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失敗から学べ! (板倉 雄一郎)

 板倉氏の本としては、先に「社長失格」という実体験に基づくノンフィクション作品がありますが、本書は、その失敗(倒産・自己破産)経験から、ベンチャー企業の本質を踏まえた“新規事業を起こすにあたっての勘所”等を分かりやすく示しています。

 著者には大変失礼ではありますが、最初手に取ったときは「流行の起業家の乱造された出版本」のひとつかと思っていたのですが、予想外に内容はしっかりしていました。
 もちろん経営学者や有名コンサルタントの本ではないので、体系的・網羅的ではありませんが、実体験がベースなだけにそれを補って余りある説得力はあると思います。(今では板倉氏も有名コンサルタントかもしれませんが・・・)

 その意味では、起業のためのHow To本というより、もっと広くビジネス一般に当てはまる分かりやすいケーススタディテキストと考えることもできるでしょう。

 たとえば「商品」についての認識のくだりにはこういう記述があります。

(p141から引用) 世界最大のネット書店アマゾンドットコムが提供している商品は、たしかに「本」である。けれども同社にとって本当の「商品」とは「あらゆるジャンルの書籍の中から顧客が目的とする本を検索-発注-決済-発送という手順で24時間以内に届ける」という「時間と作業の利便性の提供」なわけである。本は「売り物」ではあるが、「商品」ではないのだ。

 本質をとらえた解説だと思います。

 特にこの本のメーンテーマである「失敗」については、まず俯瞰的な観点から、ベンチャー企業が生まれ育つ苗床にとって極めて有用なものと位置づけています。

(p185から引用) 数多くの起業家が「チャレンジ」し、その大半は失敗する。けれどもその過程において蓄積された技術や知識や経験は、マーケット全体の成長に役立つ。・・・ベンチャーというのは、個々の失敗がマーケットを育てる、という共通基盤があるからこそ成り立つ。

 また、起業家個人に対しては、「失敗」というキーワードから次のようなとても貴重な示唆・アドバイスを記しています。

(p194から引用) ベンチャーの経営においてやってはいけないのは、「失敗すること」ではない。「失敗を認めないこと」なのだ。
(p207から引用) 起業家は常に失敗を意識し、そしてどんな失敗が考えられるのか、失敗でなにが起こり得るのか、それに対してどんな対処法があるのかを想定すべきである。
 それが成功への必要条件なのだ。



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