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JR東海の新形車両315系の投入で引退予定 「311系」とはどんな電車?

JR東海では、名古屋・静岡地区の在来線で使用する新形車両として、2021年から315系を投入しています。315系の登場で、今まで使用されていたベテランの車両たちが順次引退する予定ですが、引退予定の車両のなかに311系と呼ばれる電車が含まれています。この311系とはどんな車両なのでしょうか?

(この記事は2022年1月に会員限定記事として配信したものです。)

片側3扉の転換クロスシート車

 名古屋で東海道本線の電車を待っていると、座席の向きが列車の進行方向を向いた電車ばかりがやってきます。この座席は「転換クロスシート」と呼ばれていますが、311系は転換クロスシートを備えた車両として1989(平成元)年に登場しました。

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▲1989年にデビューしたJR東海の311系。写真は1990年に増備のG14編成(画像:写真AC)。

 JR東海の在来線の車両のうち、快速や普通列車で使用しているものは、1両の長さが約20mで、片側に3箇所の扉を備えているのが標準的です。JR東海が保有する車両のうち、全長20m級の3扉の車両で、車内の座席に転換クロスシートを採用したのは311系が初のことでした。のちにJR東海の名古屋地区の電車では、全長20m・3扉・転換クロスシートが標準的な仕様となりましたが、この基本スタイルを作り上げたのが311系という電車なのです。

金山総合駅の開業にあわせてデビュー

 名古屋地区では、JR東海の東海道本線・中央本線(中央西線)・関西本線のほかに、名鉄線(名古屋鉄道)や名古屋市営地下鉄(名古屋市交通局)の路線があります。これらの路線は名古屋駅に集まっていますが、名古屋駅の南東側にある金山駅にも東海道本線や中央本線、名鉄線や名古屋市営地下鉄線が集まっています。

 現在の金山駅は総合駅として乗り換えを便利にする整備されたもので、金山総合駅として1989(平成元)年7月に開業しました。311系は、金山総合駅の開業に合わせて営業運転がはじまり、同時にダイヤ改正を行って列車の本数も増やしています。1989年7月の時点では311系が5本投入され、速達列車の新快速のうち、1時間に1本が311系を使用した列車となっていたのです。311系では最高速度を120km/hに向上したので、311系を使用した新快速ではスピードアップも行われました。

新デザインを取り入れた311系

 先の通り、311系は金山総合駅開業に際して、新快速を増強するべく登場しました。銀色のステンレスの車体に、前面はFRP(繊維強化プラスチック)を用いた白い姿で、JR東海の会社の色(コーポレートカラー)となるオレンジのラインが添えられています。

 車体の構造は、JR東海が発足する前に登場した211系電車を踏襲していますが、311系では前面のデザインを改めて曲面を組み合わせて形となり、前面ガラスも大形曲面ガラスを用いて視界を広くしています。これと合わせて、客室側から乗務員室を通じ、前面展望も楽しめるように配慮されているのです。また、側面は転換クロスシートに合わせた窓割りを採用したことで、扉の位置が車端部側に寄っています。

 走行機器は211系と同等で、界磁添加励磁制御に電気指令式ブレーキを備え、回生ブレーキによる省エネルギー化を図っているほか、下り坂を一定速度で走行できる抑速ブレーキも備えています。311系では最高速度を120km/hに引き上げたので、ブレーキの増圧機能も備えてブレーキを強化しています。

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