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インソールの適応と比較

インソールの適応

■研究報告からみるインソールの適応

インソールの考え方”で機能性インソールの概要を説明しました(まだ読まれていない方はそちらも是非お読み下さい)。

そこで、インソールの効果を7つ挙げています。

<インソールの効果>
①各アーチの支持
②足底圧の分散
③荷重線の矯正
④側方動揺の制限
⑤衝撃吸収作用
⑥脚長差の補正
⑦除圧

これらの効果により、疼痛軽減や効率的な姿勢・歩行の獲得、スポーツであればパフォーマンスの向上などが期待できます。

実際に、インソールを用いた治療の症例報告は数多く存在し、効果も認められてきています。また、症例報告だけでなく、アーチサポートが腹臥位での足部内在屈筋力1)、また立位での足趾屈筋力を増大させる2)、というような、臨床成果の裏付けとなる研究も進んでいます。

しかしながら、インソール作成を行う際、使用する素材や評価方法・作成方法が異なるのが現状であり、インソールがどのような疾患に対して有効か?またどのような疾患が適応外か?という傾向に関しては、まとめた報告がなく、未だ不明な点が多いです。

例えば、変形性膝関節症に対するインソールの効果には、否定的な論文もあり、戸田らがまとめています3)。一方、理学療法診療ガイドライン4)では推奨グレードB(行うように勧められる科学的根拠がある)、エビデンスレベル1(システマティック・レビュー/RTCのメタアナリシス)と表記され、K-L分類1・2の症例には有効的との報告が散見されています。

これら膝OAの報告では、後足部回内誘導を目的とした外側楔状足底板が主に使用されており、近年では、運動連鎖の観点や膝OAのアライメント特性から、妥当性を疑う見方も出て来ています。

また源5)は、自身のインソール治療成績を疾患別にまとめ、
・下腿、足関節、足部疾患に関しては症状の改善率が高い
 →インソールがストレスの原因となっているマルアライメントに直接作用することが考えられるため
・変形性膝関節症K-L分類Grade1の内側型に対して有効性が高い
・形態異常が問題となる骨折や重度の機能不全に関しては適応外になる可能性が高い
と述べています。

このように、疾患に対するインソールの適応の研究は現在進行形でとらえてもらえるといいかと思います。


■教科書的なインソールの適応

ここで一度、教科書的にインソールを適応としている代表的な症例インソールの効果をまとめます。

コメント 2020-01-08 224906

※第1ケーラー病:小児でみられる舟状骨の無腐性骨壊死
※第2ケーラー病:第2中足骨骨頭の無腐性骨壊死
※スポーツ障害として、アキレス腱炎、シンスプリント、ジャンパー膝(膝蓋腱炎)、ランナー膝(腸脛靭帯炎)なども適応となることが多い。
※また、この中の偏平足、外反母趾、足底腱膜炎、胼胝は、各論で詳しく説明されていますので、そちらでも確認下さい。


試験のために、上表を暗記したことがある人もいるかもしれません。

しかし、臨床では足の形や疾患名にインソールが適応なのではなく、それによる主訴・症状の改善のためにインソールが適応になります。

対象者の主訴・症状の原因は何か?

インソールの効果によって、その主訴・症状が改善するか?

という評価が必要です。この評価を深く出来る人は、インソールの適応がより広くなり、また適応外の判断も冷静にできるでしょう。

しかしながら、代表的な症例の表を見てもらっても分かるように、ほとんどの症例でアーチサポート(アーチの支持)が必要となっています。

ですので、アーチが崩れている場合、とりあえず、アーチの支持をするだけでも、ある程度の効果を出すことが可能です。そうなると、レディメイド(既製品)は、手軽に購入できるため有効です。後半に、代表的なメーカー・商品の比較を通して、選び方のポイントをお伝えしたいと思います。


■臨床的なインソールの適応


一度まとめると、臨床的なインソールの適応は、

インソールの効果によって、主訴・症状が改善する全ての症例

であり、そこで選ぶべき商品とは、

求める効果を発揮できるインソール(商品)

です!!

まとめても、分かりにくいっ!! と思った方…………





…すいません(笑)。フローチャートにしてみましたので、見てやって下さい。

コメント 2020-01-29 193949

このフローチャートをしっかり理解するために、まずインソールの効果①~⑦について整理すべきかと思います。

<インソールの効果>
①各アーチの支持
②足底圧の分散
③荷重線の矯正
④側方動揺の制限
⑤衝撃吸収作用
⑥脚長差の補正
⑦除圧


効果の①~④は、フットファンクションの補助と理解しましょう。
これらは、相互に関係しており、①各アーチをサポートすることで、②足底圧が分散されます。
また、IC~MStでの外側縦アーチサポートにより、④側方動揺を制限できます。
そして、各アーチサポート、ヒールサポート(外側楔、内側楔)の位置・高さで、歩行全体を通しての③荷重線を矯正していきます。この位置・高さは1mm以下の単位で歩き方を変えます。


