特効薬を求めない

『「子なし」のリアル』を書いた奥平紗実さんは、「子なし」を「ノンファン」と表現している。

わたしはこの表現がとても好き。自分のVlogでも連呼している。

紗実さんは都内でノンファン交流会も開いている。わたしも数回参加させていただいた。

交流会の後、ランチ&お茶へと移っていくことが多い。初対面でも話が弾み、時間を忘れてしまう。不思議なものである。

不妊治療に句読点を打って四半世紀になった。20代30代40代の頃の記憶はすっと引き出すことができない。そんなお年頃だ。

「どうやったら、いつになったら吹っ切れますか? 前向きになれますか?」

交流会のメンバーは真面目で一生懸命なひとが多い。わたしは不真面目というわけじゃないが、ノンファンであることで悩んだり苦しんだりすることが日常でほとんどない。(四半世紀前はもちろんあったが)

「どうやったら・・・」「いつになったら・・・」

わたしの経験はこうだから、こうしてみたらどうですかとは言えない。

この特効薬を飲めば即座に吹っ切れる! ないない!

ダイエットでスリムになる。語学を習得する。一日二日で実現したなんて話を聞いたことがない。

毎日こつこつと意識して積み上げていく。一週間がひと月になり、半年、一年、二年、数年たてば・・・ある日突然、あれほど重かった手枷足枷が軽くなっているのに気づく。

五十肩が治るまでになんだか似てる。

五十肩は医者にかかっても治らない。日常生活ではけっこうキツイ。とにかくできるかぎり動かす。動かし続ける。痛い。でもやめない。五十肩の自分に慣れていくうち、やがて五十肩であるのを忘れがちになる。そしてある日突然、アラ治ってる。良かった良かった~と友人に完治報告。

「イエ、わたしはやっぱり特効薬が欲しいです」

そんな向きもあるだろう。でもどこに売ってるのかな? 売っていても買わないけれど。

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