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与快弁明新法

「こないだ、とうとう施行されたやん、与快弁明新法よかいべんめいしんぽう
「よかい……、なにそれ?」
「あんた知らんのかいな。ざっくり言うとやな、どんな言い訳やろうが、それで相手が笑ったら、その言い訳をもって終わりとする……、言い訳をされてた側はそれ以上追及したらアカンし、わろてしもた以上、謝罪を求めてもアカンっていう新しい法律やがな」
「あーあーあー!アレか、【笑かしたら勝ち法】な!」
「そんな風に呼んでんの?まぁ、その通りやねんけど」
「国会で吊るし上げくらってしまいそうな議員がこぞって新法制定に奔走したらしいけど、いざ実際に吊るし上げくらった時に笑かせようとしたら、スベリまくって辞職する議員が続出したアレやろ?」
「そうそう。普段偉そうにふんぞり返ってるオッサンが言い訳に駄洒落連発してもサムいだけやっちゅうねんな」
「【笑かしたら勝ち法】をめちゃめちゃ上手に活用できる政治家がおったら、オレはそいつをごっつ支持するけどな」
「あー、わかるわー。まぁ、こんな言い方するのもちょっとサムいけど、ユーモアセンスのある政治家とかおったらええよなー」
「うん。【笑かしたら勝ち法】のそもそもはユーモアがどんどん排除されている息苦しい社会をちょっとでも明るくして、生きやすくしよう、そうしたら、あわよくば出生率も上がるかも、って感じの目論見やったらしいしな」
「まぁ、ユーモアと出生率がどう関係あるんか分からへんけど、そうなんか。へー」
「いやいや、出生率は上がるやろ。『あんた!こんな時間までどこで飲みくさってたんや!』って責める奥さんに対して『ゴメンゴメン。ちょっと行きずりの仮面ライダー助けてたら遅なってしもてん』って旦那が言うたら、奥さんはうふふとわろてぶちゅーってチューしてベッドインや。確実に出生率は上がるね」
「マジかよ。そんな上手い事行く?うふふでぶちゅーってなる?」
「あぁ、なるね。なるなる」
「まぁ、夫婦の関係が冷え込むよりは、アホみたいな言い訳で笑かそうとお互いにする方がええんかも知れへんけども」
「行きずりの仮面ライダーってなんなんかよぉ分からへんけどな」
「ヒーローを助けるて浪漫あるけどな。てかそうそう。思い出したで。オマエ、いつ返してくれんねん。こないだ貸した飲み会での五千円」
「あぁ、あれな。返す返す。今日はムリやけど」
「オマエ、あん時財布忘れた言うとったやんけ。財布忘れたから五千円借りただけなんやったら、今財布の中に五千円くらいあるやろ」
「それがさ。今日、オマエに会う前にさ。家なき子に会ってさ。『同情するなら金をくれ!』って連呼しとってん。せやし、まぁ、今は財布の中、すっからかんやねん」
「えぇ! 家なき子に有り金全額恵んだったんけ? ふはは。あ、くそうわろてもた」
「そういう訳で、オレの勝ちやな」
「オマエが一番上手に活用しとるやんけ、【笑かしたら勝ち法】を」
「そう? ほんなら、オレ、ちょっと政治家めざしてみようかなー。支持してくれんにゃろ?」
「まぁ、そういう政治家がおったら支持する言うたけども。笑かせるのが上手いから政治家になるっていう流れはちょっとちゃうんちゃう?」
「そうか? 『ちょっとくらいやらかしても、笑かしたらええんやろ』の精神で、めっちゃ大胆に政治改革に邁進するで?オレ」
「なんなん。なんか、新しい法案のアイディアでもあんの?」
「あぁ。【議員報酬大喜利座布団法】やな」
「なんやそれ」
「大喜利言うてもたけど、まぁ、笑かすとかそういうのんとは関係なしに、頑張ってる政治家の席にはどんどん座布団が積み上がっていく訳や。逆に税金ドロボーみたいな政治家からは座布団が取り上げられるねん。山田くんに」
「山田くん激務過ぎるやろ」
「ほんでさ。議員報酬の全員分の総額は今と一緒やねんけど、その分配は座布団の数に対応して振り分けられるねん」
「おぉ。座布団ゼロやったらどうなん、年収ゼロになるん?」
「いや、それは流石に可哀そうやから、その政治家の選挙区の最低賃金分を時給換算で払う感じでええんちゃう。そしたら、アイツらも必死になるし、最低賃金に対しても敏感になりよる」
「ええな。それ」
「ええやろ」
「うん、ええわ。オマエ、政治家になれ。なれや。オレは清き一票をオマエに投じるわ」
「いや、やっぱりやめとくわ」
「なんで?」
「最低時給で政治家なんてやりたくないやん」
「オマエ、座布団ゼロの税金ドロボー的政治家になる気満々やんけ」

-終-

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