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室温超伝導がついに実現

ついに、夢の「室温超伝導」が実現されたようです。

ネイチャー誌は10月14日、米ニューヨーク州ロチェスター大学のランガ・ディアスらのチームによる、14.55℃(287.7K)という世界初の"室温"領域の超伝導の報告を掲載しました。物質は水素-硫黄-炭素の三元系で、最高温度の超伝導は267GPa(ギガパスカル)という超高圧下で実現したというものです。

電気抵抗がゼロになる超伝導現象は、送電ロスをゼロにできるため、地球規模での送電を行ったり、コイルの中に電気を流し続けて貯める「永久電流」など、現在のエネルギーの問題を克服する可能性ある夢のテクノロジーですが、現在までの超伝導材料は液体窒素温度まで冷却する必要があるため、より高い温度、できれば「室温」と呼べる温度での超伝導の実現が期待されて来ました。

今回の研究結果は、267GPa(267万気圧)という超高圧下条件であり、人工的にこの圧力を作り出す方法は、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)と呼ばれる2つのダイヤモンドで押しつぶされた極小領域しかありません。研究チームは、この実験のために1セット$3,000(約30万円)のDACを数十セットダメにし、ダイヤモンド予算が研究費の最大の問題だったといいます。自然界では地球の中心近く、あるいは木星内部の圧力に相当します。残念ながら、このような高圧下でしか存在できない物質を使った産業応用は、現時点で極めて難しい(つまり殆ど不可能)と言わざるを得ないでしょう。

しかし、これまで不可能だと思われていた「室温超伝導」が実現できたことは大きな一里塚であり、今後の超伝導物理の発展を大きく期待させるものです。物理的には、たかだか少し転移温度が上がっただけですが、人間の生活温度に達したというこの結果が世界の研究コミュニティに与える影響は非常に大きなものとなるでしょう。また、今回の研究は同類の研究で初めて3つの元素からなる3元系であり、物質の組み合わせが2元系より格段に大きく、研究の幅を大きく広げました。

今後、このような超高圧下水素リッチ物質の超伝導現象への理解が深まることで、超伝導現象の物理的本質にさらに迫ることができるでしょう。また、超伝導を実現可能な圧力を下げていったり、高圧相を安定化させる方法が見つかったりすれば、何らかの応用可能性への道が見えてくるかもしれません。

以下、元論文の紹介を含む、詳しい解説です。(作業用コーヒー代+茶菓子代として500円お願いしています)

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