルス・デイヴィス – トランペット
ミルト・ジャクソン – ヴィブラフォン
セロニアス・モンク – ピアノ
パーシー・ヒース – ベース
ケニー・クラーク – ドラムス

3のみ(マラソンセッション5月版の録音)
マイルス・デイヴィス - トランペット
ジョン・コルトレーン - テナーサックス
レッド・ガーランド - ピアノ
ポール・チェンバース - ベース
フィリー・ジョー・ジョーンズ - ドラムス

これを裏付ける話として、このアルバムの一曲目「The Man I Love (Take2)」でのピアノソロ、モンクは途中で演奏をやめてしまいます。聴こえてくるのは、ベースとドラムの音だけ。よほど肚に据えかねていたのでしょうか。
さすがに異常を感じたマイルスが、パラリラパラリラーーと、ソロを促すようにトランペットを吹き、モンクはソロを再開します。
とてもスリリングな瞬間で、聴いてる方もドキドキです。

けれど、この演奏をじっくり聴きなおしてみると、この説には納得できない部分がある。
最初のテイク1と聴き比べると、確かにモンクの行動は異様だが、それ以上に見逃せないのは、このテイク2の演奏全体の素晴らしいテンションの高さだ。あらかじめ細かくアレンジされたように、様々なアイデアが演奏者たちに共有されている。
モンクのソロも、テイク1とほとんど同じアイデアが繰り返され、即興はその柱のアイデアの周辺で動いている。
ソロが止まったのは、おそらくその展開が、瞬間空白状態になり、時が止まったような金縛りのようになってしまったのではないだろうか。
マイルスは、それを察知し、すぐさま動き、演奏を継続させた。最後のミュートの頻繁な交換も、このテンションの高い演奏を継続し完成させたかったからだろう。ダメと思ったら、演奏は途中で止めたはずである。

(青木和富:ジャズ評論家)

殴り合いの喧嘩なんて誰も目撃していないし、これは後々に尾ひれがついたジャズあるあるな話ではないかと私も思います。
マイルスの自伝では、「音楽的なバランスを考えての提案であった」と語っています。

本題の『BAGS GROOVE』から、話が大きく逸れてしまいましたが、このアルバムではタイトル曲の2テイクが、その時のセッションで録音されたものです。
他の曲は、私も大好きな名スタンダード曲「But Not For Me」をソニー・ロリンズが気持ちよく朗々と歌い上げます。
その他の曲もロリンズ自身の曲であり、十分に楽しめます。

今回取り上げた2枚のアルバム、どちらもジャズ史に残る名盤であり、なおかつジャズ初心者でも入りやすいアルバムですので、どちらも一家に一枚ずつ置いておいても損は無いと思います。

今回も最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございます。

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