1分シマウマ #毎週ショートショートnote
「あなたの前世はシマウマです」
「シマウマ?」
一級前世鑑定士が断言するんだから間違いないのだろう。まさか僕の前世は人間じゃなかったなんて。
こちらをどうぞとVRゴーグルを手渡された。
「これは?」
「このゴーグルを装着すれば、前世の記憶を一分間だけ再現することができます」
もうそんな時代になっていたのか。さすが一級前世鑑定士。
ゴーグルを装着すると鮮やかな草原が視界に広がった。シマウマの僕は全速力で走っていた。いや、必死で逃げていた。
ガブリとお尻を噛まれた気がした。そんなはずはないのに、その痛みを覚えていた。僕の肉に牙を立てていたのはヒョウだった。キラキラと輝く瞳、優雅な曲線を描く身体。僕の前世の最後の記憶はそこで途絶えた。
あの瞳を知っていた。
会社の同僚で僕の天敵。クリリと大きな瞳にゆるふわウエーブの美人さん。
彼女の前世は間違いなく、あのヒョウだ。
だって、なぜかいつも僕を目の敵にして、僕の言葉尻に噛みついてくるのだから。
久し振りのショートショート。
楽しく書けました。
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