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ラジオ番組への応募作(エッセイ又はコラム):お題「社会科見学」1200字程度

社会科見学という言葉はあっても、理科見学やましてや数学科見学などという言葉は聞いたことがない。また、社会科見学と校外学習、遠足はどう違うのか、考えてみたこともない。せっかくの機会なので少し考えてみたい。
まず社会科見学である。Wikipediaによると「見聞を広めるために工場や旧跡を見学・体験すること」とある。校外学習は「校外で行われる学習」、遠足は「見聞を広め、集団行動と公共性を身につけるために行われる」ものという違いがある。また遠足については小学校の学習指導要領で特別活動として行うべき学校行事として指定されている(という事は中学校や高校では遠足は“行かなくともよい行事”ということになるのか!そこにも驚き)。
つまり、校外学習では理科的要素である動植物の観察やプラネタリウム・博物館、美術科的要素の美術館見学なども含まれるという事になる。遠足とは、小学生が社会性公共性を身に付けるためのものという人間的教育目標がある行事ということが分かる。
そうすると、社会科見学なるものは、娯楽に近いものなのだろうか?近年は大人の社会科見学などと言って食料品工場やビール工場で飲み食いするようなものも流行っていると聞く。
思い起こせば小学校2、3年の頃、当時の国鉄や郵便局へ社会科見学に出かけたことがある。その時には先生が作成された学習のしおりがあり、メモ欄などもあり、見学先の職員方から丁寧な説明をしていただき、まさに「学習」として参加した思い出がある。今でもJRの車両を見て車体に書かれている“モハ”や“クハ”“サハ”という記号を見て運転席があるのか、客車なのか動力車なのかがわかる。これは、この国鉄での学習のお陰である(ちなみにモハはモーター車、クハは運転台付客車、サハはただの客車である)。郵便局では郵便番号が機械に読み取られ、ものすごいスピードで自動的に仕分けされていた。これは光学的文字読み取り装置というものであり、その装置は、郵便番号部分に光をあて文字の黒部分と白部分の反射率の違いを読み取り、文字の形を認識するという仕組みであることを学んだ。これは現在でもOCR技術と呼ばれ、スキャナー等の画像認識装置やスマホカメラで様々なモノを認識する仕組みに引き継がれている。
このように社会科見学では、本物を見て感動しながらそこで働く職員さんの熱意のある説明を聞き学習することで、知識を得、物事の仕組みを学ぶことができる。また仕組みを学ぶ中で、数学や理科に興味を持っていくことも重要である。このように知見を深めることが本当の意味での社会科見学ではないだろうか?仕組みにまで興味を持つならば、それは、理科見学であり、数学科見学であるといえる。
社会科見学と称してビールばかり飲まず、謙虚に学習を行い深く物事の仕組み、社会の仕組みまで思いを馳せ、本当の意味での見聞を広めることが、大人の社会科見学ではないだろうか。
(文字数1200字)

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