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奈良線の103系 むかしは山手線を走っていた その遍歴を追う

奈良線では、2本の103系が最後の活躍をしています。このうちの先頭車はかつて山手線で使用されていました。山手線を走っていたのはわずかな期間ですが、どうして山手線で使用され、短期間で関西にやって来ることになったのでしょうか。

(この記事は2021年9月に会員限定記事として配信したものです。)

2本が残る奈良線用の103系

 103系と言えば、国鉄を代表する通勤電車です。3500両以上も製造され、首都圏をはじめとして関西・中京・東北・九州で使用されましたが、老朽化によって淘汰が進み、現在では数が少なくなってしまいました。

 2021(令和3)年現在、103系はJR西日本とJR九州で使用されています。とくに奈良線と山陽本線の支線である通称「和田岬線」で使用されている車両は、昔ながらの103系の面影を残していることが特徴です。

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▲京都駅に停車する吹田総合車両所奈良支所の103系NS407編成(2018年4月6日、柴田東吾撮影)。

 その奈良線では、2本の103系が最後の活躍をしていますが、このうちの先頭車が山手線で使用された実績があるのです。山手線を走っていたのは短期間ですが、なぜ短期間で関西にやって来ることになったのか、その遍歴を追ってみます。

山手線で本格的に導入された冷房車

 103系は1963(昭和38)年に試作車が作られ、翌年から量産化がはじまりました。当初は冷房がなかったのですが、1970(昭和45)年に試作冷房車と呼ばれるグループが作られ、山手線に投入されます。

 1973(昭和48)年から冷房車の量産化が行なわれ、103系の冷房車が中央線快速と山手線に投入されました。このうち山手線に投入された先頭車が関西に転じ、現在は奈良線で使用されているのです。

現役で残る103系冷房車グループ

 実は103系の冷房車は大阪環状線にも投入され、1973(昭和48)年から使用されています。大阪環状線では2017(平成29)年に103系が引退しましたが、大阪環状線で使用されていた103系のうち、「和田岬線」に転用されたものが現役で残っています。ちなみに、和田岬線の103系は1973(昭和48)年製で、大阪環状線で初めて導入された冷房車の一族でもあります。

関東では珍しい「ブタ鼻」

 さて、103系は1984(昭和59)年までの21年に亘って製造され、製造過程での設計変更が数多くあります。外観も細かい部分で変更があり、そのなかでは先頭車の前照灯を1灯から2灯とする仕様変更がありました。

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