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「丸亀製麺」の商標を他人が使用できるのか?

※トップ画像はhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%B8%E4%BA%80%E8%A3%BD%E9%BA%BAより引用

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 弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
 今回は、「「丸亀製麺」の商標を他人が使用できるのか?」について説明します。

 商標というものは、他人と識別できる識別力を有していることが必要です。
 何故なら、この商品は何処の誰が製造している、あの店は誰が営業しているということが分からなければ、そもそも商標の意味が無いからです。

 そういった事情から、例えば以下のような識別力の無い商標は基本的に拒絶されます。
・その商品の普通名称のみで表わしている商標
 例:果物にりんご
・その商品について慣用されている商標
 例:清酒に正宗
・その商品の産地や品質等のみを表わしている商標
 例:薬によくなーる

 他にもありますが、長くなるので省略します。
 気になる人は商標法第3条第1項各号をインターネットで検索して読んでみてください。

 さて、ここで表題にも書いた「丸亀製麺」ですが、丸亀市で製造された麺を表わしているだけであり、飲食店においても丸亀市で製造された麺を提供しているにすぎず、原則として商標登録されません。
 つまり、商標法上は「丸亀製麺」を誰もが自由に使用できることになります。

 実際に登録されている「丸亀製麺」の商標を見てみましょう。
 検索してみると2件ありました。
 2件あるのは、一方が「うどんのめん」等の商品について取得しているのに対し、他方が「飲食物の提供」の役務について取得しているからです。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2010-031742/56FEE583933BAF516757A3EA5071E6F745FA73B790190FA6CF789A46D5F494FD/40/ja

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2011-005901/138C85FEF645F5DA21757AE26C22D0D3BA6DB6DCF9A3854B868352CEBA9B3B65/40/ja

丸亀製麺画像

 これらを見てみると、「丸亀製麺」の文字だけではなく、赤色の枠も配置した商標となっています。
 ちょっと微妙かなと思いますが、「丸亀製麺」という文言ではなく、全体のデザインで商標権を取得しているパターンです。

 実は、「丸亀製麺」の商標は上記の2件だけでなく、下記のものがあります。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2004-090356/CE3770B494BFAC340A8C8B84AEDB1285151595F7EEA164B80A33E0C95A886F8F/40/ja

丸亀製麺拒絶

 こちらは産地や品質等だけを表わしている商標として、商標法第3条第1項各号を理由に拒絶査定となっています。

 つまり、これらの商標登録出願を見てみても、「丸亀製麺」の文字自体には他人との識別力がなく、誰もが使用しできる商標ということがわかります。

 しかし、「丸亀製麺」を誰もが使っている形跡はないですね。
 何故でしょう。

 これは、不正競争防止法によって保護されていると考えます。
 「丸亀製麺」は現在、全国で約850件あるようです。
 これだけの店舗を展開していると、日本国民の殆どが「丸亀製麺」を知っていることになります。

 すると、関係ない第三者が「丸亀製麺」の看板を出すと、需要者は本家の「丸亀製麺」と間違えて誤認混同を起こすことになります。
 その場合、本家の「丸亀製麺」は、後発の「丸亀製麺」に対して営業停止等の差止めや損害賠償請求をすることができます。

 こういった理由から、商標法上は問題なくとも不正競争防止法で保護されて、第三者の「丸亀製麺」の使用はできないと考えます。

 仮に、本家の「丸亀製麺」がまだ数店舗しかないときに、他人が「丸亀製麺」の看板で営業して、複数の「丸亀製麺」が乱立してしまった場合、不正競争防止法でも保護されにくくなり泥沼の争いになりそうですね。

 「丸亀製麺」の場合は上手く行っていますが、一般的に識別力のない商標を付すと、事業規模を拡大するときに不利になることが多いと思います。
 もっとも、個人商店レベルでは商標の管理が不要になることから利点にはなります。

 弊所も坂岡特許事務所という屋号のため、特に商標で保護する必要もありませんので楽です 笑

 いかがでしょうか、本記事についてご理解いただけたでしょうか。
 この記事が御社のご発展に役立つことを願っています。

坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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