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ドラマ 絶対正義の感想

『絶対正義』は、2018年に放送された土曜ドラマです。動画サイトで目にして気になったので一気観してしまいました。わもいです。

見終わったばかりの今、せっかくなので感想を書いてみます。ネタバレ配慮ナシなので、これから見ようと思っている方はお気をつけください。


範子が変わったことが悲しい

最終回で主人公の範子は、自分の正義は間違っていたと気づいて謝ります。その後、晴れやかな笑顔も見せます。

それがなんだかやるせなくて悲しかったです。

というのも、私というか視聴者の視点で見ると、範子の正義は深い愛情が故の行動というのが分かっているからだと思います。

良い結果を生んだ時はありがたがって、良くない結果のときは恨んでという、ある種普通の同級生たちにモヤモヤを感じながら見ていました。

同級生たちが人間臭ければ臭いほど、範子の正義の純度が狂気じみて見えて、「理解されないこと」の悲しさがありました。

なので、最後で範子がいわゆる普通になるというラストは、わかりやすい結末だったと思います。でも、世間に理解されないこだわりは、どうしたって受け入れられないのだという結末にも見えました。

純粋な正義が理解される世界線が見てみたかったな、と。範子が同級生たちの常識に併合されるのではなく、範子の正義を周りがもっと深く理解して付き合っていくのもアリじゃないかなーと、見終わって考えていました。

すごい!と思った俳優さんの演技

全編通すとやっぱり範子の演技がすき

主人公の範子が、法律という正義を拠り所にして同級生たちの私生活にまで踏み込んでくるのですが、正義を執行しているときの範子は少しの隙も見せません。

ですが、実は同級生たちと顔をあわせていない時は、自分の正義が周りを追い詰めているのではと葛藤したり、なぜそこまでみんなにこだわるのかを言えなかったりと、隙だらけな表情を見せます。

その差がありありと分かって、山口紗弥加さんすごいなーと思って見ていました。

あえてわかりやすい演技をしてくれたのかなとも思いますが、範子は表情の幅があまり大きくないタイプなので、狭い感情表現の中で別人みたいに見えるのがすごいなと思いました。

もう1つ、私が「おお!」と思ったのが最終回の由美子

最終回開始6分頃なのですが、範子の娘律子が食事の用意か何かをしている際に、同級生で主婦だった由美子と女優だった麗香が会話するシーンがあります。二人は今後について涙も流しながら語り合います。

二人が会話していると、準備を終えた律子が二人を呼びに来るのですが、その時、由美子がさり気なく涙を拭うシーンが出てきます。

両手の指で、マスカラかアイライナーを気にしたようにさっと拭います。

その時の由美子は後ろ姿で、カメラのフォーカスは呼びに来た律子に合わせてあるので、由美子は別に何もしなくていいと思うんですよ。

でも、「小娘に涙は見せられぬ」とばかりに拭ってみせたのが、擦れた由美子らしくてかっこいいー!と思いました。

ツッコミどころもあったね

面白いドラマだったのですが、尺の関係で雑になってしまったのか、意図的なのか、私が見ながら思わずツッコんだところがありました。

ハーバード大学!?

メインキャラクターの一人である理穂は、高校を卒業してハーバードに行きました。

金銭的に裕福でないという描写があったので、学費は!?と思いました。また、理穂の成績は学校では2番ですが、全国模試みたいなものではどのくらいかは作中で不明です。学力足りてるのか…!?

さらに、通っている高校は、あからさまに見えるところで男子高校生がタバコを吸っているような状態です。つまり、進学校という感じではありません。

なので、卒業式が終わったあとのシーンで「ハーバード行っちゃうなんてね」「うん!」みたいなやり取りを見て驚きました。ハーバードのハの字も全く出てきてなかったじゃん…ってなりました。

ちょっと調べたら、ハーバード大学は世帯年収が540万円以下の家庭の学生は学費免除みたいです(間違っていたらすみません)。なので、学力さえ足りていれば、理穂が進学できてもおかしくはないようです。

範子の完璧主義が揺らいでる?

