極地探検家の言葉たち
今日はこちらの感想、自分への覚書き。
noteで記事も書いてらっしゃる北極冒険家、荻田泰永さんがホストとなってさまざまなジャンルの人たちとお話する冒険クロストーク。今日は、敬愛してやまないノンフィクション作家の角幡唯介さん、登山家の栗秋正寿さんをお迎えしてのvol.8。
うおー動いて喋る荻田さんと角幡さんが見られるぞー
…すいません正直栗秋さんは存じ上げませんでしたが、このオンライン配信を見てすっかり、そのお人柄にやられてしまいました。本、買います。
登山家とは思えないような温厚な、平たく言えば「いい人」オーラ出まくりな御方だったのですが、やってることがえげつない。アラスカにある三大峰、デナリ(マッキンリー)、フォレイカー、ハンターの冬季単独登頂に挑み、デナリとフォレイカーは成功。ちなみにフォレイカーは世界初。
もちろん荻田さん角幡さんの本も。
何故にこの方たちの語る言葉って、こうも私を惹きつけて離さないのか。角幡さんに至っては、1度目のマレーシア派遣から帰国後、今の2度目の赴任が始まるまでの1年間でガッツリハマり、その時点で出版されている本はあらかた買い込み読みまくった。
冒険中にもろもろ思索されているのかと思いきや(そういうときもあるのかも知れないけれど)、意外にも?そうでもないらしいのは、著作からわかる。ならばあの、深い洞察から紡ぎ出される言葉たちはいったいどこからやって来るのだろう。
という訳で、配信の中でこころにひっかかったものをいくつか。
「この人からこれを取ったら何も残らない」&「思いついちゃった」
終盤の質問コーナーでのこと。
家を空けることを家族が快く思わないのだが、それに対して如何に対処してますか?と、質問者ご本人も登山をされるという方が問いかけて、栗秋さんがお答えになったことのうちのひとつ。
栗秋さんが主夫だそうなので、「妻の仕事の愚痴聞いたりしてポイント稼いでます」なんて愉快なお話も挟みつつ、最後にこう仰った。
「『この人からこれを取ったら何も残らない』と伝えるのは大事ですね」
あぁそうか。
お金とか世間体とか、そんなこと関係なく、人生かけて、もうこれやるしかないってものに出合ってしまわれたのだなぁ。
それを角幡さんは、「思いついちゃった」と表現されていらっしゃった。
なんだかそれが、眩しく見えた。とても。
というのも、COVID-19による在宅勤務で時間はあるので、残りの人生如何に過ごしていこうか?なんて考えることが多くなったから。
サントリー新浪剛史社長の「45歳定年制」が炎上しまくったのは記憶に新しいが、私は、この年齢辺りが人生の次のテーマに取組み始めるにはちょうどいいのかなと思ってたので、世間が激しく反応したのがちょっと不思議だった。あまりこのニュースを深追いしてはいないが、新浪さんの気持ち(経営側の都合?)も、そんなん困るわ!と怒り心頭の人たちの気持ちもまぁ理解できなくないけども。私も、「何があってもこの会社にしがみついたる!」と考えてた時期が少なからずあったので。
と言いつつ、「人生後半戦かけてこれをやる!」ってものがまだなくて、もじゃもじゃ考えてる時点でイケてないのは重々承知。なのでそんなテーマをお持ちの御三方を羨ましく思ったのだった。
Go With the Flow
夏場でさえ相当厳しいであろう北米最高峰デナリ。この対談中も話題に上っていたけど植村直己が消息を絶った山。ここに冬場にひとりきりで登られていた栗秋さん。その圧倒的な自然の前に、人間ができることなんてちっぽけであることを十分自覚されていて、何度も言及されていた。それを英語では、”Go with the flow”と表現するそうな。
流れに任せよ、なるようにしかならんから、とでも言おうか。
私も、特にマレーシアに来てから自分でコントロールできる範囲って実は小さいんだな、と再認識したつもりではいた(というより、日本にいると何故、何でもコントロールできるって感覚を持ってしまいがちなんだろう)。
甘かった。
自分では如何ともし難いのにモヤモヤして勝手に疲弊するめんどくさい自分がまだいる、もしくは再登板してきたからだ。このフレーズを知って、それが少しは晴れたかな。
現在から刻んでいく未来、未来から呼ばれる現在
後の方で荻田さんが、慎重に言葉を選びながら幾度か仰っていた。角幡さんの最新刊「狩りの思考法」の序盤、「未来」について語っている箇所を引きつつ。
遠く?にある未来へ、今ある現在から向かっていくのと、
なんとなく定まっている未来、もちろん何がどうなるかはわからないんだけども、そこから逆算されてくる現在。
だから今これをやる。
栗秋さんは、荻田さんが冒険研究所書店を開業されたことに触れ、「こういうことですか?」と訊き、荻田さん即答。「そうです」
すかさず角幡さんが「思いついちゃったからだよね」と。
「人生後半生のテーマ」云々も、こうして無意識のうちに導かれて来るものなのかも知れないな。
(最後にどーでもいいですが、荻田さん?が曳くソリに乗るシロクマが本を読んでるロゴがかわいすぎる)
もともとの予定では3時間だったが結局30分延びて、3時間半の長丁場となったが全くもって長さを感じさせないトークショーでありました。
そしてオンライン配信の有難さ。海外にいても、時差によるけど生で視聴できる有難さ。
ありがとうございました。
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