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生まれた人

とても不思議だかとても当然だかわからないのだが
実は自分しか存在しないと思っていた
息を止めて目を閉じて瞑想して苦しくなってブアッと吐き出して
それはみな僕なのだ
感じることは僕しか出来ない
生暖かい風が吹き抜ける
街を行き交う人々はスクリーンに投影されたように薄っぺらだ
ところがやあ久しぶりと近寄って来た男と握手をした
僕は手を握られた
彼の血や脈動が手を駆け登る
僕はとんでもなく驚いた
せっかちにこの世に生まれた時と同じ顔をしたに違いない
やっと生まれたのだ
そんな僕の驚きとは関係なくベルトコンベアに乗った僕達が行き交う
薄っぺらな僕達の瞳には僕が居る
僕もまるっきり薄っぺらだ

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