ショートショート お金失くしちゃった
「失くしちゃった〜!
お金失くしちゃったよ〜。」
誰かが泣いているようだ。お金というものをなくしてしまったらしい。
どんなものを失くしたか聞いてみると、何やら紙らしい。数が印刷されていて、それと引き換えに物と交換できるみたいだ。
「お金ないと、お金ないと生きていけない。」
またもや泣き出しそうになっているのだが、生きていけないものなのか。そりゃ大事なものだ。街の人にも協力してもらってお金を探し回った。
すると、長老が
「お〜。お金か、まだそんなものの存在を知っている者がいるとは。お金はのぉ、失くしちゃったよ。争いの種だからのぉ〜。」
なんと、長老はお金を知っていた。
争いの種になって、生死を左右して、でも、ただの数が印刷された紙とは、まったくお金とは何なのだろうか。そして、なぜ消えたのだろうか…。
長老に話を聞いたところ、その昔、会社というものがあって、サラリーマンがそこで働いていたらしい。人々は、働いた分だけお金を貰い、貰ったお金で服を買ったり、食べ物を買ったりしていたみたいだ。
話を聞いても、なぜ、お金が必要だったのかさっぱりわからない。自分で食べ物は作れるし、作れないものは近所の人頼れば作ってくれるのになぁ。
そう思っていたが、話はもっと複雑なようだ。株とか税金とか何のことかわからない話になってきた。
最後にお金がなくなった理由は、物を買うと払わないといけない消費税というものが上がり続けていたらしい。皆アホらしくなったため、各々自分が持っている特技と交換で欲しいものを手に入れて生活するようになっていったようだ。
「そうだそうだ。お金、失くしちゃったんだよね。 君の名前は?」
「資本主義経済です。」
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