インソールの⑤衝撃吸収作用は、クッション材に使われる素材に影響されます。着地や蹴り出し時の地面からの衝撃を緩衝してくれる一方、柔らかい素材では荷重線の矯正効果が出にくくなる可能性があります。


⑥脚長差の補正は、オーダーメイドの適応ですが、やむを得ず、100円均一のインソールを片側だけ入れて代用することもあります。また、脚長差がありすぎる場合、インソールでは踵の適合性が悪くなるため、靴による補高の方が有効な場合もあります。

⑦除圧は胼胝の疼痛や骨折後の免荷歩行などへの対処となります。こちらも、オーダーメイド適応となります。


以上を踏まえ、主訴・症状をしっかりと把握できる能力(問診能力)と対象者の状態から求める効果の判断が的確に出来る能力(評価能力)があれば、インソールの適応が分かり、より良いインソールを処方できます。

コメント 2020-01-29 204150

まとめ
・インソールの適応について、科学的根拠は不明な点が多い
・症例報告は数多く、効果が認められてきている
・臨床的には、疾患名よりも症状の原因の評価にて適応を判断
・したがって、評価者によって、適応は変わる
・この個別性(患者の症状の原因、治療者の能力)が統一的な見解を難しくしている


オーダーメイドとレディメイドの整理

足の形は人それぞれです。

もっと言えば、左右でも違います。

しかし、レディメイド(既製品)の形は1つです。

店舗に専門的な問診・評価を行ってくれるセラピストはいません(店員さんが詳しいこともありますが、限界があると思います)。

そんな超逆境の中で、少しでも効果の出るインソールを作るため、メーカーは工夫を凝らしています。

ですので、レディメイドで効果がない場合に、インソール(全般)は対象者(もしくは自分)には合わない!と考えてしまうことだけは、防ぎたいです。

あくまで、人それぞれの足に合わせるインソールの基本形はオーダーメイドであることを、忘れないようにしましょう。


レディメイドインソールの比較

では、実際に市販されている商品の比較をしていきましょう!

レディメイドインソールにはクッション型とサポート型がありますが、クッション型はアーチサポートがなく、衝撃吸収作用のみですので、機能性インソールとは区別します。

サポート型(=機能性インソール)では、アーチサポート部分(ベース材)にポリウレタンやナイロン、ポリエチレン、カーボンなどが使用されています。


SIDASZAMSTはスポーツ用品店でよく見るインソールであり、ベース材が硬めでしなり、反発力もあるのが特徴です。実際の商品を触ると、SIDASよりZAMSTの方がやや硬めの作りになっています。スポーツ選手~立ち仕事のサラリーマン・健康高齢者のウォーキングあたりが適応かと思います。

一方、履き心地の硬さや、アーチサポートの高さから、筋力の低下した高齢者などには向かない場合があります。アーチサポートの位置高さはとても重要で、低すぎれば効果が出にくく、高すぎれば違和感・痛み・バランス低下に関連します。

このようなことを少しでも防止するために、SIDAS、ZAMSTでは、内側縦アーチサポートの高さがLow、Mid、Highの3種類ある商品を持っています。売り場になっているスポーツ用品店などで足圧計があれば、計測して自分の足のアーチにより近い商品を選べます(しかし、LowでもDSISのアーチサポートより高い)。

コメント 2020-02-05 195029

DSISインソールシリーズソルボセンイという人工筋肉に使用される素材を売りにしています。この素材は衝撃吸収と圧力分散能が高く、EVAなどに比べてへたりにくい(長持ちする)という特徴を持っています。クッション型とサポート型の中間のようなイメージで良いと思います。

アーチサポートはSIDASやZAMSTほど高くなく、より広い年代で選びやすいです。靴屋さんからスポーツ用品店まで販路も広い印象です。

ある靴屋の店員さんは、コンバースのオールスター(有名なスニーカー)を選んでいて、ソールの硬さを気にするお客さんには、ソルボを薦めると言っていました。ファッション靴の足りない機能をインソールで補うパターンは臨床でも結構あります。


Ashimaruは商品としてはDSISに近く(中間型)、素材としてはポリウレタン(クッション材)やナイロン(アーチサポート)を使用しています。

Ashimaruの面白いところは、簡易式の足圧計(足の熱で足跡が浮かび上がる)が売り場に置いてあるところです。スポーツ用品店の足圧計よりも簡易なことと、足圧計の横には試供品インソールが数種類並んでおり、すぐに試せて分かりやすいです。

コメント 2020-02-05 195150

少し話がズレるかもしれませんが、レディメイドにしろオーダーメイドにしろ、ある程度の説明や評価(あなたはこういう足だから、このインソールが良いんですよ)で納得感をもって使って頂くことはとても大切だと思います(精度は別として)。臨床的な経験からも、その納得感がインソールの効果の感じ方に影響してくると感じています。


