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ゆで卵を頬張った顔パンパンの娘、こんなん味方するしかないやんか! 〜魔女の凄さはギャップの凄さ〜

韓国映画『The Witch 魔女』が凄かった。
まだ見ていない人はすぐ下のリンクで観てから戻ってきてほしい。
これから書きたい一番の「凄さ」がネタバレに直結するので。

もう一つ後押しすると、僕は韓国映画が苦手です。
古くは「シュリ」や「JSA」から、最近話題の「エクストリームジョブ」「パラサイト」「イカゲーム」全てにハマれず。
さらに好きなジャンルであるはずの「グエムル 漢江の怪物」にもハマれなかった人です。

そんな僕が初めてハマった韓流映画。
初見の衝撃は初見でしか味わえない。
ネタバレ読んでからとか、2回目からは絶対に体験できない。

当たり前だけどこれ忘れている人多い。
もう一度書く。
2度目はないよ。

字幕でも吹き替えでもどっちでもいいからさ。

観ましたね。
では、始めます。

この映画の基本設定、市井で生活しているごく普通の少女。
実は彼女はとてつもない「力」を秘めていた。
と、こう書くと似た映画やアニメをたくさん思い出す。

実写だけでも炎の少女チャーリーからXmen。最近ならストレンジャーシングス。
日本でも超少女REIKOにクロスファイアなどなど。
ジャンル映画ってこんな感じですってついつい簡単に紹介しがち。

でも映画は一本ずつ全部違うのだ(当たり前)。
魔女にはこれらの映画全てを凌駕している点がある。
それは魔女の主人公少女の前半と後半のギャップだ。

人はギャップの大きい人間に惹かれると言われる。僕は彼女のギャップの虜になった。
いちばん伝わりやすい文にすると「覚醒」前と「覚醒」後の表情の変化だ。
「覚醒」と鉤括弧にしているのは、万一まだ観ていない人が読んでいる場合に、ネタバレを最小限にするためです。

映画の前半、「覚醒」前の少女は弱い。
走ればすぐに息を切らし、しょっちゅう頭痛で崩れ落ち、知らない人に話しかけられた恐怖で涙を流す。
でもただ弱いだけじゃない。

その弱さを利用して父親の知人や親友など、周りの人に頼るしたたかさも持ち合わせている。
頼るのは自分のためだけじゃない。
身体が弱の父親と認知症の母親との生活を守るためでもある。

劇中の彼女の周りの人も観客も、そんな彼女にどんどん惹かれていく。
そして彼女を泣かせる悪役を憎むようになる。
ゆで卵でほっぺたをパンパンにした正面顔の魅力ときたら。

ところが、なのである。
後半、この彼女が豹変する。全てがひっくり返る。
豹変という言葉がこれほどピッタリくる変化を見たのは初めてかもしれない。

「覚醒」前は笑ったり不安になったり泣いたり、多彩な表情を見せる彼女。
それらのほとんどは他人からの影響だ。
彼女は弱いからすぐに他人からの影響を受ける。

笑う、泣く、困る、苦しむ。
ポジティブなリアクションもネガティブなリアクションも表情豊かだ。
ところが「覚醒」後の彼女の顔は全く違う。

「覚醒」後は一見表情の種類が乏しくなったように見える。
微笑、嘲笑、無表情。この3つが基本。
なぜ乏しくなったように見えるのか。

それは彼女が強くなり、他者からの影響を全く受けなくなったから。
彼女は自分が笑いたければ笑い、どうでもいい時には無表情になる。
ここから彼女の大逆転が始まる、と思った矢先…

弱い時に自分を泣かせた男に不意打ちを喰らう。
コンクリートの壁を突き破って吹っ飛ばされる。
ところが、すごい打撃を受けたのに、彼女のリアクションが極めて薄い。

この瞬間はぜひ映像でもう一度見てほしい。
僕はゾクっと鳥肌が立った。
もう誰も彼女を傷つけられないのだ。

この映画を見て改めて確信したことが3つある。
ひとつめは当たり前のこと。映画は最初から最後まで見ないとその魅力がわからない。
名シーンや名セリフのピックアップや早送りでは映画は伝わらない。

ふたつめ、映画は総合力であること。
この女優さんの演技がすごいとのレビューはよく見る。
だけれども、彼女の魅力を引き出したのは演技だけじゃない。

俳優の演技が上手いのに魅力が引き出せていない映画はたんとある。
彼女の魅了は演技、演出、シナリオ、カメラ、音響。
全ての相乗効果。

みっつめ、人間の目ってすごいね。
あの目だけで「覚醒」がわかる。
これも演技とカメラの角度と照明の相乗効果だ。

ラスト30分で彼女はこの映画の中で一番強く一番怖い存在になる。
めっちゃ怖いのに彼女に惹かれる。
前半で弱い彼女に感情移入しちゃったから。

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