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特許出願するか否かの判断基準

【稼ぐ経営者のための知的財産情報】
 
 弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
 今回は、「特許出願するか否かの判断基準」をお伝えします。
※出願等のお問い合わせはこちらから http://www.sakaoka.jp/contact
 

1.知財を活用して企業価値を上げる方法の概略

 以前の記事「知財を活用して企業価値を上げる方法」では、具体的な方法として以下の7つを挙げてみました。
https://note.com/norio_sakaoka/n/nc45fe8bec77c
(1)課題探し
(2)従業員全体から課題を吸い上げる工夫
(3)効果の高い改善提案を選別
(4)先行技術調査
(5)抽出した先行技術文献を模倣する
(6)先行文献をさらに改良する
(7)特許出願の可否を検討する
 
 今回は、上記のうち(7)特許出願の可否を検討する(特許出願するか否かの判断基準)を、さらに詳しく説明して参ります。
 

2.基本的な考え方

 よい改善提案があって、それを特許出願するか否かの判断において、私が推奨する基本的な考え方は、ズバリ「自らが実施するものであり、新規性があれば出願する」です。
 以下、この考え方について説明しますね。

3.自らが実施する

 これは、法人又は個人事業主などの事業者であれば、基本的に問題になりません。
 事業者の多くは自ら改善した商品又はサービスを実施すると思われるからです。
 
 避けた方がよいのは、全くの個人発明家で、その特許を売ってお金にするというプランです。
 実は、特許を売るというのは思いのほか難しいのです。
 何故なら、売れるかどうか分からないものに対して、赤の他人に投資をしてといっているようなものだからです。
 しかも、その投資は市場調査、設計、試作、量産、宣伝、物流管理、販売とコストがかかることばかりです。
 
 逆の立場でいわれたら、よほど儲かりそうなものを除いて自分でやってくださいと言いたくなると思います。
 
 では資金力のある大企業ではどうかというと、こちらは基本的に門前払いです。
 理由は、何万人と従業員がいる大企業では、社内に色んなアイデアを持っている人がいます。
 個人発明家からのアイデアを聞くと、後でトラブルの元になります。
 それに、大企業は数億円規模までの市場は小さくて参入してこないことが多いです。
 
 とはいっても可能性は0ではありません。
 その発明が本当に革新的な素晴らしいもので、市場も大きくて複数の大企業が欲しがり、その発明に対して10くらいの特許を取得して、さらにそのいくつかは海外にも出願しているような状態であれば、売れる可能性はあります。
 
 でも、個人でそんなにたくさんの特許出願するのは難しいですよね。
 ということで、個人発明家が特許を売る行為は、かなり厳しいと思ってください。 

4.自社の業務に関係あるのか

 先ほど、法人又は個人事業主などの事業者であれば、自社で実施できるため基本的に問題ないと書きました。
 但し、注意も必要です。
 
 それは、自社の業務に関係あるのかということです。
 全く無関係ということは少ないと思いますが、関係が薄ければ薄いほど、その発明は事業として成功する確率が低くなりそうです。
 同様に、販売先が自社の顧客か否かも重要視する方がよいでしょう。
 
 新規事業が上手く行く可能性は、自社の既存事業、特に中核となる事業に似ていれば似ているほど高まります。
 同様に、自社の既存顧客に売れる商品やサービスであれば、上手く行く可能性が高くなります。
 自社の既存事業と既存顧客の枠内で勝負することをお勧めします。
 
 人生はチャレンジの連続ですが、可能性の低いチャレンジばかりしていたら破産します。
 たまに冒険するくらいならよいですが、基本的に手堅くされることをお勧めします。 

5.新規性

 さて、前置きが長くなりました。
 新規性とは、これまでに世の中に知られていないことをいいます。
 特許要件にはいくつか種類があるのですが、最も重要なのが新規性と進歩性です。
 
 特許の場合、新規性と進歩性は主に過去の文献によって判断されます。
 つまり、過去の文献に同じものがなければ新規性があるということです。
 

6.進歩性

 他にも進歩性という要件もあります。
 進歩性は、その業界において通常の知識を有する者(開発者レベルの人)が、容易に考えつかないことをいいます。
 例えば、過去の文献にAという構成が記載されている。別の文献にもBという構成が記載されている。
 そんな状態でA+Bを作っても、単なる寄せ集めで進歩性はないよね、という感じです。
 
 とはいっても、進歩性は特許庁の審査官が判断するものです。
 これって寄せ集めでしょ?といったときでも、顕著な効果や阻害要因を主張して特許になることがあります。
 ですので、基本的に新規性があれば、どんな出願でも特許になる可能性はあります。
 (特許の可能性が高いとまではいいませんが、、、)
 

7.まとめ

 このように、自社で実施する予定があって、その発明が既存事業と既存顧客に関係して、新規性があれば特許出願をすることをお勧めします。
 中小企業の知財に関する失敗は、出願していなかったことが多いです。
 後で出願しておけばよかったと思っても遅いのです。
 
 でも特許出願に費用がかかるでしょ?という意見もあると思います。
 これについては極論ですが、特許出願の費用を出せないなら、その発明自体に魅力が無いか、その事業者自身に事業の存続をする力が無いということです。
 
 もちろん、特許出願するにあたって費用と効果を天秤にかけて検討する必要があります。
 検討した結果、将来性が見込めると判断すれば、迷わす特許出願されることをお勧めします。
 
 この記事が御社の発展に寄与することを願っております。
 
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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