見出し画像

海洋油田開発の採算ラインについて

前回、米国パーミアン盆地でのシェール開発において採算が取れる水準は、原油価格が30-50$/bblあたりといわれていることに触れました。また、中東浅海やロシアでの油田開発の採算ラインは原油価格15-30$/bblあたりだともいわれています。

では、それ以外の海洋油田の採算ラインはどのあたりになるのでしょうか。現在、浅海域での有望油ガス田はほとんど既発見かつ減退傾向にあり、石油会社各社における新規探鉱・開発は大水深域や高温高圧域、極地域へとより技術的フロンティアに挑戦する傾向があります。その中で大水深域での採算ラインを見てみたいと思います。

一般に大水深域では、坑井掘削にかかる費用、フィールド開発にかかる費用が大きくなる傾向にあり、浅海域よりもコストがかさみます。一方で、その高コストや技術的難易度が高いが故に、これまで発見・開発されてこなかった良好な貯留層性状を持つ油ガス田が残っている領域でもあります。

世界最大の海洋掘削請負業者のトランスオーシャン社(NYSE: RIG)は2019年2月のCREDIT SUISSE VAIL ENERGY CONFERENCEで興味深いプレゼンテーションを行っています。

ここで言われている事は、世界的石油会社(Shell, 旧StatoilであるEquinor、PetroBras, TOTAL)は、これまで高コスト(特に井戸コスト)とされていた大水深環境でも今や原油価格が30-40$/bblあれば採算取れますよ、という事です。 これは2015年以降の原油価格下落期間を経て、低コスト化が進められたため、と言われています。

現在、世界的な景気後退懸念、米中貿易摩擦の報道が出るたびに、原油市場が反応して下落しています。しかし、こう見てみると、先述のシェール開発や大水深環境での採算ラインを鑑みると、そもそも石油開発会社からすれば原油価格が50$/bblを超えるようであれば大水深域でも十分にペイする、と考えられており、未だ多少糊代がある状態です。石油開発会社からすると、現在の価格帯でも問題ないという感じです。何らかの理由で原油価格が上昇すれば、更なる開発が進められるため、原油価格の上値は重くなりそうです。
逆に、原油価格が50$/bblを割り込んでくるような状況では、新規油田開発や生産は控えられるため結果的に需給バランスが改善されると考えられるため、将来更なるコストダウンが実現できない限り、下値は限定的となりそうです。従って、石油開発会社からみれば現在の原油価格は程々の価格帯にあると言えそうです。

サポート頂けると励みになります。また、こういう記事がよみたい!というリクエストもあると嬉しいです。