「さんまのお笑い向上委員会」雑感

 先日(1月29日)放送された「さんまのお笑い向上委員会」を見た。

 放送回のサブタイトルは『今年もあつまれM-1ファイナリストの森 優勝したならそろそろ借金返さんかい!…な夜』。昨年末のM-1グランプリに関係した芸人が多く集まっていたことで、放送前からこちらの好奇心は高まっていた。

 番組を視聴した感想をひと言でいえば、面白かったとなる。別の言い方をすれば、次回もまた見たいと思わせる良い内容だった。

 「向上委員会」の放送時間は30分。だがその1度の収録(同じメンバー)で、基本的に“3週分”放送される。その1週目にあたる放送が面白かったとなると、2週目、3週目の放送にも注目したくなるのは、当然といえば当然だ。

 今田耕司、陣内智則、錦鯉、タカアンドトシ、飯尾和樹、マヂカルラブリー、もも、中川家、インディアンス、オズワルド……。

 先日の放送回、その主な出演者は上記の顔ぶれになる。M-1グランプリ2021のファイナリストはもちろん、その司会者から審査員まで。大会を振り返るならば外せない、重要なメンバーが漏れなく集まったという感じだ。

 M-1からおよそ1カ月が経過したこの時期は、ファイナリストたちを集めるこうした番組を数多く目にする。だがこうした「M-1振り返る系」の番組が多いなか、ファイナリストたちを呼ぶことはできても、その司会者まで呼べる番組はどれほどあるだろうか。
 
 芸歴36年。M-1グランプリ司会の今田耕司を、俗に言う“ひな壇ゲスト”として呼ぶことができるのは、現在ではこの「向上委員会」くらいに限られる。中川家をひな壇の後列に座らせることも同様。これほどのメンバーを仕切ることができるのは、芸能界広しと言えど、何人もいない。そうした意味でも、明石家さんまがMCを務めるこの番組は貴重なのだ。

 話を放送内容に戻せば、見どころ満載だった。30分とは思えないくらい、濃い内容と言ってもいい。というわけで今回は、放送を見ていて抱いた感想をいくつか挙げてみることにしたい。

 まず一つ目は、最新のM-1王者・錦鯉について。その今後の活躍ぶりはどうなのか。例えば時代をリードするような存在になるかと言えば、難しい話になる。渡辺隆はともかく、長谷川雅紀は典型的なリアクション型だ。計算高いタイプでは全くない。言うなれば、安定型ではなく爆発型。現在はM-1王者という旬な存在としての高い商品価値を誇るが、時間が経てばその勢いはいずれ落ち着くだろう。先日「すべらない話」に出演した渡辺の方が、芸人として飛躍する可能性は高いと見る。

 長谷川にとって幸運だったのは、優れた才能を持つ相方が隣にいること。そして錦鯉にとって幸運だったのは、彼らを気にかける面白い仲間がたくさんいたことだ。この日共演したタカアンドトシを筆頭に、同じ事務所のバイきんぐやハリウッドザコシショウ、さらには地下ライブで苦楽をともにした仲間たち等々、周りの芸人たちの存在が錦鯉をより輝かせていることは事実だ。その共演は今後もさらに増えるだろう。一緒に番組をする可能性も高い。そうした光景を容易に想像できるのだ。先進的な存在になるというより、この先は腰を据えてじっくりと活躍していくという感じに見える。錦鯉の一つ前、前回王者のマヂカルラブリーとは、その種類は大きく異なっている。

 二つ目は、そんなマヂカルラブリーについて。昨年誕生した新王者・錦鯉を、前回王者の彼らはどう見ていたのだろうか。こう言ってはなんだが、錦鯉の優勝は、マヂカルラブリーから見ればそう悪くない結果だったと僕は思う。失礼を承知で言えば、錦鯉にマヂカルラブリーの立場を脅かすような、いわゆる「ニュースター感」は全くない。直接聞いたわけではないが、錦鯉の優勝にマヂカルラブリーはホッとしたのではないか。「向上委員会」での新旧王者同士の絡みには、そうした印象を強く抱かせた。

 マヂカルラブリーにとって脅威だったのは、錦鯉ではなくオズワルドの方だったと思う。もしオズワルドが優勝していれば、伊藤俊介の勢いは現在よりもっと増していたはずだ。最近のオズワルドがテレビでよく披露する「M-1準優勝漫談」の仕上がりは申し分ない。後輩・オズワルドが準優勝にとどまったことで、先輩・マヂカルラブリーの優位性が変わることはなかった。オズワルドとマヂカルラブリー。共演が多い、この仲の良さそうな2組の関係性にも今後は注目したくなった次第だ。

 ただ、昨年、そんなマヂカルラブリーとの共演が最も目についた芸人は、オズワルドではなかった。今回の「向上委員会」でも実現している組み合わせ。陣内智則とマヂカルラブリーの共演を、昨年だけでも僕は10回くらいは見た気がする。同じ吉本興業所属ということ以外、あまり共通点がなさそうな組み合わせだが、その共演はマヂカルラブリーのM-1優勝以降、なぜか急増した。陣内智則とマヂカルラブリー。錦鯉と共演するタカトシやバイきんぐ、ザコシショウのような深い関係にあるとは思えないのに、なぜか共演が多いこの組み合わせ。今年は果たしてどれくらい一緒になるのか、個人的には気になるところだ。

 次週予告に目を向ければ、さらにここに今が旬の人気コンビ・ニューヨークが加わってくる。オズワルド・伊藤が際立つ姿も目に飛び込んできた。この豪華な顔ぶれの中で、いったいどのような展開になっていくのか。次回の放送にも目を凝らしたい。

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