範子は校則や法律を正義だとするのと同時に、礼節も重んじる性格です。年上や先生には敬語を崩しません。

そんな範子ですが、登校してきたときに校門に立っている先生にはわざわざ正面に立ち直し、腰を折って挨拶をします。ですが、自分がやってきた方向にいる先生には挨拶しましたが、反対側に立っている先生には挨拶しませんでした。

それが私が考えた範子像からちょっと離れていたので違和感でした。範子ほどルールを守らないことに恐怖を覚えている人間が、少し距離があるからといって反対側の先生をスルーするだろうかと。

単にそこまで考えてなかったのかもしれませんし、範子の正義のほころびを見せたかったのかもしれません。

経過年数がちょっと変?

由美子・麗香・理穂・和樹の4人が範子を殺害し、黙っていようと口をつぐんで5年が作中で経過します。由美子の子供は中学生くらいになり、麗香は売れっ子女優になり、理穂はやっと子供を授かって、和樹は事件をもとにした小説を発表しています。

しかし、範子の娘である律子に呼び出されて犯行がバレてしまい、逮捕され実刑となります。そこから出所するところに場面が変わって、20年の刑期が7年で済むなんてね、といったセリフがありました。

さらに、実は範子は死んでおらず、意識が戻らないまま生きているんです。そして、病院にいたのは7年です。範子が最終回で、7年ぶりのご飯、と言っていました。たぶん。たしか。

死んだと思われて5年、逮捕されて7年が経っているなら範子が寝ていたのは12年なのでは…?

律子が事件から5年たったときに母の時計を手に入れたと言っていたので、殺害から5年の時点まで、行方不明になっていたのかもしれないですね。

実刑20年の判決は妥当なのだろうか

よく、ミステリーやサスペンスでは人を一人殺したくらいでは死刑にならないとか、たった○年しか求刑されないなんて!という展開になりがちですが、完全正義では20年の実刑判決が下ります。

ですが、その内訳があまりはっきりは描かれないので20年は長過ぎないか?となりました。

範子の殺害には計画性はなく、亡くなったのは一人。死体は放っておいたので遺棄にあたるのかなと思います。殺害に至った経緯を考えると、4人とも範子の言動に精神的に追い詰められていたことが考慮されるのではないでしょうか。

また、直前に矢沢という教師を殺している範子は、返り血を浴びていました。範子が正義を発揮するたび、プラスとマイナスの状況に振り子のように追い立てられていた4人は、返り血を浴びながら記念撮影をしようとする範子の狂気におびえていました。矢沢を殺した理由も、4人は知らないので。

ある種、心神耗弱状態であったことを考えると、基本の量刑は最低の5年程度になる気がします(ちょっとだけ調べました)。甘いかしら。

ただ、自首をしなかったこと・生きているかもしれない範子を見捨てたこと・それを小説にして発表したことなどの部分が加味されたのかもしれません。社会的な影響と隠していた事に関する悪意ですね。

とはいえ、近年の殺人事件の平均が15年以下とされているのでやっぱり求刑ではなく実刑が20年はちょっと盛りすぎのように感じました。ドラマ見ながら「20年!?」って思わず声が出ましたもの。

実刑20年の理由を、ニュース映像なり裁判シーンなりで描いてくれたらここまで気にならなかったと思います。単純に、無理やりでもいいので説明が欲しかったです。

久しぶりに見たドラマでしたが好きな内容でした

なんだかんだ書きましたが、トータルでは好きな内容でした。時折、文字が出てくる演出も、TRICKぽくて好きです(あちらは音でしたが)。

イヤミス系の小説が好きなので、楽しく視聴しました。

イヤミスなのに、後味良い感じなエンディングだったなと思うと同時に、範子というキャラクターが変わらざるをえなかったという状況が後味が悪いのかもしれません。

やっぱり、あの正義に固執したままの範子が理解される世界線もみてみたいなぁ。

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