レディメイドインソールにおいて、クッション性とアーチサポート力(矯正力)は基本的に相反してしまいます。この相反する2つの機能をどのようなバランスで商品にしているかという点で比較し選んで行くと良いでしょう。下図に商品(メーカー名/商品名)の比較をまとめます。

コメント 2020-01-29 211952

代表的なメーカーの代表的な商品を個人的印象でまとめていますので、参考までにというところにしておいて下さい。各メーカー内でも様々な場面に特化したインソールが販売されています。


ただ、レディメイドでは左右差に対応できませんので、左右の足で求める効果が異なる場合、オーダーメイドの適応となります。また、レディメイドの多くが、踵部分をカップ状に覆うことで安定させており、外側楔・内側楔での踵骨アライメント修正が必要な場合もオーダーメイドが良いでしょう(距骨下関節とアーチの関係)。


カスタムメイドについて


SIDASCustomBalanceのカスタムメイドをレディメイドと差別化すると、足型を採ってフィット感が増し、左右差にも対応できるというところになります。しかし、フィット感は増しますが、荷重線の矯正を考えると、その採型方法からも不十分にならざるを得ません。採型時に誤差が出るリスクも考えられます。価格は10,000円前後です。


レディメイドではどうしてもアーチサポートの位置が合わない人にはカスタムメイドが良いかもしれませんが、時間・価格を考慮してもオーダーメイドではなくカスタムメイドを選ぶ理由があまりないように思います。


オーダーメイドについて


医療機関の中で使用されているオーダーメイドインソールは、入谷式インソールDymocoインソールなどが多いかと思います(ちなみに私はDymocoインソールを使用)。


オーダーメイドでは、グラインダーなどを使い1mm、0.5mm単位での調整が可能です。また、仮作成後に再評価や修正を行うことが出来ることは、より良いインソールの処方に繋がります。

コメント 2020-01-30 200900


一方、デメリットは作成する個人の力量に左右されるところが大きいことです。前述したように、問診能力評価能力には、かなり個人差があるところです。これに、グラインダーの使い方などの作成能力も加わってきます。


そのため、各インソール団体は、団体毎に資格制度を作り、勉強会を開催することで、技術の保障・向上を行っています。

ただ、作成過程において、足部の評価・歩行の評価をしないことはあり得ませんし、しっかりとした説明や効果の確認を一緒に行ってくれているかという点は見ていくと良いと思います。

また、インソールを売って終わりでなく、きちんとフォローアップまでしてくれるところが良いでしょう。

まとめ
・インソールの基本形はオーダーメイド
・レディメイドはクッション性サポート力(矯正力)のバランスで選ぶ
・カスタムはお薦めしない
左右差痛みが強ければ、初めからオーダーメイド
・レディメイドで効果がなければ、オーダーメイド


足と靴とインソール

対象者の足の機能・靴の機能・インソールの機能は総合的に考える必要があります。例えば、クッション性を重視した靴に硬めの反発力系インソールを入れては、結局どっちつかずになりかねません。

対象者の受け入れやすい配分で、足・靴・インソールのどれかの足りない機能をどれかで補い、最終的に満足してもらえれば良いと思います。


最後に


いかがでしたでしょうか?

インソールの適応は、実は、はっきりしていないんです。

だからこそ、私たちの問診・評価が重要です。

今回は、評価の細かい方法などは解説できていませんので、各論やフットファンクションの項目を参考にしてみて下さい。

セラピストの中には、オーダーメイドに興味がある方も多いと思いますが、レディメイドの知識は症例によっては、より簡単に問題を解決してくれます。

そして、そこはお店の店員さんが詳しいです。

興味があれば、一度、靴屋さんやスポーツショップの店員さんと話してみて下さい。

一般の方がどのようなインソールの買い方をするのか?店員さんのオススメやその理由など、かなり勉強になります!!

メーカーが定期的に勉強会をしたりもするそうです。

市場調査をした上で、医療機関としての役割を考えていけると、患者さんにより良い治療や選択肢を提供できると思います。


以上、インソールの適応と比較でした!!


最後までお読みいただき、ありがとうございました!!

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<参考文献>
1)林 典雄,他:足底挿板が足部内在屈筋力に及ぼす影響について,日本義士装具学会誌,Vol.16 No4,2000,287-290
2)廣田健斗,他:アーチサポートが立位での足趾屈筋力に与える影響,日本スポーツ医学会誌,Vol.26 No.1,2018,109-114
3)戸田佳孝,他:装具療法:有効性と限界ー2007~2010年の国際雑誌掲載論文からの考察,Journal Of Clinical Rehabilitation,Vol.20 No1,2011.1,34-41 
4)ガイドライン特別委員会 理学療法診療ガイドライン部会(2011):理学療法ガイドライン第1版,理学療法士学会,313-314
5)源 裕介:理学療法士が作成するパッド貼付型足底挿板における治療成績の傾向について                     https://ryotokuji-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=417&file_id=22&file_no=1




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