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ドラフト会議というコンテンツの価値

自分は野球の中でもアマチュア野球に関する記事を書くことが最も多いですが、その中でも一番のイベントはやはりドラフト会議になります。2017年からはスカイAのドラフト中継でこの分野で第一人者と言える小関順二さんと一緒に解説もさせていただいています。

小関さんとお知り合いになったのは2002年、自分がまだ大学院生だった時に神宮球場でお見掛けして声をかけたのが最初だったと思います。その後、あちこちの球場でバッタリ顔を合わせることが増え、色々な話をする中でお仕事も一緒にさせてもらうようになりました。

そんな小関さんがしていた話で一つ強く印象に残っているものがあります。小関さんがまだ若手編集者だった頃、ある雑誌で「ドラフトの特集を作りませんか?」と提案したところ、編集長から「小関くん、そんな誰も知らないような野球選手の特集を作って誰が読むんだね?」と一蹴されたという内容だったと思います。正確な年代は分かりませんが、おそらく1980年代のことかと思います。当時はアマチュア野球の情報は今とは比べものにならないほど乏しかったことは間違いなく、多くのファンを惹きつけるコンテンツではなかったのでしょう。自分の手元には1990年代のドラフト特集の雑誌がありますが、情報は現在とは比較できないほど乏しいものです。しかし現在は「ドラフト会議」というのは極めて有力なコンテンツとなっています。スポーツ系のニュースサイトでも、野球の中で最もアクセスが多いのはドラフト会議の速報と言われています。週刊ベースボールもここ数年はドラフト特集の頻度が増えていることからも、需要の高まりが感じられます。

ここまでのコンテンツになった理由としてまず大きいのは、12球団のファン全員が興味を持つイベントだということではないでしょうか。日本シリーズも大きいコンテンツであることは間違いないですが、熱心に関心を寄せるのはやはり出場している2球団のファンだけで、残りの10球団のファンの中には全く関心がないという人も少なくないでしょう。

もうひとつはやはり未知との遭遇、次世代のスター誕生といった要素が多分に影響していると思います。以前とは格段に情報化が進み、本当の意味での『隠し玉』と言える選手はなかなかいませんが、それでもアマチュア野球の現場を回っていると全く存在を知らなかった素晴らしい選手に出会うことがあります。昨年では石田駿投手(栃木ゴールデンブレーブス→楽天育成1位)がまさにそんな選手でした。大学では4年間公式戦に投げていない投手がいきなりサイドから凄い勢いの150キロを投げる姿には本当に驚かされました。このような「突然凄い奴が出てきた」という情報だけでもワクワクする人は多いはずです。

3つ目の醍醐味はファンが贔屓のチームのGM、編成部長としてこの選手が欲しいという妄想ができる点ではないでしょうか。『1億総解説者』という言葉があるように、試合を見ながら采配についてああでもない、こうでもないと話す楽しみがありますが、ドラフト会議に関してはチーム編成を考えるという楽しさを与えたように思います。お付き合いのある企画、編集の方が「スーツ着たオジサンたちがくじ引きするだけなのになんでこんなに面白いんですかね」と話していたことがありますが、その面白さの裏にはこのような要素があるように感じています。

そしてアマチュア野球もオープン戦がスタートし、先週は日本製鉄鹿島vs鷺宮製作所、日本製鉄鹿島vsHondaの試合に足を運びましたが、今年指名解禁となる米倉貫太投手(埼玉栄→Honda)がいきなり140キロ台後半のスピードを連発していました。今日行われた阪神と三菱自動車倉敷オーシャンズのプロアマ交流戦でも上位指名が有力視されている広畑敦也投手(玉野光南→帝京大)が力のあるボールを投げていたようです。シーズンの始まりは毎年やはりワクワクしますし、個人的にも野球に対する熱は全く下がることなく右肩上がりで推移しているように感じています。今年もドラフト会議、アマチュア野球というコンテンツの魅力に少しでも貢献できるように取り組んでいきたいと思います。

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