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分子シミュレーションに関するお勧めの参考書

仕事柄,「お勧めの分子シミュレーション参考書ありますか?」と聞かれることがあるのですが,そんな時は迷わず↓の参考書を第一に挙げています。

特に生体分子シミュレーションを始めたい方には絶対に読んでほしいと思えるくらいお勧めです。平衡系の分子シミュレーションのエッセンスがぎゅっと詰まった内容になっているので,材料科学のテーマに対して平衡系の分子シミュレーションを実施したい方にもお勧めできます。お勧めのポイントを以下にまとめました。

1. 初学者を意識した内容

タイトルに「入門」とある通り,分子シミュレーションについて初めて学ぶ読者を想定してあります。少なくとも分子シミュレーションに関する知識は全くない人でも読めるよう工夫されています。多少の確率や微積分といった数学の知識は必要となりますが,高校レベルの数学で充分です。文章も平易でとても読みやすいです。

2. 話の軸がブレない

統計・確率論という視点から見たときの分子シミュレーションを説明することに一貫しています。例えば,「(平衡系の)分子シミュレーションはボルツマン分布と称される確率分布をサンプリングすることに等しい」といった感じです。統計・確率論はあくまで分子シミュレーションの一側面なのですが,実用上は統計・確率論的な視点で分子シミュレーションを捉えることが重要なので,それ以外の側面をなるべく排除して統計・確率論に集約されている構成はとても良いと思います。

3. 論文や他の参考書では得られない知識

統計・確率論は分子シミュレーションの一側面である,という事実はあまりにも当たり前なので,論文で導入的に説明されることはありません。なので,どんなに分子シミュレーションの論文を沢山読み込んだとしても,この本で得られる視点を身に着けることは困難です。
参考書の場合ですと,ある程度は言及されることはありますが,この本ほど徹底的に重要性を問うものは見たことがありません。
この本で書かれてることが理解の根底にないと,論文や他の参考書に対する理解も片手落ちの状態だと言えます。逆に,この本を読んでから他の論文や参考書を読んだり,もしくは実際の作業に取り掛かるのが最も効率的だと思っているので,これから分子シミュレーションを始めようと思っている方にまず読んでほしいと思う次第です。

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