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ティラミスに関するほら話。

昔々、日本には主に寺の境内とその周辺に棲む、寺巳(てらみ)と呼ばれるずんぐりした蛇がいた。これを酢漬けにすると、淡褐色の蛇腹はほろ苦く香り高い麩菓子の様に、肉・骨・腑は溶けて混然一体となり、甘く滑らかな乳白色の餡に、暗褐色の皮は、ほろ苦い粉菓子状に変化し、大層美味だった。

故に寺巳は乱獲された。

元々希少種で、生息域が限られている事も手伝って、寺巳は短期間に絶滅してしまう。ただ、この酢漬けは、一般には全く知られていなかった為、寺とその周辺域以外で、捕獲を免れた寺巳が、ごく僅かに、比較的最近まで生存していた。それがツチノコである。ずんぐりした身体、淡褐色の蛇腹に暗褐色の皮。

かくして、寺巳の酢漬けは文献に記される事もなく忘れられてしまう。

ところが、世の中は上手く出来たもので、たまたま船の遭難により琉球に流れ着いた、ヨーロッパの菓子職人が、これを食し、大変気に入って、故国に生還した後、この味と食感を現地の食材を用いて再現する。

これが現在、世界中で愛されるティラミスである。

寺巳酢(てらみす)が琉球語訛化で、てぃら巳酢、になり、もともと音節構造の近いイタリア語にそのまま引き継がれたのである。だからTiramisu.

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