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置き換え始まるJR東日本のE217系 横須賀・総武快速線を走る近郊形版「走ルンです」

横須賀・総武快速線では、新型車両のE235系1000番台が登場して2020年末から営業運転に就きました。その一方で、横須賀・総武快速線の主として活躍していたE217系の淘汰が進められています。E217系は製造過程や後の改造で細かな違いがあるのですが、どんな違いでしょうか?

(この記事は2022年3月に会員限定記事として配信したものです。)

E217系はどんな電車?

 横須賀・総武快速線で活躍しているE217系ですが、改めて考えるとどんな電車なのしょうか? 2022年現在、JR東日本ではE235系を首都圏に導入していますが、E235系を導入する以前はE233系を、E233系の前はE231系を製造して首都圏に導入していました。さらに振り返ると、E231系の前に製造していた車両がE217系ですので、E235系から数えて3世代前の車両と言えるでしょう。

付属編成のY-145編成を先頭に内房線を行くE217系。先頭のクハE216-1024は8次車で貫通路の部分に扉がない(2021年2月、伊藤真悟撮影)。

 首都圏を走るJR東日本の電車は、大量生産されることで知られていますが、JR東日本で大量生産された電車と言えば、209系という電車が有名です。209系は、京浜東北線で使用されていた0番台の車両が、千葉県下の総武本線・外房線・内房線などの房総地区に転用されたことでも知られています。

 この209系とE217系は同世代の車両で、209系が通勤形として製造されたのに対し、E217系では乗客の乗車距離が長いことに配慮し、近郊形の電車として作られています。209系には「寿命半分・価格半分・重量半分」という考え方を基に、コストや整備の手間がかからない電車として作られたのですが、当時のレンズ付きフィルムの名前になぞらえて「走ルンです」という「あだ名」が付いてしまいました。E217系も209系に準じた仕様で作られているので、E217系は「走ルンです」の近郊電車版と言えるのかもしれません。

E217系の特色

 1994(平成6)年に登場したE217系ですが、どんな特徴があったのでしょうか?

 E217系で全く新しいのは車体とデザインで、車体は近郊形電車で本格的に片側4扉として通勤形と揃え、車体幅を拡大した一方で裾を絞っています。この車体の基本仕様は、首都圏で使用されるJR東日本の車両で標準的な形となり、E235系にも引き継がれています。

 また、デザインはE217系のオリジナルで、踏切事故対策として運転台の位置を上げているほか、運転室部分は万一の衝突に備えて衝撃のエネルギーを吸収する構造としています。この関連で、先頭車はドアの位置がずれているほか、隣の車両との連結部分には衝突エネルギーを吸収する機構を備えています。

踏切事故対策として高運転台となったクハE216の運転台。写真のクハE216-2072は非貫通構造のため、貫通扉部にカギやハンドルは設けられていない(2020年12月、柴田東吾撮影)。

 横須賀・総武快速線では東京駅付近(品川~東京~錦糸町間)で地下を走行していますが、当時の法令により、先頭部から脱出ができる構造することが必要で、前面に貫通路を備えていました。増備過程で法令が変わり、東京駅付近のトンネルの寸法ならば貫通路を備える必要がなくなったため、E217系も1999(平成11)年登場の7次車(7回目の導入車両)から貫通路を廃止しています。E217系は編成に番号が付いていますが、Y-38~Y-51編成などの7次車以降の車両で、前面をよく見ると貫通路の部分に扉がないのです。

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