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その日の備忘録として②

心療内科からの診断書を会社に提出しました。確かいつもより早めに出社して、上司に診断書と共に体調の事を伝えたような気がします。私がいた職場は会社の健康管理部にあたり、産業医や保健師と仕事をする部署でしたので、午前中のうちに産業医からもう退社するよう指示がありました。

会社から帰宅した日はなんとなく解放感がありました。午後に産業医から連絡があり、会社でどうだったのか、仕事量や人間関係はどうだったのか、理解されない事を伝えて泣いた記憶があります。産業医からは月に一度様子を確認するため電話が来ることと、規則正しい生活を送るよう話がありました。

次の日から何もない日々が始まりました。たまに散歩に出るよう言われたので、隣駅まで歩き、本屋へ行ったりランチを食べたりして帰りました。梅雨時でしたが、晴れて暑い日でした。

解放感はあるのに、頭の中は会社に対する不信感がぐるぐるまわっていました。一日がとても長く感じたので、この休みを有効に使わなくてはと資格の参考書を幾つか手に取ったのですが、何を学びたいか分かりません。なにより、大好きだったはずの読書がまったくできなくなっていました。撮りだめしていた海外ドラマも一切見る気力がありませんでした。外出は次第にたまに夜だけ、ご飯を買う時だけになりました。

何もする気が起きませんでしたが、YouTubeは毎日見ていました。自宅にはノートパソコンがあり、ネット環境もできていたのですが、休職するまでまともにYouTubeを見たことがなかったため、こんなにいろんな動画が見られるのかと驚きました(笑)今まで携帯でもパソコンでもほとんどゲームをした事がなかったのですが、パソコンで簡単なゲームをインストールしてやり始めました。

好奇心が強いので趣味も広いほうだと思ってましたが、気がついたら自分を磨くという事に囚われて、興味のない事ばかり勉強しようとしていました。興味がないからもちろん勉強にも身が入らない。断念した資格の参考書がたくさんありました。いつも自分に自信がなく、資格を取れば自信がつくのではと常に追われているような感覚がありました。断念した参考書を見ながら、「なんでこんなに根性も能力もないのだろう」と自分を責めました。

YouTubeとゲームをやり続ける生活が1ヶ月経ちました。生活は昼夜逆転になり、夜は眠れず昼間何とか眠るような日々でした。産業医から確認の電話があり、日々の生活の事を話しました。産業医からは規則正しい生活にするために夜寝る事と、精神を安定させるような深呼吸を寝る前にするようアドバイスされました。気晴らしに料理とかしてみては?とも言われました。

産業医にとっては休職中の人向けの当たり前のアドバイスとして、ただのアドバイスとして言ったのだと思います。でもその時は、規則正しい生活ができていない事を責められているような気がしました。「料理は苦手なんです」と伝えた際、電話口で苦笑されたように感じてしまい、料理が苦手な事は女性として恥ずかしい事なんだなとまた落ち込みました。

その頃心療内科には週に一度通っていました。産業医に言われた事を主治医に伝え、「料理して見たら?とアドバイスをもらったんですが・・・」と言ったのですが、その時とても嫌だなあという表情をしていたのだと思います。主治医は「料理しろなんて余計なお世話だって言ってやった?」と笑いながら言いました。あ、料理は嫌だって思っていいんだ。主治医に言われてハッとしました。

「食べられていれば自炊じゃなくていいでしょ。夜寝られなくても昼寝てるんでしょ?今はそれでいいよ。寝てる事は寝てるんだし、寝てます、とだけ産業医に言えばいいから。」

通院するようになってから、主治医には「考え方の癖を修正していこう」と言われていました。〜すべき、〜しなくてはいけない、〜でなくてはいけない。ずっと、ちゃんと働かなてはいけない、周りに迷惑をかけてはいけない、常に自分を磨き成長していかなくてはいけない、女性だから料理ができないといけない(笑)呪いのように唱え続けながら(笑)自分磨きも資格取得もできていない自分に落ち込み、焦り続けていました。弱い自分を認めたくなくて、常にガチガチに精神面を武装していました。いつの間にか、武装するようになっていました。

「余計なお世話だって言ってやった?」この言葉は、次のステップに繋がる魔法の言葉でした。


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