登録されない商標を独占的に使っている事例
【稼ぐ経営者のための知的財産情報】 弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
今回は、「登録されない商標を独占的に使っている事例」について説明します。
商標は、基本的に極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなるものは登録されません。
この登録されない商標には、商品の型番、形式等を表わすものとして一般的なものも含まれます。
例えば、「123」「A-B」「AB2」などの商標は、そのまま出願しても登録されません。
しかし、世の中には上手にする人もいるようでして、今回はその事例を紹介します。
それは、アディダス社の商標登録第5343686号「Y-3」という商標です。
アディダス社は他にも「Y-3」の登録商標を取得しています。
アディダス社のホームページを見ても、「Y-3」のブランドが大々的にアピールされています。
しかし、「Y-3」って、登録されないはずでは?と思います。
これにはカラクリがあって、実際の登録商標は下の図のように、「Y-3」の上に球体状のマークが付されています。
この球体状のマークがあることで、登録になっています。
つまり、「Y-3」単体ではなく、「球体状のマーク」+「Y-3」での登録商標なのです。
それにしても、球体状のマークが小さくて、「Y-3」がやけに大きいですね。
ここにアディダス社の巧妙?な作戦がうかがえます。
仮に第三者が「Y-3」を商標として使用した場合、通常であればその使用に対して文句を言うことはできません。
何故なら、「Y-3」はそもそも登録されない商標だからです。
つまり、万人が使える商標です。
しかし、ここは天下のアディダス社です。
ここからは推測ですが、他人が「Y-3」を商標として使用した場合、およそ以下のような流れになると思います。
先ずは、警告をします。
その段階で、アディダス社の商標は「Y-3」が大きく表示されており、その大きく表示された部分を模倣されているのだから、アディダス社の商品と誤認混同が生じている、と主張します。
さらに、アディダス社ですから、広告宣伝費をたくさんかけて、あっという間に需要者に周知の状態を作ることができます。
そうなればしめたものです。
今度は、不正競争防止法によって、周知な商品等表示である「Y-3」と誤認混同が起きていると主張すればよいのです。
こうやって、そもそも登録されない商標を独占的に使用しているのです。
なかなかの作戦ですね。
これが良いのか悪いのかはわかりませんが、さすがアディダス社です。
ちなみに、「Y-3」は米国では商標登録されているようです。
検索するといくつかヒットしました。
下の画像は指定商品を「携帯電話のカバー」等にしている商標です。
但し、日本では原則として「Y-3」だけでは登録されません。
登録されるのは、「Y-3」がコカコーラの瓶やヤクルトの容器のレベルまで、日本国内で著名になったときだけです。
さすがにそこまで著名になるのは厳しいのかなと思っております。
しかも、仮に著名になったとしても審査ではなかなか認められず、審判や知財高裁まで争ってやっと登録になるレベルです。
実は今回のネタ、お客さんから「Y-3」という商標が登録されていると聞いて、なんで?と思って見てみたところ発見しました。
世の中には色々な会社がありますね。
この記事が御社のご発展に役立つことを願っています。
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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