人はどこまで生きて、いつ潮時なのか 〜勿忘草の咲く町で 夏川草介〜
▶︎勿忘草という花を聞いたことがあるだろうか。基本的には日本では北海道が自生地となっている花で、本州の人間からしてみれば、馴染みはほとんどないだろう。本州では唯一長野県の上高地で見ることができるが、ほとんど目にすることはないので、花の存在すら知らなくても無理はない。
▶︎無論関東に住む私は、恥ずかしながら勿忘草という名前すら耳にしたことはなかった。花に格別の思いも持たない私は、道端に四季によって移り変わる野花を見ても、「ああ、花が咲いているな」くらいにしか思っていなかった。