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抜けないカバン

通っていた高校は、電車で通学しなければならない場所にあった。いつも降りる駅は、終点の一つ前の駅。降車する人は多かったけど、普通電車しか停まらない小さな駅だった。同じ中学に通っていた友人と一緒に電車に乗り、ドアそばに立って話をしながら、通うのがいつものことだった。

その日もいつもと同じように、各駅停車のドアそばに乗り込み、ドアが開かない方のドアまで進んだ。その日は、特急通過待ちの駅があったので、私たちが陣取っている側のドアが、開いた駅があった。

特急が通り過ぎる。乗車する人のために、一度、電車を降りて、再び、乗り込む。そして電車のドアが閉まった。

その時に、問題が発生した。私が持っていたカバンの端が、ドアに挟まったまま、出発したのだ。挟まった箇所は1~2センチ程度だったので、引っ張れば抜けるだろうと思っていたが、抜けない。

最初は友人と話をしながら、気付かれないように、引っ張っていたが、抜けないので、友人にも伝えた。友人も一緒に引っ張ってもらったけど、抜けない。人はだんだんと多くなってきて、思い切り引っ張ることもできなくなった。

そこで私は、学校は終点とその手前の駅の中間くらいにあったので、終点まで乗ることにした。終点まで乗れば、カバンが挟まった側のドアも開くだろう。

友人たちも一緒に終点まで、付き合ってくれることになった。

終点までついて、ドアが開いたけど、カバンが挟まった側のドアは開かなかった。ただ人が降りて、挟まったカバンを引っ張るスペースが出来た。友人と思い切りカバンを引っ張ってみたら、やっと抜けた。

友人に感謝。それと電車のドアって、思った以上にがっちり閉まるもんだと感じた出来事だった。


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