キングオブコント2022決勝。過去最高レベルだった前回を超えるために必要な要素とは

 いよいよ今週の土曜日に迫ったキングオブコント2022決勝。前回もこの欄で述べたが、少なくとも筆者個人の今大会への注目度および期待値は、間違いなく過去一番に相当する。今回初めて準決勝の戦いぶりに目を通したことも大きいが、僕がそれ以上に感じるのは、大会に対する価値が以前よりも大きく上がっていることだ。

 10年前、5年前と比べると、その違いは分かりやすい。かつてはファイナリストでさえ、今ほど話題にあがることはなかったと記憶する。大会後にブレイクできるのは、優勝者プラス1〜2組くらいだった気がする。さらに言えば、優勝したにもかかわらず、大きくブレイクしないグループさえいたほどだった。

 M-1グランプリに比べると華々しさで劣るというか、地味というか。キングオブコントに対して、そうしたどちらかと言えばマイナーなイメージを持っていた人は、これまで少なからずいたのではないか。
 
 ところが昨年の大会には、そうしたかつての煮え切らない感じのムードはほとんどなかった。珍しく高い緊張感を感じたといえば失礼だろうか。知名度の高いグループがファイナリストに多くいたこともあるが、それを差し引いても、決勝戦には十分華々しい匂いを感じることができた。それに加えて、審査員が大きく入れ替わったことも輪をかけていた。

 さらには2年前から、キングオブコント決勝戦を「お笑いの日」という特別番組の中に組み込んだことも奏功していると僕は見る。これによりキングオブコント決勝戦が、「お笑いの日」を締めくくる重要なイベントであるという、ある種の高級なものに見えるようになった。この「お笑いの日」がキングオブコントのステータス向上に一役買っていることは、昨年の大会を見ればよくわかる。

 昨年のキングオブコント2021決勝。少なくともネタの質という点においては、過去最高レベルだったと思う。ファーストステージの平均点が464.4点という、過去7大会で最も高い点数だったことが何よりの証拠だ。優勝した空気階段が大会史上最高得点を叩き出すなど、大会の盛り上がりという点でも十分合格だった。

 昨年の決勝戦。その出来栄えをあえて点数を付けるなら80点となる。ファーストステージ(1本目)だけなら85〜90点は付けられたが、ファイナルステージは正直3組とも1本目より低調な出来に終わった印象が強い。同率準優勝だったザ・マミィと男性ブランコには逆転の匂いはなく、空気階段が1本目のアドバンテージを活かして静かに逃げ切ったという感じだった。いわゆる最後まで目が離せない、ハラハラドキドキするような展開ではなかった。最高得点を叩き出した空気階段の直後、ファーストステージの最後に登場したマヂカルラブリーは、ネタをする前から上位3組に残れそうな雰囲気はしなかった。直前に空気階段が大爆発したことで、大会前に話題となっていた「お笑い賞レース3冠」の可能性は消滅したも同然の状況になった。今振り返れば、この時点で勝負は決していたと言っても過言ではない。

 何が言いたいかと言えば、昨年は決して大会が最終盤まで盛り上がったというわけではなかった。ファイナルステージ、2本目の出来栄えはせいぜい70点。これが全体で80点とする理由になる。

 引き合いに出したくなるのは、これまた過去最高との呼び声高い、M-1グランプリ2019決勝だ。お笑い賞レース史上最高の大会とは筆者の意見になる。この大会の出来栄え点を付ければ90〜95点。ネタのレベル、試合展開という点においても文句なしだった。大会最高得点(ファーストラウンド681点・ミルクボーイ)が更新された大会でもあるが、昨年のキングオブコント決勝との違いは、最後の最後まで結果が分からない白熱した名勝負だったことだ。ぺこぱ、かまいたち、ミルクボーイの3組で争った最終決戦は、いずれのコンビもほぼ完璧の出来だった。最終結果はミルクボーイ6票、かまいたち1票、ぺこぱ0票。数字的にはミルクボーイの圧勝に見えるが、決してそこまで大きな差はなかったと筆者は今でも思っている。ぺこぱに1票くらいは入っていても不思議はなかったし、かまいたちは優勝していても全くおかしくなかった。最後まで目が離せない、文字通りの超ハイレベルな戦いだった。

 「M-1グランプリ2019決勝」よ再び。これが今回のキングオブコント決勝を前にした、筆者の願いになる。大会はもちろん、審査方法も異なるのでこれが淡い願望であることはわかっているが、それでも今回のキングオブコント決勝にはつい期待してしまう。その理由はズバリ、ファイナリストたちのネタが悪くないからだ。また、ファイナリストにこれといったスーパースターがいないことも、「M-1グランプリ2019決勝」と似たような傾向にあると言えるだろう。

 そして結果に最も影響を及ぼすのが、言わずもがな、審査員の審査になる。その5名の顔ぶれは、すでに1ヶ月前のファイナリスト発表の2日後にアナウンスされている。昨年と全く同じ5人だ。これはすなわち、昨年の彼らの審査がおおむねよかったことを意味している。もう少し言えば、大会のレベルアップに彼らの審査はとりわけ深く関わっていた。今回も続けて任せるには十分だとは、関係者にかかわらず多くの人が感じたことだと思われる。

 審査員がすでに発表されていることは、視聴者であるこちらにとっても好都合だ。初の審査員ならともかく、一度でも審査員を務めた人であれば、どのような審査をするのかをある程度想像することができる。ファイナリストたちのネタは、おそらく今回も審査員たちに十分に伝わるものと筆者は見ている。昨年記録した空気階段の最高得点の更新は難しそうだが、その分粒揃いだ。頭ひとつ抜けているグループはいないが、全組が高いレベルで競い合っている。それだけにネタ順がカギになると見るが、それは本番でのお楽しみにしたい。

 昨年はファーストステージでほぼ勝負が決まってしまったが、果たして今回はどうなるか。繰り返すが、2本目でのレベルの高い撃ち合いこそ、後に語り継がれる大会になるには必須な条件になる。最後まで緊張感の漂う好勝負を期待したい。

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