幸魔表紙

幸魔~幸運の魔法石はいかかですか?

冒険者や魔法使いの役に立ちたい。子供の頃から誰かのために役立ちたいという目標を持っていたアリはワイズルというファンタジー世界でスピリアという店で幸魔という魔法石を販売している。幸魔は冒険者や魔法使いのステータスを上げる彼らの冒険の手助けをする石。今日も冒険者や魔法使いのことを思って販売している。
 アキの夢はスピリアに入社してすぎに脆くも崩れた。現実は違った。スピリアで働くスタッフに冒険者や魔法使いのことを考えている者は一人もいなかった。自分の個人売上を上げることしか考えずに幸魔を販売していた。幸魔の販売はファンタジー世界とはかけ離れている。アキが所属するスピリアは、ワイズルに十数店舗展開する中小企業。毎日スピリアの会長であるシモリへの販売目標・毎時間の売上げ報告がある。スピリアのスタッフは作り笑顔の裏で目標達成のため見えない恐怖と毎日戦っている。
そもそも幸魔という石には冒険者や魔法使いのステータスを上げるという効力は実在しない。あくまでお守りなのである。これを持って努力したら、ステータスが上がるという願掛けのようなもの。
そんな怪しい石を毎日魔法の石だと言って販売している。入社当時はそんな罪悪感を頂きながら販売していたが、今は目標達成のため魔法の石だと冒険者たちを騙して懸命に販売している。アリが配属されたカヤマはスピリアのやり方が全く通じない店舗であった。有名冒険者や魔法使いの写真、これを持ったから魔力やステータスが上がるというイメージを持たせる張り紙が一切禁止。やる気のない新人バチル・販売力はあるが態度の大きいエカを抱える問題店舗。
そんな販売の厳しい店舗でアリは書類上の店長に就任された。アリはワイズルというファンタジー世界で夢のない日々を送りながら毎日目標達成のために奮闘している。